祖母が語った不思議な話・その玖拾陸(96)「夏の絵」

祖母が語った不思議な話・その玖拾陸(96)「夏の絵」

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  • 更新日:2022/05/14
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私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。

イラスト:チョコ太郎

祖母が七つの夏、近隣の尋常小学校の生徒が特別授業として村のお寺に集まり絵を描くことになった。
「夏」に関するものであれば好きなものを描いて良いということだったので、子ども達は題材にしようと庭に出て虫を捕まえたり、境内の花を摘もうとして怒られたり大騒ぎだった。
中には入道雲を白く残しながら青い絵の具だけで夏空を描き終え、早々に遊びに出た強者もいた。
祖母は鐘楼で寝ている猫を見つけ、起こさないように気を付けながら描いた。
我ながら上手に描けたと、上機嫌でK先生の元へ持って行った。

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K先生は講堂へ通じる廊下で和尚さんとぼそぼそと話していた。

「また同じ絵を描く子がいるとは…」
「うむ…しばらく寺で預かろう」

二人ともきびしい表情をしていたが、祖母に気が付くと笑顔をつくり絵を褒めてくれた。

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陽も陰る頃、絵を描き終えた皆が講堂に集められた。

「良い絵が描けましたね。先生が感想を書いてみんなに返しますので待っていてください。今日はこれで解散としますが、決して川や池に寄り道せずに家に帰るように!」
いつもは優しいK先生が強い口調で言った最後の言葉に違和感を感じた。

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皆が帰り支度を始めたが、友達のN君だけがじっと座っている。
「一緒に帰ろうよ」
祖母の呼び掛けに首を振り、こう言った。
「盆が過ぎるまでここにいなきゃいけないんだ…」
先生たちが話していたのはN君のことだったのかと思い当たった。
「どんな絵描いたの?」
「…水遊びの絵」
さらに詳しく聞こうとしたとき、先生と和尚さんがやって来てN君を連れて行った。

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次の夏、下の学年が昨年同様お寺で絵を描くことになった。
お手伝いで参加し、子ども達の作品を集めていた祖母はその中の一枚に目を留めた。
真ん中に髪の長い女性がいて、囲むように七人の子ども達が泳いでいる絵だった。
どこがどうという訳ではないが、見ていると心がぞわぞわする。
なんとなくその絵を一番下にし、集めた絵を束ねてK先生に渡した。
受け取った作品を一枚一枚見ていた先生の手が止まった。
あの絵だった。
先生は足早に僧坊に向かった。
祖母も足音を忍ばせついて行った。

「またか…」
「同じですね…」
こっそりのぞくと先生と和尚さんが二枚の絵を見比べていた。
どちらも女と七人の子どもの絵だった。

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……………………………………

「描いた子はどうなったの?」
語り終えた祖母に間髪入れずに聞いた。

「やはり盆過ぎまでお寺に残されたよ。おかげで無事だった」
「その絵…なんだったんだろう?」
「後で聞いたんだけど、子どもが盆前に水死する事故が三年続いててね。上手下手はあったけど死んだ子たちは皆、同じ絵を描いてたんだよ」
ここまで聞いたとき庭の池で鯉が跳ねた。
心がぞわぞわした。

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