俵万智との往復書簡も収録! 大人の孤独に寄り添った、31文字で叫ぶ“哀愁短歌”

俵万智との往復書簡も収録! 大人の孤独に寄り添った、31文字で叫ぶ“哀愁短歌”

  • ダ・ヴィンチWeb
  • 更新日:2022/09/23
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『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』(枡野浩一/左右社)

大人には、言葉にするのが難しい孤独感や絶望を抱く日がある。伝えたいけれど、こんなどうしようもない気持ち、誰が理解してくれるというのか。そう思い、行き場のない感情と共に眠る夜を乗り越えたことがある人は多いのではないだろうか。

『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』(左右社)は、そんな誰もが人知れず抱えている気持ちを短歌という形で言語化した1冊だ。

著者は簡単な現代語だけで作られているのに、読むと思わず感嘆してしまう「かんたん短歌」で2000年代に若い世代の短歌ブームを牽引した歌人・枡野浩一氏。

夏休み限定の疑似家族の物語。とある女性と小学生とボクのひと夏――燃え殻『これはただの夏』

デビュー25周年を記念し、本作には入手困難な短歌集『てのりくじら』や『ドレミふぁくしょんドロップ』(ともに実業之日本社)などを含む、過去の歌集を全て収録。全く短歌の知識がなくても楽しめるた初心者におすすめだが、書籍未収録作も掲載されているので以前からのファンも必見な一冊となっている。

また、本書は同い年で同じ時代に別ジャンルのスターとして活躍したオザケンこと小沢健二氏の推薦書である点も熱い。

世の常として、他人に言えない孤独を歌にすると、他人に言えない孤独を抱えた、多くの人たちに愛される、のです。そして、そのことは一切、誰の孤独も軽くはしないのです。でも、歌は。あぁ、歌は。枡野さんのこの御本、とてもうれしい

オザケンがそんなコメントを寄せた枡野氏の短歌には、一体どんな魅力があるのだろうか。

青かった頃の自分にも出会える! 大人の孤独を受け止める短歌集

無限の可能性があるように思っていた幼少期とはうってかわり、できないことやなれないもののほうがはるかに多いことを自覚した大人の私たちには、自分に嫌気がさす日がある。

枡野氏はそうした、諦めにも似た絶望や孤独感に目を向け、短歌を詠む。例えば、『てのりくじら』に収録されていた短歌は自分を責めてしまうようになった人に刺さる。

“なにごとにも向き不向きってものがあり不向き不向きな人間もいる”

“階段をおりる自分をうしろから突き飛ばしたくなり立ちどまる”

なんとも言えない哀愁が漂う枡野氏の短歌には、大人の心の傷にそっと寄り添ってくれる優しさがあるのだ。

また、思春期を連想させる下ネタ混じりの作品や時代を彩った著名人が登場する歌、そしてラブソングの一節かのような甘酸っぱい短歌も多数収録されており、青かったあの頃の自分を思い出し、懐かしい気持ちにもなる。

“「よかった?」と質問してもいないのに「よくなかった」と答えてくれる”

“雨の日に吉本ばななを読み返す 「正」という字で死をかぞえつつ”

“好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君”

たくさんの出会いと別れを繰り返しながら、大人への階段を上っていたあの頃の自分に出会わせてくれ、夢や希望だけでは生きていけなくなった今の自分を慰めてくれる枡野氏の短歌。日常を“こなすこと”に慣れた大人こそ、触れてほしい。

生き方のヒントもくれる31文字の叫び

一方で、本作にはストレートで力強い短歌もあり、背中を押してもらえもする。

“ハッピーじゃない だからこそハッピーな歌をつくって口ずさむのだ”

“無駄だろう? 意味ないだろう? 馬鹿だろう? 今さらだろう? でもやるんだよ!”

そして、生と死をテーマにした作品も多く、改めて生き方や生きる意味を考えさせられる。

“息をする 生きていて今かなしみを味わっている 息をしていく”

“葬式は生きるわれらのためにやる 君を片づけ生きていくため”

“ハッピーじゃないエンドでも面白い映画みたいに よい人生を”

個人的には、今をより大切に積み重ねていこうと思わされた、この短歌が心にこびりついた。

“思い出をつくっておこう 寝たきりの老後に夢をみられるように”

枡野氏の短歌には年齢や置かれている環境、価値観の変化によって感じ方が変わっていくという奥深さもあるように思う。

なお、本作には『サラダ記念日』(河出書房新社)でおなじみの歌人・俵万智氏と枡野氏の往復書簡も特別栞として収録されているので、そちらも要チェック。

“こわいのは生まれてこのかた人前であがったことのない俵万智”

そんな1首を詠んだこともある、俵ファンの枡野氏は一体どんな言葉を送り、それに対して俵氏はどんな返事をしたためたのか、ワクワクしながら読んでみてほしい。

文=古川諭香

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