「自己肯定感が低い人」に見られる歪んだ恋愛行動

「自己肯定感が低い人」に見られる歪んだ恋愛行動

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2021/11/26
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自己肯定感が低い人の中には、付き合い始めはパートナーのことが好きだったのに、時間が経つにつれて不誠実な行動をしてしまう人がいます(写真:Edwin Tan/iStock)

自己肯定感の低い人は、意識的、あるいは無意識的に自分が傷つかないために、さまざまな自己防衛策を講じますが、これが人間関係を難しくしていることが少なくありません。本稿では、自己肯定感が低いゆえに他人に合わせすぎてしまったり、パートナーとの関係をわざと悪化させてしまう理由を、心理療法士として長い経験を持つシュテファニー・シュタール著『「本当の自分」がわかる心理学』より紹介します。

1人でいると「安全」で「自由」と感じる

「非難されたからといって、面と向かって反論するなんておとなげない」――そう感じることが、誰にでもあるでしょう。こういうときによく使われる防衛戦略が「逃避」です。すでに過去の記事(「自己肯定感が低い人」がやってしまう3つの行動「自己肯定感の低い人」が結構している陰湿な攻撃)でもお話ししたように、私たちは通常、自分の心を守るためにいくつかの防衛戦略を持ち、状況に応じて使用する戦略を変えています。

そのうちの1つである「逃避」という行動自体は、悪いものではなく、危険から身を守るための有意義で自然な反応です。問題は、危険の定義です。自己肯定感が低い人の中には、幼い頃の経験から、「自分には価値がない」「劣っている」「1人のほうが安全」と思い込み、人と意見が違っても、話し合わずに逃避という行動をとることで、自分を守ろうとする人がいるのです。

こうした思いが強い人は、慢性的に逃避行動を起こしている可能性があります。自分が感じている不安と自分の弱みを直視することから逃げ、さらに他者との対立からも逃げてしまっているのです。

逃避の中でも、「自分の周囲に壁をつくる」、いわゆる「退却」の防衛戦略を使う人は、たいてい子ども時代の経験から「人と関わるよりも1人でいるほうが安全」といった信念を抱えています。そのような人は、1人でいると安全であると感じるだけでなく、「自由」であるとも感じます。

なぜなら、1人でいるときにだけ、自由に決定したり行動したりしてもいいと思っているからです。他者が近くにいるかぎり、「自分は他者からの期待に応えなければならない」という、子ども時代からのプログラムが発動してしまうのです。

逃避行動をとるといっても、必ずしも孤独へと逃げ込む必要はありません。仕事や趣味、インターネットへ逃げることもできます。こうした活動への逃避でも、関わりたくないことから目をそらすという目的は果たせます。そして、こういった活動への逃避によって、自分が抱える苦悩も意識しなくて済むようになります。だからこそ、自分が逃避していることに気づかないのです。

確かに、四六時中忙しくしていると、自己不信と不安からうまく目をそらすことはできます。

逃げ続けると、ますます怖くなる

ただし健全な逃避と不健全な逃避の差は、紙一重。「目をそらすこと」は、ネガティブな状態から解放される非常に有意義な手段ですが、目をそらすことによって実際の問題が大きくなり続けるとしたら、その問題をきちんと受け止めるべきです。

そのための最初のステップとして、まず一度、「私は問題を抱えている」ということを認める必要があります。これは、問題を解決するためのもっとも重要な、もっとも基本的なステップになります。

私たちは、「怖いな」「やりたくないな」と感じる状況や行為を回避しようとしますが、問題は、回避するとそうした気持ちが一層強まるということです。「やりたくないな」と感じるたびに課題を先送りしていると、課題の山はどんどん大きくなり、それに伴い「やりたくない」気持ちが強まっていきます。不安も、回避することが多ければ多いほど強まります。

要は、同じような状況を回避していると、「この状況を克服できない」という思いが強まってしまうのです。それは、回避するたびに脳が不安や「やりたくない」気持ちがあることを認めてしまうからであり、また、回避していると「いつかは克服できるかも」と思えるような経験も積めないからです。

そのため、不安であっても回避せずに挑んでいくことも大切です。うまく挑んでいくことができたら、そのような自分をとても誇りに思うでしょう。そして、同じような状況に再び遭遇しても、その際の不安は以前よりもはるかに少なくなるはずです。

これらの特殊形として、「死んだふり」があります。自分の心のスイッチを切ることで、相手から逃げるのです。このプロセスは多くの場合、意図的ではなく反射的に起こり、自動的に進行していきます。

この防衛戦略を使う人は、人間関係で「もう無理」と感じると、心がオフラインになるのです。オフラインになっていることは相手にもはっきりと伝わります。解離傾向のある人は、自分の内面の世界と外の世界を区別することがなかなかできません。他者の感情のゆれと気分を、自分の心の中に思いっきり受け入れてしまい、それらの責任が自分にあると感じてしまうのです。心のアンテナがずっと受信状態のままなので、人づき合いが大きなストレスになります。

また、こうした人は自分の心が穴だらけで、心の中のことが他者に漏れ出てしまうのではないかと感じています。それゆえ自分の心を閉ざす「内面的な退却」で自分の身を守ろうとし、さらに外の世界でも退却しようとするのです。このような解離傾向がある人のモットーは、「1人でいるときが一番安全」。なぜなら、その人は子ども時代に「人間関係=ストレス」という経験をしたからです。

子どものころに、助けを必要とするか弱い母親(あるいは父親)と自分とを引き離して考えることができない状況だったか、あるいは両親を恐ろしいと思っていたのです。また、トラウマがある人もこの解離の状態になることがよくあります。

「自分はそのままでも大丈夫だ」と理解する

退却がとても有意義な防衛戦略であるとしても、こういう人はときどき「まぼろし」からも逃げてしまっています。まぼろしであって実態がないのですから、身を隠す必要はまったくないのです。そこで、まずは「自分はそのままでも大丈夫だ」ということを繰り返しはっきりと伝えていきましょう。

そして、「自己主張したり抵抗したりしてもいい」ということを自分に理解させるのも、とても大切です。自分の権利や願望、欲求をもっと主張できるようになったら、人と接しているときに、もっとのびのびとして、自信を持てるようになるでしょう。

親の望みに従うよう厳しく育てられている子どもは、適切な方法で自己主張することができなくなっていきます。その代わりに、親の気分と願望に素早く反応できるよう、自分のアンテナを伸ばしておくことを覚えていきます。子どもにとって、親の規準を高圧的に押しつけられるのは当然つらいことですが、それよりももっとつらいのは、親の願望通りにふるまわないと親から「あなたにはがっかりした」というメッセージが送られてくることです。

とくに、母親が自分の期待に応えない子どもに対して悲しみで反応する場合、その子どもは〝母親と自分との間に境界線を引くチャンス〟をつかむことができません。子どもは悲しむ母親に同情し、すぐに「ママが悲しんでいるのは私のせいだ。私がなんとかしなければいけない」と感じてしまうのです。それゆえこのような子どもは、母親が幸せで満足していられるように、母親が望むことを〝自ら進んで〟行います。

一方、母親が自分の期待に応えない子どもに対して「怒り」で反応する場合、その子どもは〝立ち止まるチャンス〟を持てます。子どもは心の中で「くそばばあ!」と言って、心の中だけでも母親と一線を画することができるのです。

相手が好きなのに心変わりをしていく

私の診療所には、人とつながることに不安を感じて悩んでいる方がよく来られます。このような方は、適切な方法で自己主張することがなかなかできず、そのためにパートナーが近くにいると、すぐに苦しいと感じてしまうのです。その方々には、子どものころに片親(母親の場合が多い)に束縛されていた経験があることも珍しくありません。

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たとえば、外で友達と遊びたいと思っていると、親が落胆の色を示すのです。このようなケースの人は、恋人がどのような人であってもそばにいること自体がストレスになるため、恋人への感情も必ず変わってしまいます。最初は相手のことをすごく好きでも、だんだんその人が自分にとって本当に〝正しい人〟なのか、疑問に思うようになるのです。

その結果、恋人から逃げるためにしばしば仕事に没頭し、ときには浮気もすることがあります。そして最終的には、その相手との関係を終わりにして、他の〝より良い人〟を捜し始めるようになります。しかし実際には〝正しい人〟探しを繰り返しているのは、前の恋人に気に食わない点があったからではなく、誰かと結びつくことに対して自分がものすごい不安を抱えているからなのです。

「人と結びついていても、自分は自由である」と感じることができるようになれば、人と健全な関係を築くことはできます。そのために学ぶべきは、「自己主張して、自分の願望と欲求を人間関係の中に組み入れていくこと」です。

他者との関係は、「じっと耐えるべきもの」ではなく、自分で作り上げていくことができるのです。

(シュテファニー・シュタール:心理学者、心理療法士)

シュテファニー・シュタール

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