斎藤工が語るウルトラマン 「正義と悪の狭間から『社会』が見える」

斎藤工が語るウルトラマン 「正義と悪の狭間から『社会』が見える」

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  • 更新日:2022/05/14
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斎藤工(さいとう・たくみ/1981年生まれ、俳優。主演作Netflixオリジナルシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」が配信中。「シン・ウルトラマン」は5月13日から公開(撮影/写真映像部・加藤夏子)

庵野秀明が企画・脚本、樋口真嗣が監督を務める映画「シン・ウルトラマン」が5月13日に公開された。「ウルトラマン」を現代にリブートした作品について、主人公・神永新二を演じる斎藤工が語った。AERA 2022年5月16日号から。

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――「シン・ウルトラマン」で演じたのは、「ウルトラマンになる男・神永新二」だ。

斎藤工(以下、斎藤):樋口真嗣さんをはじめとするチームの皆さんと、ウルトラマンになるという秘密を抱えた状態をどこまで出すかのさじ加減を、一緒に考えて作っていきました。禍威獣(カイジュウ)特設対策室専従班(通称・禍特対(カトクタイ))の作戦立案担当官で頼もしいスペックを持つ人間ですが、言葉数が多いわけでも、群れるタイプでもない。よく言えばミステリアスで、悪く言えば調和しようという意識がない。そこは僕も心当たりがあるので、うまく融合できたらいいなと思いました。

■人は進化しているのか

――作品の魅力をこう語った。

斎藤:庵野さんと樋口さんが監督した「シン・ゴジラ」で証明された、オリジナル作品が持つ社会性と、それを現代にリブートする意味。この二つが、エンターテインメントの中に結実していて、とても惹かれました。

いま、映画は、局地的な社会性を持った作品と、マーベル作品のように壮大なマルチユニバースみたいなものを描いた中に社会性を宿した作品の二極化が起きていると思っています。「シン・ゴジラ」と「シン・ウルトラマン」は後者で、大作の中で描かれる社会性に、とても強い力があると感じます。

禍威獣は僕ら人間、いわゆる知的生命体が、進化しているのか退化しているのかわからない時間を過ごしている実態を、すごく冷静に捉えている。だから禍威獣の行動の理屈にどこか納得してしまうんですよね。人間は環境問題に対しての危機感をしっかりと持てているんだろうかと疑問を感じます。

人間と禍威獣は、“正義”と“悪”という対立構造に見えますが、その狭間にウルトラマンが現れたから、見えてくる概念がある。ウルトラマンのような目線が、いまの僕らには必要なのではないかと思うんです。これは正義、これは悪、どこかに線を引くことで戦争が起きてしまうのではないかと感じます。

■スタッフの愛情合戦

斎藤:「シン・ウルトラマン」は、例えば環境問題など、知的生命体のある種の愚かさを冷静に見つめ直すきっかけになる、グローバルな強さがあると思います。

――企画・脚本の庵野、監督の樋口をはじめ、製作陣は「ウルトラマン」に強い思い入れがある。

斎藤:あの世代の方たちが、映像の世界に導かれていったきっかけが「ウルトラマン」だったりする。「もし『ウルトラマン』が存在しなかったら、既存の多くの作品は生まれてなかったかもしれない」と、その深みとスケールを日に日に感じています。きっといつの時代も少年たちは、ヒーローの奥にある社会性から、何かをキャッチするんですよね。

今回は監督陣をはじめ、スタッフの方々の、ウルトラマンに対する愛情合戦みたいなところがありました。共通しているのは、オリジナルにリスペクトをしながら、技術的なことも含め、かつては描けなかったことを描こうとしていること。「シン・ゴジラ」の現場でもいち早くスマートフォンでの撮影が導入されていましたし、今回も好奇心と愛にあふれた現場でした。

一台のカメラで撮るのがベーシックの映画撮影スタイルですが、今回の現場ではあまりにも多くのカメラが分散してありました。今まで見たいけれど見られなかったアングルが、見られるようになった。僕ら出演者もスマホのカメラを持って撮影に参加しました。出演者も把握していないところにもカメラがあって、さまざまな視点からの映像がある。無数に採取された素材のなかに自分の肉体がたまたまある、という感覚に未来を感じました。日本の業態だと新しいことを取り入れるのに時間がかかることが多いですが、このチームは飛び級的に映画を進化させていると思います。

■ロマンの素地もらった

――自身にとって、ウルトラマンはどんな存在だろうか。

斎藤:僕はシュタイナー教育を受けていて、家庭では娯楽が制限されていたので、ウルトラマンシリーズを実際に観たのは大人になってからなんです。ただ、自宅にウルトラマンと怪獣のフィギュアはありました。実は父親が映像業界で仕事をしていて、そのきっかけが円谷プロでウルトラマンシリーズの爆破担当のアルバイトをしていたことだったんです。子どもの頃の僕はそのフィギュアを見て、勝手に物語を想像していました。父がそういう仕事をしていたことは、この作品に出演することを報告した時に、初めて聞きました。

父の弟にあたる叔父がかなりのウルトラマンフリークでした。僕が小学校高学年の頃、自宅にあったウルトラマンのフィギュアから別の娯楽に興味が移るようなタイミングで、ウルトラマンの魅力を熱弁されて、引き戻してもらった記憶があります。エンターテインメントにロマンを見いだす素地を作ってもらったのかなと思います。

――ウルトラマンには、唯一無二のフォルムがあるという。

斎藤:昨年末、初代ウルトラマンを演じられた古谷敏さんにお会いしたんです。ウルトラマンシリーズは古谷さんのフォルムで作られていることもあり、古谷さんの後ろ姿が完全にウルトラマンのシルエットで、美しかった。庵野さんにとって、このフォルムが“銀色の巨人”なんだなと思いました。ウルトラマンは芸術家の成田亨さんがデザインした、削ぎ落とされた美しさを持つヒーローです。それは精神的な意味も含めて。

僕が昔バックパッカーとして行ったタイの寺院にある石仏を思わせるような顔立ちをしていて、数ある海外のヒーローにはないアジアのトラディショナルな精神が宿っている気がします。健気さや儚さがあり、生と死が共存していてどこか仏教的。ウルトラマンには、ジェンダーレスな雰囲気も感じるんです。

(構成/ライター・小松香里)

※AERA 2022年5月16日号

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