遠藤航は南野拓実の辛辣な言葉に納得。リオ五輪では自身の限界を感じた

遠藤航は南野拓実の辛辣な言葉に納得。リオ五輪では自身の限界を感じた

  • Sportiva
  • 更新日:2020/08/03

オリンピック出場がサッカー人生に与えた影響
第4回:2016年リオデジャネイロ五輪・遠藤航(後編)

リオ五輪での激闘の舞台裏を振り返る前編はこちら>>

2016年リオデジャネイロ五輪、日本はグループリーグでナイジェリア、コロンビア、スウェーデンと対戦。1勝1分1敗の勝ち点4でグループ3位に終わって、決勝トーナメント進出は果たせなかった。

最後のスウェーデン戦が終わったあと、五輪代表のキャプテンを務めた遠藤航(当時浦和レッズ。現在はシュツットガルト)は、南野拓実、興梠慎三らと宿泊先のホテルのラウンジで話をしていた。

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「一瞬で終わったなぁ」と遠藤が漏らした言葉に、彼らも「そうだな」と相槌を打ち、「もっとやれたのにな」と悔しさを滲ませた。

そして、興梠はこう言った。

「みんな、世界と戦うのに、ちょっとがむしゃらさに欠けるよ」

その言葉に、遠藤は頷いた。

「ここからステップアップできる選手、いるのかなぁ」

遠藤がそう語ると、南野は厳しい表情で即答した。

「いや、いないでしょ」

辛辣な回答だったが、遠藤は南野のその言葉に、妙に納得したという。それは、大会3戦を通しての結果を含めて、自分たちと世界の同年代との差、世界における自分たちの現在地が、はっきりとわかったからだ。

「大会を通して、個人的にもやれた感はなかったですね。ボランチとしては、物足りないと思いました。当時、(前所属の)湘南ベルマーレや浦和レッズでは、センターバックやリベロでプレーしていたので、ボランチを本職としてやっていたわけではなかった。ある意味、そこで限界が見えたというか、普段からそのポジションでやっていないといけない、と思わされた大会でした」

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リオ五輪での戦いを振り返ったあと、東京五輪についても語った遠藤航

具体的にどういう部分に、遠藤は物足りなさを感じたのだろうか。

「トータル的に、すべてにおいて、物足りなかったです。僕の良さは守備なんですけど、なんかがむしゃらさに欠けるというか、厳しさがないというか......。球際にいくにしても、ボールを奪い切れない物足りなさを感じていました。攻撃参加も、運動量も足りていなかったですし、世界と戦ううえで、ボランチとしてプレーすべき選手じゃない、と思いました」

遠藤は大会終了後、興梠が言った「がむしゃらさが足りない」という言葉が胸に突き刺さったという。

「興梠さんが言う『がむしゃらさが足りない』というのは、ただがんばって走るとかではなく、規律を守りすぎてしまっていた、ということだと思うんです。球際にがっつりいこうとしても、距離が遠かったり、相手がプレッシャーを外すのがうまかったりして、いき切れない。中途半端で、いき切れなくなってしまったのが、僕らのチームだった。見ている人からすると、僕らのチームは迫力不足だったと思います」

自らのプレーとチームとしての戦い方に、厳しい評価を下す遠藤。チームの迫力不足については、こんな見解も示した。

「日本の(選手の)いいところでもあり、悪いところでもあるんですが、(日本の選手は)規律をよく守るんです。でも、それを尊重しすぎてしまって、それがそのまま、ピッチ上にも落とし込まれてしまう。たとえば、スウェーデン戦では4-4-2にシステムを変更して、みんな、そのポジションで100%のプレーをしたと思います。でも、(与えられたポジションから)あまり動かず、変化が起きなかった。

世界で相手からボールを奪うのって、チャレンジとか、カバーとか(規律どおりに)やっているだけではダメ。それじゃ、絶対にボールは取れないんですよ。本当はこのポジションにいないといけないけど、(ボールを奪うために)それを無視して、ボールを奪いにいく判断ができるかどうか。そういう判断がその時、自分も含めて、足りていなかった」

遠藤は、大会前に掲げていた「リオ経由→海外移籍」という目標を果たすどころか、むしろ世界との距離を痛感し、自分がプレーヤーとして中途半端な存在であることを自覚した。そこで芽生えたのは"焦り"だったという。

「リオ五輪で、ボランチの遠藤を見た人にとっては、すごく物足りなさを感じたと思うんです。だから、自分自身もこれからどう生きていくのか、すごく考えました。所属クラブに戻ると、ボランチでプレーできないもどかしさを抱えていましたし、このままだと『海外には行けず、世界との距離がどんどん離れていく』『それでは、日本代表にも入れない』――そんな危機感と焦りが芽生えました。

ボランチの遠藤がいい選手だなと思ってもらうためには、(所属クラブで)普段からボランチでプレーし、しかも海外でやらないといけない。それが、選手としての評価を高め、代表でスタメンを取るためには必要なことだとわかったんです」

リオ五輪の前から日本代表にも招集されていた遠藤は、代表のボランチ候補のひとりだったが、クラブではセンターバックやリベロでプレーしていた。それぞれで違うポジションでプレーすることは、相当なストレスとなっていたはずだ。

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そうしたなか、遠藤は2018年ロシアW杯で日本代表メンバーに選ばれた。戦前の予想を覆して、チームは決勝トーナメント進出を果たす快進撃を見せた。ただし、遠藤の出番は最後までなく、ベンチから仲間たちの奮闘ぶりを見つめて終わった。チームは躍進したが、個人的には悔しさを噛み締める大会になった。

「ロシアW杯は"行っただけ"でしたね。正直(自分の)力が足りていなかった。リオ五輪の時も(大島)僚太が攻撃で、僕が守備と、(同じボランチにもかかわらず)明確に役割が分担されていた。今考えても、その時点で物足りないですよね。W杯後、ベルギーのシント・トロイデンに移籍して、そこで1シーズン、中盤のボランチでプレーして、ようやく代表で勝負できるかな、という感じでした。

今の世界のボランチは、攻守両面に関われる選手が主流。ベルギーで1年、守備だけではなく、攻撃も意識するようになって、改めて(攻守)両方ができないとダメだなって思いましたし、そういう選手になろうと思ってやってきた。

森保(一)監督になって、また日本代表に呼ばれるようになったのは、自分がその両面をうまく出せるようになってきたからだと思います」

その森保監督は、日本代表と兼任で東京五輪に挑むU-23日本代表の指揮も執っている。遠藤は、同チームについても注意深く見ているという。

「(五輪代表チームは)選手層が厚いですよね。海外でプレーしている選手が多いし、日本でも試合に出ている選手が多いですから。OA(オーバーエイジ)枠で入った選手がうまくハマれば、(メダル獲得となる)3位にはなれると思います。日本開催で、逆にプレッシャーがかかる面もあるけど、トミ(冨安健洋)とかメンタルが強い選手が多いですし、大声援を背にしていいパフォーマンスを見せてくれるはずです。

そういう意味でも、自分も含めて、OA枠でメンバーに入る可能性のある選手は、そこに自分が入るかもしれない、というイメージを常に持っていないといけない。(イメージなしに)急に呼ばれて『はい、やります』では、チームの力になるのは難しいと思うので」

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海外でプレーするようになって、攻守ともにレベルアップした遠藤航。photo by AFLO

OA枠での東京五輪出場へ、遠藤はそこへの野心を隠さない。

「そりゃ、出たいですよ。自国開催の五輪なんて、一生に一度しかない。僕は年下の選手とプレーするのに慣れているし、(チームに)溶け込める自信もあります。ただ、そのためには所属クラブで試合に出ていないといけない。シュツットガルトでボランチとして試合に出続けて活躍し、OA枠で『遠藤を使いたい』と思ってくれるようにやっていきたい」

東京五輪世代の選手は、海外でプレーしている選手が多い。とはいえ、レギュラーとしてコンスタントに試合に出ている選手は、まだまだ少ない。

その点、遠藤はレギュラーとしてプレーしており、日本代表の主力にもなりつつある。そういう選手が、若い五輪代表のチームに入るメリットは大きい。4位という結果を残した2012年ロンドン五輪における、吉田麻也のような存在になれるかもしれない。

「ただ、それまでに既存の選手が成長し、監督の信頼が高まれば、僕が呼ばれることはないでしょう。そんな選手として、僕が期待しているのは、中山(雄太)。彼はセンターバックをやったり、ボランチをやったり、これまでのプロセスが自分とよく似ているんです。

『本職がどこなのか?』っていう部分は、僕がリオ五輪の時に経験したことと同じで、(中山は)今、すごく難しさを感じながら、ボランチでプレーしていると思うんです。大変な時期にあると思うけど、シンプルにがんばってほしいですね」

東京五輪において、再び五輪の舞台でプレーすることを望む遠藤。W杯とは異なるが、五輪という"世界"は、特別なものなのだろうか。

「自分にとって、リオ五輪は間違いなくいい経験だった。3試合しか戦えなかったけど、初めての国際大会でキャプテンとしてプレーさせてもらったし、改めて代表の責任感というものを学べた。代表で結果を出すことの難しさも、肌で感じることができた。グループリーグを突破できなくて批判もされたけど、次は日本代表に入って『W杯で見返したい』という気持ちが強くなかった。

ただ、五輪の借りは、五輪でしか返せない。普通は1回しかチャンスがないけど、もう1回、そのチャンスをもらってメダルを獲る――そういう気持ちでいますし、OA枠で選ばれたら、それぐらいの覚悟でやるつもりです。その場所にいられたら、最高ですね」

国際舞台で勝つためには、まずは守備の整備が必須だ。キャプテンとして2大会連続で五輪出場を果たして、その守備に貢献し、日本をメダル獲得へと導く――。それだけの力が、遠藤航にはある。

(おわり)

佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun

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