《旭川14歳少女凍死》“被害者母”が明かした学校や加害者への“言葉にならぬほどの無念”「娘は軽い気持ちで死を選んだわけじゃない」【最終報告書公表も再調査へ】

《旭川14歳少女凍死》“被害者母”が明かした学校や加害者への“言葉にならぬほどの無念”「娘は軽い気持ちで死を選んだわけじゃない」【最終報告書公表も再調査へ】

  • 文春オンライン
  • 更新日:2022/09/23

《旭川14歳少女凍死》「死んだ本人に話を聞けてないから推測の域を出ない」第三者委員会のイジメ調査“最終報告書”その驚きの詳細「イジメと自殺の因果関係は…」から続く

「長い時間をかけての調査でしたが、最終報告書のなかで新しくわかった事実はなく、残念でした。本当はこの最終報告でいい結果を爽彩(さあや)に伝えてあげたかった……」

【画像】爽彩さんは裸の画像をいじめグループによって拡散された

旭川市教育委員会から「第三者委員会の最終調査報告」を受けた爽彩さんの母親は、文春オンラインの取材に言葉にならない思いを語った――。

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廣瀬爽彩さん

イジメと自殺の因果関係について明確にしなかった最終報告書

2022年9月20日。昨年3月に廣瀬爽彩さん(当時14歳)が遺体となって見つかってから1年半、過去に類を見ない凄惨なイジメを受けてから3年半が経ったこの日。

旭川市教育委員会は、イジメについての事実確認や爽彩さんが亡くなったこととの因果関係について、約160ページに及ぶ最終報告書を市議会に提出した。黒蕨真一教育長は市議会で次のように謝罪の言葉を述べた。

「学校の対応について、イジメとして認定せず、重大事態として対処しなかったことは明らかな誤りであること。深く反省して厳粛に受け止めている」

再調査を行なってきた第三者委員会は今年4月に公表した中間報告通り、「イジメとして取り上げる事実があった」と最終報告でもイジメを認定。性的なイジメ、深夜の呼び出し、おごらせる行為など中学の先輩7人が関与した6項目をイジメだったとした。

だが、爽彩さんの死については、文春オンラインの既報通り、「自殺と考えられる」との見解を示したものの、イジメとの因果関係については明確な判断を示さなかった。

「イジメと定義する範囲を限定する」第三者委員会の独自解釈

また、今回の最終報告書では、調査を行なった第三者委員会の独自の見解によってイジメの定義が縮小され、認定されている7人の加害者生徒の行為以外に爽彩さんが学校のクラスで受けていた数々の事案について、「これらはイジメとは言えない」と否定されていたことがわかった――。

調査関係者によると、「遺族側は更なる再調査を要望している」という。特に遺族側が問題視しているのは、第三者委員会が独自に示したイジメの定義に関する「限定解釈」。これは法律の「無視」にもあたる非常に不可思議なものだという。

「第三者委員会は報告書の中で、いじめ防止対策推進法の『イジメ定義』は広範に過ぎるもので『非難に値しないようなものも含まれる』として、批判しています。

つまり、法律上で定められたイジメの定義を個々の事例に当てはめると、なんでもかんでもイジメと認定しなくてはいけなくなってしまう。しかしながら、すべてイジメとひとくくりにし、生徒に『それはイジメだ』と言って、指導をしても “加害者の心理”を萎縮させるだけである。そうすることは教育的な観点から望ましくないから、イジメと定義する行為については範囲を限定すべきだ、という“独自の解釈”を示したのです。

この独自解釈を示したうえで、第三者委員会は最終報告書では『社会通念におけるイジメ』として認められるものだけ『イジメ』として認定した、と記しています。その結果、クラスメイトから爽彩さんが受けた嫌がらせなどについては、法律上の定義を無視して、イジメと判断するにはあたらないと結論付けたのです」(同前)

「定義の限定解釈による隠蔽は絶対に許されない」という国の姿勢

こうしたイジメの定義に関する第三者委員会の「独自解釈」は、イジメ事件が発生し、その調査が行われるたびに遺族を苦しめてきた問題だ。

「友だち同士のいじり」「些細なトラブル」「じゃれ合い」といった言葉で、教職員はこれまでイジメを見逃し、ときには隠蔽に走ることさえあった。しかし、そのようなことが起きないよう、2017年に改正された「いじめ防止対策推進法」では、法律上のイジメ定義の範囲をあえて広げて、子どもたちの些細な変化にも教職員が気づけるようにしている。

また、国会では2013年のいじめ防止対策推進法の成立に際して“「法の対象となるいじめに該当するか否かを判断するにあたり、心身の苦痛を感じているもの」との要件が限定して解釈されることのないよう努めること”という付帯決議まで下している。つまり、定義の限定解釈による隠蔽は絶対に許されないという姿勢を国は示してきたのだ。

これは「法律の規定を完全に無視した暴論」

第三者委員会がイジメの定義を限定的にしたことで、「本来であれば、認定されるべきイジメが認定されず、爽彩さんが受けたイジメ被害の深刻さや自殺との因果関係の判断に重大な影響を及ぼした可能性がある」と前出の調査関係者は指摘する。

「最終報告書によると、爽彩さんに周囲の生徒が『距離感を保ち、爽彩さんに話しかけられても会話を避けるような態度をとる生徒も現れるようになった』と記されています。その理由として爽彩さんがクラス内で孤立し、落ち込んだ様子でいたのに対し、クラスメートはどのように対処すれば良いかわからず、『自らを守るため、避けるような態度を見せても止むを得ない』と判断したとされました。しかし、いじめ防止対策推進法によれば、『心身の苦痛』を与える行為であればそれは『イジメ』だとされます。法律の規定を完全に無視した暴論です」

また、今回の最終報告書には、再調査の重要事項だった爽彩さんが死亡に至った経緯についても、明確な記載はなかったという。

「第三者委員会は、報告書で、イジメの要素をいくつか挙げながらも、それと自殺との因果関係については『不明』と結論付けています。『亡くなった爽彩さんから話を聞かなければわからない』との指摘もありました」(同前)

第三者委員会の調査が始まって1年4カ月間。遺族側と委員会の溝は最初から最後まで埋まることはなかった。前出の調査関係者が続ける。

遺族側を置き去りにしてしまった第三者委員会

「本来であれば遺族側と第三者委員会が足並みを揃えて調査する場面があってもよかったと思います。我が子の死で学校や市教委に不信感を抱いていた遺族側が第三者委員会に安心して対応を委ねることができるような信頼関係を構築することはできなかった。第三者委員会は、被害者に寄り添い、丁寧に説明を尽くしながら一歩、一歩、前進させていく姿勢が欠如していたと思います。実際、第三者委員会は調査を学校の先生や生徒からの聞き取りから始め、中間報告までに母親の聞き取りは1度しか行われませんでした」

文春オンラインの取材に遺族の代理人弁護士は、以下のように今回の「最終報告書」についてコメントした。

「第三者委員会と遺族側のコミュニケーションが決定的に不足していた。本当の意味での信頼関係を持って情報を共有したり、あるいは互いに提供したり、という関係には至らなかった。一方通行の関係しか築くことができず非常に残念」

爽彩さんの母親がこの1年4カ月を振り返る。

「調査結果を待っている間は、調査のスピードが遅いように感じて、もどかしい気持ちにもなりました。今年の3月末に中間報告が出てからは、このペースで本当に8月末までに間に合うのか心配になりました。第三者委員会とは、弁護団との間で意見が合わないことが多く、こういう結果になるだろうことは予想はしていましたが、どこかに期待する部分があったのも正直な気持ちです。

最終報告書を見て『やっぱりそうですか……』という思いでした。爽彩が生前に残していた言葉が第三者委員会に切り取られてニュアンスが変わっていたりしていました」

爽彩さんが受けたイジメは「女性なら誰もが耐えうることができない性被害」

爽彩さんが受けた凄惨なイジメは性被害という女性の尊厳を傷つける行為でもあった。

「私の子供の頃は今のようなSNSはなかったんですけど、似たような被害を想像してみたら、私だけでなくても女性なら誰もが耐えうることができないんじゃないかなと思います。爽彩でなくても、誰しもが苦しむ行為です。私がわかってほしかったのは、爽彩の受けた被害は『悪ふざけ』ではなく、本人が苦しむくらいの悲惨なものだったということでした。軽い気持ちで爽彩は死を選んだわけじゃない。それだけはわかってほしかったです」

9月5日、生きていれば爽彩さんは16回目の誕生日を迎えたはずだった。

「あの子の誕生日だった日、爽彩が恥ずかしがって写真を撮らせてくれなかったことや、チョコレートケーキが好きだったことを思い出してしまって……」

母親は涙ながらにこう語った。

9月20日、今津寛介旭川市長は遺族の要望を受けて、市長直属の調査委員による再調査を行うことを表明。イジメから3年半という失われた時間を遡って、調査のメスはどれほど切り込めるのか。

これが旭川イジメ事件の最後の調査となることを願ってやまない。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

「文春オンライン」特集班

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