ドーハが沸いた「日本は世界最高峰、W杯優勝の可能性」英BBCも日本を称賛

ドーハが沸いた「日本は世界最高峰、W杯優勝の可能性」英BBCも日本を称賛

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  • 更新日:2022/12/04
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試合後、喜びの記念撮影をする日本サポーター(筆者撮影)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

[ドーハ(カタール)発]試合終了間際に初のサッカー・ワールドカップ本大会出場を逃したドーハの悲劇から29年――W杯カタール大会で23日、7大会連続7度目の出場となった日本代表はグループEの初戦で、優勝4度の強豪ドイツ代表に2-1で劇的な逆転勝ちを収めた。ドイツは前回ロシア大会に続き、グループリーグ敗退の悪夢に苛まれている。

日本代表は前半、ドイツからボールを奪えず、クリアするのが精一杯だった。ドイツの猛攻撃を前に崩壊するのは時間の問題のように見えた。後半、4バックから3バックに変え、日本代表は不死鳥のごとくよみがえった。英BBC放送は「日本代表は世界最高峰、W杯優勝の可能性あり」という視聴者のメッセージを世界に向けて伝えた。

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日本のゴールマウス守った「ゴンダ・ザ・グレート(権田大王)」

前半33分フリーのドイツDFダヴィド・ラウム選手を倒してPKを与えた権田修一選手はその後、好セーブを連発。元イングランド代表ストライカー、クリス・サットン氏はBBCラジオ5ライブで「権田が素晴らしい、立て続けに4つのセーブを見せた。左右に倒れながら体を張った」と手放しで称賛した。

「ゴンダ・ザ・グレート(権田大王)のセーブがいかに重要だったことか」(サットン氏)

「日本が粘っているのは権田の4つのセーブのおかげだ!」(BBC)

権田選手は20秒間に4つの好セーブを見せ、日本のゴールマウスを死守した。日本人ゴールキーパーとしては2006年ドイツ大会W杯ブラジル戦の川口能活選手の10セーブに次ぐ8セーブの記録だ。

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GK権田修一をはじめ、吉田麻也、冨安健洋、遠藤航らもよく守った(写真:新華社/アフロ)

歓喜を呼んだ「ミトマ・マジック」

56分に浅野拓磨、三笘薫両選手が入ると、BBCは英イングランドプレミアリーグのブライトンでプレーする三笘選手について「日本は三笘のマジックで先制点を狙っているに違いない」と伝えた。ブライトンで三笘選手は「魔法使い」と呼ばれている。三笘選手がボールに触れるたび、サポーターはハラハラドキドキしながら何が起きるのか楽しみにしている。

ロンドン在住の筆者は三笘選手のプレーをテレビ中継やBBCのサッカー番組「マッチ・オブ・ザ・デー」で観戦しているが、ドーハのハリーファインターナショナルスタジアムで目の当たりにして驚愕した。三笘選手がボールを持つと、ドイツ選手は誰も近づけない。時間と空間は三笘選手のために用意されているかのようだった。

イングランドプレミアリーグの首位を独走するアーセナルの冨安健洋選手もレギュラーとして活躍している。これまでプレミアに移籍してきた日本人選手は試合に出場できるかどうかが精一杯でとてもクラブの戦力とまでは言えなかった。たまにピッチに立つことができても空回りして途中交代させられるシーンしか記憶に残っていない。

プレミアで三笘、冨安両選手の活躍を観てきた筆者はグループリーグでのドイツやスペインとの戦いは苦しいかもしれないが、勝機は必ずあると信じてドーハに乗り込んできた。ドイツDFを振り切って角度がほとんどないところから放たれた浅野選手の決勝ゴールは速すぎて全く見えなかった。ゴールネットが揺れると「ウォー」と叫んでいた。

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日本の劇的な逆転勝利に歓喜するサポーター(筆者撮影)

「22人のプレーヤーが90分間、1つのボールを追いかけ、必ずドイツが勝つ」

「自分たちのサッカーをしよう」という甘っちょろい考えは今の日本代表にはない。少なくとも2つのチームが共存し、激しくしのぎを削っている。ドイツ戦はプランA(4バック)でスタートしたものの全く機能せず、PKで先制点を許す最悪の展開。ドイツのボール支配率は前半80%を超えていた。前半を何とか0-1でしのぎ、後半プランB(3バック)を発動した。

勝算があったというより、リスクを伴うプランBで開き直って攻撃に転じるしか、ノックアウトステージに進出する道は開けなかった。後半、日本代表が攻め上がってくるゴール裏で筆者は同点弾と逆転弾を見た。一生の思い出になる。しかし夢はこれからも続くと確信させてくれるサムライたちの戦いぶりだった。

これまで幾度となくドイツに敗れてきた英国では「サッカーは単純なゲームだ。22人のプレーヤーが90分間、1つのボールを追いかけ、最後には必ずドイツが勝つ」(元イングランド代表ストライカー、ゲーリー・リネカー)と言われる。それだけに天敵ドイツの敗北に、英紙ガーディアンは「葛飾北斎の神奈川沖浪裏のような大逆転劇」と興奮を抑えきれなかった。

前日の22日にはグループCの初戦で、史上最多7度のバロンドール(年間最優秀選手賞)受賞を誇るリオネル・メッシ選手を擁する優勝2度のアルゼンチンにサウジアラビアが逆転勝ちし、大金星を挙げたのに続く「ジャイアント・キリング」に衝撃が走った。サウジアラビアは試合翌日の23日を国民の祝日にした。

「ドイツのハラキリ」

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ドイツ戦に勝利したあと、サポーターに挨拶するサムライたち(筆者撮影)

独誌シュピーゲル・スポーツは日本がドイツに逆転勝ちした試合について世界各紙の見出しをまとめている。

【イタリア】
ラ・レプッブリカ紙「神々の滅亡:アルゼンチンに続いてドイツも敗れる」
スポーツ紙ガゼッタ・デロ・スポルト「ドイツの切腹(ハラキリ):日本がクーデターを成功させ、2-1で勝利」

【スペイン】
日刊スポーツ紙マルカ「日本はドイツを黙らせた。ドイツ人は差別に抗議し、日本人は大騒ぎ」
同アス「ドイツの切腹。ハンジ・フリック監督のチームはコントロールしていたゲームを勝利の袋に収めることができなかった。日本のファイティング・スピリットは今大会2つ目の大きな驚きだった」
同ムンド・デポルティーボ「日本がスペインのいる組でドイツを倒す! 日本代表は4度の世界チャンピオンに歴史的な勝利を収めた」
日刊紙エル・パイス「フリック監督の選手交代でドイツは崩壊した。ドイツはイルカイ・ギュンドアンとジャマル・ムシアラを下げて日本の追撃を許した」

【英国】
大衆紙サン「ドイツは日本のスーパーサブのおかげですぐに帰国できるかも」
同デーリー・ミラー「ドイツはトーナメントの本命だったが、ブンデスリーガの堂安律、浅野両選手にゴールを決められ、フリック監督のチームをわずか1試合で敗退の瀬戸際に追い込んだ」

「ワン・ラブ」キャプテンマーク騒動

イスラム国家カタールの法律では「不道徳な行為」を行うよう誘惑したりそそのかしたりした場合、1~3年の実刑判決が下される。男色や獣姦(じゅうかん)行為を行うよう扇動または誘惑した者にも同様の処罰が科せられる。ドイツを含む7チームは寛容を象徴する「ワン・ラブ」のキャプテンマークを試合でつけることを予定していた。

しかし国際サッカー連盟(FIFA)に制裁を科すと脅されたため断念。ドイツ代表は23日、日本戦前の集合写真撮影で手を口元に当てるジェスチャーを行った。ナンシー・フェーザー独内相はスタンドでFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長の隣で「ワン・ラブ」腕章を着けた。ドイツ代表は保守層に「そんなことをやっているから負けるんだ」と揶揄された。

今大会、イラン代表は初戦イングランド戦の前に自国での人権弾圧に抗議して国歌を斉唱しなかった。「われわれの国歌を侮辱する者は決して許さない」という自国政治家の突き上げでイラン代表選手は今後の試合で国歌を歌わなかった場合、報復を受ける恐れがあるという。

スポーツを通じて人種差別や人権弾圧と闘う動きは世界中に広がり始めている。平和と人権が守られてこそのスポーツだからだ。

一方、日本では統一教会と自民党のつながりで支持率が低迷する岸田文雄首相は23日「宮中に参内し、新嘗祭神嘉殿の儀に参列いたしました。厳かな空気の中、五穀豊穣に感謝の念を捧げるとともに、皇室の弥栄と国家の安寧をお祈りいたしました」とツイートした。日本の政治は神話の時代にタイムスリップしたかのような時代錯誤に陥っている。

日本代表の逆転勝利について岸田首相は24日午前の参院厚生労働委員会で「日本全国に勇気を与える素晴らしい勝利だった。元気をもらい、私も国会で頑張りたい」と述べたが、日本代表にとってもサポーターに取ってもありがた迷惑なコメントに過ぎなかった。

木村 正人

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