太陽系の水が太陽よりもはるか以前に形成された可能性 アルマ望遠鏡が発表

太陽系の水が太陽よりもはるか以前に形成された可能性 アルマ望遠鏡が発表

  • マイナビニュース
  • 更新日:2023/03/18
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アルマ望遠鏡、相関器やデータ伝送システムに関するアップデート計画が承認

アルマ望遠鏡は3月16日、米国国立電波天文台(NRAO)による同望遠鏡を用いた観測により、地球からおよそ1305光年にある原始星「オリオン座V883星」の原始惑星系円盤において水(水蒸気)から放射される電波を検出し、円盤に取り込まれた水の同位体比組成に関して、星間雲時代のものと比べてもそれほど変化していないことを確認。太陽系を構成する水についても、太陽誕生よりも数十億年も前に形成されていたことが示唆されたと発表した。

同成果は、NRAOのジョン・トービン氏、米・ミシガン大学のメレル・ヴァンティーホフ氏、オランダ・ライデン大学のマーゴット・レームカー氏らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。

水は、少なくとも地球型生命の誕生や生存には必須であり、灼熱地獄でカラカラに乾いていたはずの誕生当初の地球に、いつ・どこから・どのようにもたらされたのかなどが、重要な研究対象となっている。これまでの研究から、地球の水と彗星の水の関係性、原始星の水と星間物質に含まれる水の関係性などは解明されたが、原始星と彗星の関連性を明らかにすることはできていなかったという。

ほとんどの原始星系では、中心星からのエネルギーが弱まるスノーラインの外側の寒冷な領域において、水は氷として存在している。そのため、原始星の円盤に含まれる水を電波で観測することは困難だ。ただし、スノーラインの内側は水が気体の水蒸気として存在するため、条件次第では水蒸気から放出される電波を用いた詳細な観測も可能となる。

その条件とは、スノーラインと中心星の距離と、星周円盤に含まれるダストの量だ。スノーラインの位置が中心の原始星に近すぎると、十分な水蒸気が無いため、電波を検出することは困難となる。また、星周円盤にダストが多く含まれている場合は、水蒸気から電波が放出されていたとしてもダストが遮ってしまうため、やはり電波を検出するのが困難だ。よって、スノーラインが中心星から遠い場所に存在すれば、十分な水蒸気が星周円盤内に存在することになり、また星周円盤内のダストが多すぎなければ、水蒸気から放出される電波を比較的検出しやすいということになる。そして、そのような状況が実現されている原始星の1つが、オリオン座V883星だ。


同星の星周円盤はかなり大質量で温度も高く、またそこに含まれる水は氷の状態ではなく、水蒸気の状態となっているという。そのような特徴から、同星は電波で太陽系の成長と進化を研究する上での理想的な観測対象となっている。

研究チームは、オリオン座V883星の星周円盤内の水と太陽系の水を比較するため、アルマ望遠鏡の非常に感度が高いバンド5(波長1.6mm)とバンド6(波長1.3mm)の受信機を使用して観測を実施。原始星、原始惑星系円盤、そして彗星といった太陽系形成の各段階での水について、重水素と水素の同位体比の比較を行った。すると、組成が変化せず、ほぼ同様に留まっていることが明らかにされた。

この結果は、太陽系の水が太陽・惑星・彗星が形成されたおよそ46億年前よりもずっと以前に形成されたということを示すという。これまでの研究から、星間物質の段階で水は氷として豊富に存在していることが理解されていた。そして今回の観測から、星間物質時代に氷として存在していた水が、太陽系が形成されている時に直接取り込まれたことが示されているとする。また、ほかの惑星系でも、大量の水が取り込まれて惑星が形成されなくてはならなかったということになるとしている。

太陽系の進化を理解する上で、彗星や微惑星の進化における水の役割を明らかにすることは重要だという。太陽は多数の星で構成される星団内で形成されたと考えられる一方で、オリオン座V883星は近傍に星が無く、相対的に孤立していたと考えられている。ただし、両者は巨大分子雲内で形成されたという重要な共通点がある。

星間物質中の水は微小なダスト粒子の表面に氷として形成されることが知られているが、これらの星間雲は重力崩壊によって若い星を形成し、水は若い星周辺の円盤に取り込まれる。最終的に星周円盤は進化し、氷を含むダスト粒子は凝集して惑星や彗星と共に新たな太陽系を形成するのである。星間雲中で形成された水は、重水素と水素の同位体比をほぼ保ったまま、原始星周辺の惑星形成が進行している原始惑星系円盤に進化していく。オリオン座V883星の水を調べることは、本質的には過去を調べ、もっと古い時代に太陽系がどのようだったのかを目撃していることになるという。

なお今まで太陽系の水に関して、各段階におけるその特徴についてはミッシングリンクが存在していたとする。しかし、今回の観測により、その1つが判明したとしている。

波留久泉

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