ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、5Gネットワーク競争で勝ち残るのはどこ?

ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、5Gネットワーク競争で勝ち残るのはどこ?

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  • 更新日:2020/09/15
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■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は5Gネットワークの現在について議論します。

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※新型コロナウイルス対策を行っております

DSSだと5Gらしい速度が出ず、4Gも速度が低下する!?

房野氏:ドコモが、5Gネットワークの展開戦略に関する記者説明会を開催しました。ドコモは4G向け周波数を5Gに転用することのデメリットを示していましたね。

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株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤 和弘氏

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房野氏

石川氏:近々、4Gの周波数帯を5Gに転用できるようにする省令が決まりそうです。恐らくKDDIとソフトバンクは、クアルコムとエリクソンが推進しているDSS(ダイナミック・スペクトラム・シェアリング:4Gの電波に5Gの信号を混ぜて通信する技術)を導入する。DSSはダイナミックにシェアできる技術なので、通信状態に合わせてリソースを4Gと5Gに割り当てていくことができる。

説明会では、ドコモとしても4G周波数の5G転用には同意すると言っていました。ただ、ユーザーに対して有利誤認が起きる可能性があるという。端末上に5Gと表示されても、4Gと同じレベルの速度でしか通信できないのはダメなんじゃないかと主張していました。また、技術的に、4Gネットワークの一部を5Gに割り当てるので、4G端末を使っているユーザーの速度が落ちる可能性があるという話でした。

今後、2020年9月、10月にiPhoneが発売になると、KDDIとソフトバンクは一気にDSSに舵を切ると思います。「なんちゃって5G」競争になってくる中で、ドコモとしては「いやいや、そうじゃない。(本来の5G用周波数でエリアを作る)我々が正しい」ということをいいたかった説明会なんだろうなという気がしました。

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石川氏

石野氏:そういう流れにしたいだけなんじゃないかな。実際は、ドコモの設備がDSSにすぐ対応できない可能性もある。4G用の帯域を減らさなくてはいけないと説明していましたが、減らさなきゃいけないのはドコモだけじゃないかなと。

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石野氏

石川氏:4G周波数の5G転用のリスクは、ドコモにとってのリスクであって、DSSは関係ないわけですよ。

石野氏:転用そのもののリスクじゃないんですよ、ドコモの転用のリスク。ドコモの設備では、周波数を4G用と5G用でバチッと区切らなくてはいけなくなる。それは端末の移行比率を見ながらやらなくてはいけないので面倒だし、割り当てを間違えちゃうと確かに速度が遅くなると思いますが、それはDSSじゃない場合のリスクだよなと思いながら聞いていました。そうしたらDSSだと4G側の通信速度が数十%遅くなるという計算を出してきて……。

石川氏:DSSが良くできているところは、エリアに5Gユーザーが誰もいなければ、すべて4Gユーザーに割り当てられるし、5Gユーザーが多ければ、その割合に合わせてリソースを変えられるというところ。話を聞く限りでは、ドコモが言っている周波数を切り分ける方法よりも柔軟性があっていいんじゃないかなって気がしています。

石野氏:「制御信号などのオーバーヘッド(両対応するためにプラスアルファでかかる処理による無駄のこと)が乗っかって4Gの速度が落ちる」というのがドコモの主張なんですけど、多少落ちても別に……

石川氏:そもそも、5Gにつながっても、そんなに速くないじゃんね。5Gエリアに行って、みんなひたすら「ドコモスピードテスト」アプリで調べているけど、たまに1Gbpsが出てわーっと言っているくらい。むしろ、5Gのアンテナピクトが表示された方が、ユーザーの満足度は高いんじゃないかなって思った。

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ドコモスピードテスト

法林氏:いやいや、みんな同意見にしてもらったら困る(笑)

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法林氏

石野氏:ユーザーが何で満足するかですよね。実際に速度が出ていることが重要なのか、「5G」という表示のピクトを、スマホで見られることが重要なのか。

法林氏:今のauの5Gネットワークで速度を測った時に、5Mbpsしか出ていなかった時の落胆から考えると、安易にDSSに期待しない方がいいと思う。

ドコモの記者説明会では制御信号の話があった。実際にユーザーが送るデータに、それを制御する信号を付加して送るので、DSSで制御信号を混ぜた時は影響が出ないわけがない。無線である以上、限られた帯域しかないので、絶対に影響が出るんですよ。その上げ下げをどうしていくかという問題は付いて回る。

DSSについて、基本的な設備の問題はあるにしても、これは方向性の違い。ドコモは正攻法で、5G用にもらった周波数でちゃんと電波を作ってエリア構築する。ドコモの場合はもうひとつ、6年後(2026年3月31日)に3Gが停波する(ソフトバンクは2024年1月下旬)。そのタイミングまでに、設備を少しずつ対応できるように整えていきたいという腹があるので、4Gは4Gでという考え。

DSSで5Gエリアが広がると、ここでauのXperiaで5Gのピクトが立った、ドコモのXperiaは4G。でも速度を測ったらドコモの方が3倍速かった、みたいなことも起こるかもしれない。どちらがユーザーにとって幸せかということを、よく考えないといけない。ドコモはそこで実測値を重視したいということだと思います。

石野氏:一般のユーザーは、速度を測ったりしないと思いますが。

石川氏:測らないし、ドコモは3Gから4Gに変わる時、その考え方で1度失敗しているんですよ。あの時、各社からiPhoneが出て、みんな速度チェックをした。auは世界的にはマイナーな3GであるCDMA2000から早く4Gに切り替えなくてはいけなかったので、結構早いタイミングで4Gに切り替えていった。

その際に800MHz帯を使ったのでエリアは広い。ソフトバンクも4Gを一生懸命やっていて、ELT(音楽グループの「Every Little Thing」)とかを広告に登用してLTEを盛り上げた。あの時ドコモは、「いや、我々の3Gはまだまだ速い。だからXi(クロッシイ・4G回線)はピンポイントでしかやらない。ユーザー体験として負けないから3Gで十分」ということを言っていたんだけど、結果として評判が良くなく、慌てて4Gに切り替えた。

今回の記者説明会もまさに同じ。ドコモは「4Gのネットワークは速いでしょ」とアピールしている。10年前のことを何も学んでいないし、教訓が生きていない。技術的には確かにドコモの言う通りかもしれないけれど、マーケティングがドコモは圧倒的に下手なので、そこの失敗がまた5Gで起きるんじゃないかなっていうのが気になる。

世代の変わり目はマーケティングが重要

石野氏:ちょっと技術優先の思考になりすぎている気がする。

法林氏:それはNTTグループの伝統。FOMAの384Kbps時代からずっと続いている。

石野氏:そうなんですけど、もうちょっとマーケティング思考になってもいいんじゃないかと(笑)。確かに速い方がユーザーとして嬉しいし、ドコモの4Gは十分速いですよ。ただ、ユーザーとしては、パッとスマホの画面を見た時に「また4G+表示かぁ……」みたいな感じもするんです。

同じ速度だったら5Gにしてくれた方が“5G感”がある。5G端末を買った人も、せっかく買ったのにずっと4G+だと、なんのために10万円払ったんだってことになる。それが至る所で5Gになると、そんなに速度が変わってなくても「5Gを使っているオレ、格好いい」みたいな自己陶酔できるツールとして楽しい。

石川氏:ユーザー満足度でいうと、マーケティングの力が重要なんじゃないかな。

法林氏:ただし、気をつけないといけないことがある。5Gのアンテナピクトが立っているということは、イコール5G端末を買っている、イコール5G契約に切り替えているということ。でもそれって、新型iPhoneがあるにしても、今のこれだけ5G端末が売れない、高い、契約したら5Gの方が高くつくに決まっているからヤダと言われてネガティブなイメージが強い状況の中で、果たしてユーザーが戻ってくるかといったら、僕は結構厳しいと思う。今の安直な「なんちゃって5G」の路線に行くのは、ちょっと不安です。ただ、5Gエリアの表し方は、確かにドコモの言う通り、5G周波数の5Gエリアと4G周波数の5Gエリアは分けるべきだと思う。

石野氏:確かにドコモの言う通りなんですけど、ドコモはまだ5Gのエリアマップを作っていないじゃないですか。

法林氏:そうそう、そんなこと言って、作ってないじゃんと。

石川氏:5Gスポットのリストでしかない。

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ドコモの5G通信利用可能施設・スポット一覧(一部)

法林氏:そこはドコモが頑張らなくちゃいけないところ。

房野氏:ドコモは真面目ですよねぇ。

石野氏:真面目すぎる。

石川氏:アメリカが典型的だけと、世代の切り替わりはマーケティングなんですよ。3Gから4Gへ切り替わる時も、アメリカが先に「4G」と言っちゃった。何をもって4Gかもよくわからないうちに4Gと言い始めた。

法林氏:「HSDPA(3G通信規格の1つ)」を使っていた時に4Gと言い始めた。

石川氏:そうそう、言ったもの勝ちなところがある。ドコモは真面目な企業なので、なかなかそういうことに踏み切れないんだろうなと。

石野氏:アメリカでも真面目なVerizonという会社は28GHz帯で5Gの超高速エリアを作って、ウチは速いぜと言っている一方で、T-Moibleが600MHz帯で広いエリアをばーっと5G化した。

石川氏:まさにT-Moibleは「なんちゃって5G」。ということで、5Gのエリア競争が面白いなと思っている。KDDIとソフトバンクはDSSを導入するし、「株式会社5G JAPAN(KDDIとソフトバンクで基地局を相互利用するインフラシェアリング会社)」で地方のエリア化を共同でやっていく。

実際、“真の5G”たるスタンドアロン(SA)方式の導入が2021年中といわれているので、早いタイミングでノンスタンドアロン(NSA)方式からSA方式に行く。「なんちゃって5G」かもしれないけど、一気に5G化していくんだろうなって気がするし、ドコモは真面目にやっていくし、じゃあ楽天モバイルはどうするの? と。KDDIのローミングは4Gネットワークなので、5Gになってくると楽天だけ取り残される感じになるかなと。

石野氏:ドコモも記者説明会で2021年度中にSAをやりますって言っていたけれど、あれはニュースですよね。僕が確認するまでスライド1枚に埋もれさせておくというのは、おかしいだろって思いました。本日の新発表としてバーンと書いてよって。真面目だなと(笑)

法林氏:そういう会社ですから。

5G端末は買いたい時に買えばOK

房野氏:ユーザーとしては、どう考えればいいんでしょうか。ドコモユーザーは2021年のSA導入を待ってから5Gに切り替えた方が良いですか?

法林氏:いや。確かに3Gや4Gの時は、最初は色々問題があった。LTEになって、キャリアアグリゲーション(CA)に対応して、VoLTEになったくらいでやっと「みなさん、どうぞ」みたいな状態だったけど、4Gから5Gについては、端末は欲しいタイミングで買えばいいという気がします。さっきのドコモの話じゃないけど、元々のスピードが十分速いので。

5G端末でできることと、それに対する端末の対価のバランスがものすごく問われているタイミング。むしろ、買いたいモデルがあったら買って、それが5G端末だったら5Gに移行する。「予算がないから4G端末を買いました」でもいいと思う。ここ1、2年はそんなにシビアに考えなくてもいい気がしますね。

石野氏:たぶん、今秋くらいから勝手に5Gになる端末が増えますよね。

石川氏:決算会見でソフトバンクが「5G端末が6割になる」と言っていましたし。結局、これから出てくる端末はほとんど5Gになる。3万円台クラスでも5G対応になるので、あまり意識しなくていい。

法林氏:予算のいいタイミングで買い換えるわけだから、1年から2年くらいかけて4G端末はだんだん消えていき、5G端末が主流になっていく。

石野氏:ただ、その5G端末に買い換えたからといって、5Gの何かが活かせるかというと、正直、今のミドルレンジ端末のスペックだと、5Gに対応していることの恩恵がそんなにないなって感じがする。

法林氏:auは「データMAX」があるので、4Gだろうが5Gにしようが、料金的にはあまり変わらない。他社もそうだけど、5Gの基本料金は1000円高くなるという理屈を考えると、それに見合うメリットがあるか。ヘビーユーザーは、買い換えのタイミングであれば5G端末に乗り換える価値はあるだろうけど、ライトユーザーで、毎月5~6GBくらい使う人たちは、そんなに慌てず様子を見て、もしデータ容量を使い切ることが多いようなら、使い放題プランを考えるくらいでいいと思う。

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石川氏:auとソフトバンクの料金プランは4Gも5Gも同じ。これが典型的で、彼らは4Gも5Gもネットワークの対価は変わらないと言っているようなものです。

法林氏:1000円かかるけどね。

石川氏:あれも2年間の猶予(キャンペーンで2年間1000円割引になっている)があるじゃないですか。だから、たぶん将来的にはなくすんじゃないかなって気もする、運が良ければ。菅さん(菅 義偉内閣官房長官 沖縄基地負担軽減担当・拉致問題担当大臣/取材時)の動き次第でキャンペーンをやめて料金を上げるし、細かく指摘するようなら下げると思う。

房野氏:SAになると、どんなところが変わりますか?

石野氏:遅延かな。

石川氏:反応が良くなる。

法林氏:遅延も、何を使う時に低遅延が必要なのかという話もある。インターネット上にあるものは、低遅延になっても、たかが知れている。基地局と端末間が低遅延になっても、インターネット側の遅延はどうなんだって話になるので。

楽天モバイルが基地局設置を5年前倒しするワケ

石川氏:楽天の決算発表で、基地局設置が5年前倒しとしたのが衝撃的だった。

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楽天株式会社 代表取締役会長兼社長最高執行役員 三木谷 浩史氏

法林氏:言ってるだけだよ。

石野氏:一般的に携帯電話のインフラって10年で1世代変わるっていわれていますが、5Gが始まろうとしている今、5Gの寿命の半分くらいかけて4Gを全国展開しようとしていた当初の計画って一体……という気はしました。

石川氏:計画といいながら計画になっていないような。

石野氏:5年巻き上げるための計画だったんじゃないかと。

石川氏:そうだし、たぶん、サービスを始めて色々見えてきたことがあるんだろうなという気がしています。ひとつに、KDDIのローミング料金がかなり負担なんだろうなと。楽天モバイルには、今、100万の契約申し込みがある。年内に300万、700万へと増やし、その辺が損益分岐点と言っているけれど、獲得スピードをあまり早めちゃうとローミング料が半端なく出ちゃう。なので、アクセルは踏みたいけれど、微妙に緩めている感じがする。

石野氏:トーンダウンしていますよね。

石川氏:そう。トーンダウンしているのは、明らかにローミング料が経営に響いているんだと思う。

法林氏:これくらいかなと思っていたより、だいぶ赤字幅が大きかったという感じじゃないかな。

房野氏:確かに結構すごい数字でしたね(2020年1~6月期の連結決算は最終損益が274億円の赤字)。

石川氏:楽天モバイルとして、自分たちのネットワークを作らないことにはどうしようもない。5年前倒しだけど、5年間かけてやる設備投資を1年でやるってことは、数千億円の赤字が出ることになるじゃないですか。経営的には痛いけれど、それをやらないことには、どうしようもないって腹をくくったんだろうなという気がします。ただ、彼らの計画では基地局が2万7000くらいしかないので、本当にそれで人口カバー率96%に達するのかというと、結構微妙だなと。

KDDIとのローミングの協定は、都道府県単位で楽天モバイルのエリアが70%を超えたら打ち切ってもいいということになっている。70%を超えた瞬間に、KDDIからバチッとローミング契約を切られるのか、「いやいや、もうちょっと待ってくださいよ」といって貸してもらうのか、これからの交渉次第なのかなと。

房野氏:ローミングの終了は2026年ですね。

石川氏:本来は2026年までの契約だけど、2026年まで時間をかけてゆっくりとネットワークを作っていけば、ローミングの契約としては成立するけれど、基地局建設を前倒しすると、KDDIが提供をやめることできるようになる。そのへん、どうなるかは注目。

石野氏:人口カバー率が96%だと、まだつながらないところが多いでしょうね。そこをどうしていくかですよね。

法林氏:ドコモのFOMA、iモードが2026年3月31日に終わる。2026年あたりは、業界的に色んな節目になりそうだね。でも、FOMAが終わるだけで、海外のローミングは受けるんじゃないかな。

石川氏:本来は、オリンピックがあるから、「とりあえず2020年まで、ドコモとソフトバンクは3Gを止められません」って話だった。KDDIは、CDMA2000ではローミングしないだろうということでケータイは3Gを止めた。

房野氏:日本で携帯電話を使えない、海外からの渡航者が出てくるでしょうか。

法林氏:対策はいくらでもある。日本に来た時にWi-Fiルーターを貸せばいい。レンタルサービスは色々ある。やっかいなのは電話。ただ、このコロナ禍で、インバウンドのことをそこまで考える必要があるかという部分がちょっとある。

石野氏:でも、コロナ禍が10年続くわけじゃないですから。

クラウドSIMのデータ通信無制限は最初から無理だった

房野氏:通信制限なしのモバイルWi-Fiルーターで注目された「どんなときもWiFi」が、速度低下でトラブルになり、総務省から行政指導を受け、結局、無制限プランを10月いっぱいで終了しますね。サポートの悪さも指摘されています。

石川氏:MVNOで無制限サービスをするのは無理があるというのがはっきりわかった。「クラウドSIM」※といっているけれど、あれも結局SIMカードの調達が制限されたら成り立たないわけだし。

※「クラウドSIM」:物理的なSIMカードを複数挿した「SIMバンク」と呼ばれる機器から、クラウドSIMサーバを介して仮想化されたSIMカード(SIMのデータ)を端末がダウンロードすることで通信する

石野氏:あの発表のおかげで、4月に書いた自分の記事がまたよく読まれています(笑)。あれもねぇ……どんなときもWiFiは相当軽率だったけど、若干騙されている感じもあって……

石川氏:ネットワークに対する知識がなさすぎ。

法林氏:クラウドSIMという仕組みが、魔法のように考えられている感じがするんだけど、ただSIMカードがクラウドにあるだけの話でしかない。

石野氏:SIMカードを仮想化するっていう話だって、イコール無制限じゃないのに、無制限みたいな言い方でガンガン広めちゃっていたのがそもそも良くない。

房野氏:SIMボックスの中に、本当にSIMカードが何枚も刺さっているのを見た時に、ちょっと驚いてしまいました。SIMカードがたくさんあるというだけで、有限ですよね。

石野氏:あの仕組み自体は面白い。別に悪くない。力業のeSIMみたいな感じ。

石川氏:海外のいろんなところでデータ通信する際に、現地のキャリアにつないで料金を安くするというのが真っ当な使い方。

法林氏:ビジョンの「グローバルWiFi」が、SIMカードが9枚入るWi-Fiルーターを採用していたよね。

石野氏:そう、あれのバーチャル版って感じですよね。

法林氏:あれを仮想化しているというか、あれをサーバに置いておいて、端末にはサーバを読みに行く専用のSIMが1個ある、みたいな感じ。

石野氏:クラウドSIMは仮想化といっていますけど、物理的なSIMカードが刺さっているので完全な仮想化もできていない感じ。でも、たくさんSIMカードを挿せるというところに目を付けて、「100GBとかの大容量のSIMカードを1つ挿して、それをシェアして、うまいこと回せば無制限になるんじゃないか」という商売の仕方をした時点で、ちょっと間違った使い方になった。

法林氏:結局、設計が甘いんですよ。

石川氏:データ通信を大量に利用する人は、半端ない量を使う。何に使っているかわからないけど、どんなときもWiFiの無制限プラン終了についての文書にも、テラバイトレベルで使う人がいるって書いていたくらい。使い放題をモバイルで提供したら、格好の餌食になるというのが目に見えた。

法林氏:もうちょっとオープンにしてというか、中の仕組みを見せていいかどうかという問題はあるけれど、監督官庁、なんとかしようよって感じはします。

石川氏:そもそも、ネットワークを持っているキャリアが無制限を提供できていないのに、なぜMVNOができるのかという、そもそものビジネスモデル的な疑問がある。ドコモですら、おっかなびっくりでようやく無制限プランをキャンペーンで提供しているくらいなのに。

法林氏:スマホでやり取りできるデータ容量は、だいたいこれくらいだろうという読みがあってやるんだけど、Wi-Fiルーターにすると、つながるデバイスは何でもありなんでね。「サーバをつなげられたら、お手上げ……」みたいな話。

石野氏:無制限を提供していた会社は、テレビCMの効果を見間違えていた。無制限という言葉を聞くと、テラバイトを使う人が集まっちゃうんですよ。避けて通れない部分なので、あらかじめちゃん対策していなかったことは、提供する会社側の責任だと思います。

房野氏:今はどういう状態なんですか?

石野氏:どんなときもWiFiは10月31日で無制限サービス終了。

石川氏:受付終了で、サービス終了で、代替えプランとしてホームルーターとモバイルルーターのセットを同じくらいの料金で提供する。

房野氏:制限付きプランを提供するとかは?

石野氏:制限付きは何かあるんじゃないですかね。

法林氏:どんなときもWiFiが出した文書内の「弊社の無制限データ通信についての考え」に、「現時点でキャリアからの特例的な契約がない限り、本当の意味での誰に対してもデータ容量無制限での利用は不可能」とある。だったらこのサービスの名称はなんだよって。

石川氏:それを先に知っておいてよと。

石野氏:その後に「無制限的な」サービスは提供できるけど、とある。最初から「無制限的な」と言っていなかったのがユーザーに対して不誠実でしたね。

法林氏:クラウドSIMのことも書いてある。「クラウドSIMシステムはデータ容量無制限を提供するものではなく場所とキャリアに縛られない通信環境を提供する技術である」。そんなこと、今さら何を言っているんだと。

石野氏:怒られるまで、それを言わなかったというのが良くない。

法林氏:迷惑を被ったのはuCloudlink。今はみんな海外旅行ができないから、「GlocalMe」が全然使われない。僕もお金が眠ったままになっちゃっている。払い戻せないし、どうしたものか。

石野氏:まぁ、でも今回の総務省の指導は早かったですよね。

法林氏:いや、もっと早くやるべきだったよ。

......続く!

次回は、新型iPhoneについて話し合う予定です。ご期待ください。

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法林岳之(ほうりん・ たかゆき)

Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

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石川 温(いしかわ・つつむ)

日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

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石野純也(いしの・じゅんや)

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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房野麻子(ふさの・あさこ)

出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘

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