アメリカで「ワクチン接種数」が“頭打ち”...? これは数ヵ月後の日本の姿かもしれない

アメリカで「ワクチン接種数」が“頭打ち”...? これは数ヵ月後の日本の姿かもしれない

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/05/04
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順調に思えるアメリカのワクチン接種

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ワクチン接種を受けるバイデン大統領/photo by gettyimages

アメリカでは新型コロナウイルスのワクチン接種が昨年12月中旬に始まって以来、この4ヵ月で着々と「ワクチン推進キャンペーン」が進められてきた。

その甲斐があってか、4月末の時点で、国内で2億2866万回以上の接種がなされ、少なくとも1回のワクチン接種を受けた人は1億4000万人以上にも上っている。接種回数も4月半ばの週にピークを迎え、1日あたり275万656回(7日間平均)が接種された。

3億2000万人を超えるアメリカの人口に対して、全人口の42.2%、成人人口の54.3%が、少なくとも1回の接種を済ませたという計算だ。ただし2回の接種(米ジョンソン・エンド・ジョンソン製なら1回)を「完了」した人は、全人口の28.5%ほどだ。

先は長いようだが、米製薬会社は6月末までに3億人以上が接種するに十分なワクチン数の確保を公約している。

これらの動きに伴い、州ごとに明るいニュースも増えてきた。ワクチン接種の拡大と共に感染者数は減少し、飲食店の時間短縮がなくなるなど経済再開が着実に進んでいる。

現地報道によると、国内での新型コロナ感染者数は前週比16%減と、2月以来の大幅な減少となった。

高齢者や医療従事者の“躊躇”は少ない

スピードを加速させているのは、政府によるワクチンキャンペーンの積極的な働きかけだ。接種は全額公費(無料)で行われ、自分の健康のみならず、愛する家族や周りの人への「思いやり」として接種を行うよう、メディアや広告を通して人々に呼びかけている。

ワクチンが解禁されてからというもの、新型コロナによる国内の累計感染者数は3220万人、死者数57万人を超えたアメリカでは、特に高齢者や持病のある人、感染リスクの高いエッセンシャルワーカーなどのワクチン接種への“躊躇”はあまり見られない。

春の到来と共に筆者の周りでも、「接種が終わった」「今度2回目を受ける」などといった安堵の声を頻繁に聞くようになった。

そんな中、CDC(米疾病対策センター)は4月27日、新型コロナに関する新指針を発表した。

それは昨春以降、一部を除き多くの州で義務付けられてきたマスク着用について、ワクチン接種を「完了」した人は、屋外での少人数での活動や会食においてマスクを着用しなくても良いとするものだ。

大規模集会やイベントは屋外であろうとも引き続きマスクが必要だが、「以前の生活」「正常な状態」に戻る兆しが日々、このように「可視化」されてきている。

バイデン大統領も同日の記者会見で「これらの規制緩和は若い世代にもワクチン接種の必要性を納得させるのに役立つはずだ」と述べた。

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ワクチン接種拡大に伴い、デブラシオNY市長は、7月1日までに飲食、オフィス、劇場などすべてのビジネスを再開する構想を発表した。コロナと共存しながら、経済活動のフル回転が始まっていく(筆者撮影)

その前週の4月19日からは、全州で16歳以上のすべての人がワクチン接種対象と大きく舵を切ったため、接種数の伸びは極めて順調だといえる、これまでは……。

ワクチン反対派の言い分

一方で気になるニュースもある。今日までスピード感を持って進められてきたワクチン接種だが、4月半ば以降の速度が緩やかになってきている。ここにきて接種拡大数の頭打ちが懸念されているのだ。

パンデミックを食い止めるには、多くの人が足並みを揃えてワクチン接種をする「協調的キャンペーン」が必要と言われている。

感染症専門のアンソニー・ファウチ医師は、アメリカの70%~85%の人々にワクチン接種が行き渡れば集団免疫を獲得でき、「以前の生活」「正常な状態」に戻ることができると述べている。

アメリカでは4月半ばのピーク時で、1日あたりの接種数は平均約275万回を超えた。このペースでいくと、人口の75%をカバーするにはあと3ヵ月ほどの計算だ。しかし、青写真通りにこのパンデミックが今夏で収束するのかと言われると、少し疑問が残る。

まだ接種をしていないのは、比較的若年層や基礎疾患がない健康体の人、科学的根拠や政府を信じない人、普段人と接触することがない職種の人などだ。

また、共和党支持派の男性や地方在住者は接種を考えていない傾向があると言われている。実際、米マンモス大学やクイニピアック大学が4月に行った調査でも共和党員の40%以上が「接種しない」「予定がない」と答えている。

最新の調査では、アメリカ国内の4人に1人が、ワクチン接種の対象になっても接種をするつもりはなく、さらに5%の人々は接種について未定と答えた。 筆者の周りでも、若い世代の人から「接種した」という話があまり聞こえてこない。

接種を受けない理由として、「自分は健康だから不要」や、ソーシャルメディアで共有される虚偽または誤解を招く情報に影響を受けたことにより「合併症や副作用への恐れ」、長期的な影響について不明点が多いことから「しばらく様子を見たい」などがある。

民主党寄りであるニューヨーク州でさえ、マスクやワクチン反対派が、スポーツ試合の会場前で、デモを繰り広げる姿を見かける。

大会場でのスポーツ観戦には、新型コロナの陰性判定やワクチン接種済みの証明書の提示が義務づけられていることが多いが、デモ隊の人々に話を聞くと「マスクは呼吸が苦しくなる」「日光を浴びてビタミンDを生成できればワクチンを打たなくても病気にならない」「マスク着用やワクチン接種は個人の自由であり強要はできない」「ワクチンパスポート、アプリ、QRコードなどで健康という個人情報を管理なんてけしからん」「ワクチンを打っていない人の差別につながる」というのが反対派の言い分だ。

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スポーツ会場前で行われている、反ワクチン&マスク派の抗議活動。「ワクチンの強要をやめろ」というメッセージを掲げている(筆者撮影)

集団免疫獲得への壁

「すべての人にワクチンを」をスローガンに、今ではテレビニュースやソーシャルメディアでワクチンという言葉を聞かない日はない。

ニューヨーク州では4月29日より、16歳以上の人々は予約をせずとも指定会場でワクチン接種ができるようになった。「あなたがすること。それはただ会場に現れることだけです」とクオモ知事は自信を持って新政策を打ち出した。州政府も連邦政府もあの手この手で、人々に接種を呼びかけている。

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NYのアメリカ自然史博物館では、予約不要で新型コロナワクチンを接種できる/photo by gettyimages

しかし、ワクチン接種が進んでいるアメリカでも「着々」とはいきそうにない。先程のデモ抗議を見ても、一定数いる「マスク拒否派」がワクチン接種をするようになるとは思えないからだ。

マスク拒否派の人々(主に共和党派)は本来、個人の自由を重んじるため、ワクチン接種を強制されるなんて真っ平御免だと考えている。

パンデミックを食い止めるには前出の通り、多くの人が足並みを揃えてこそ効果が発揮できる。ワクチンを打たない人が一定数いることで、前出の集団免疫獲得に必要な70%以上に届かない可能性が出てきてしまう。

数ヵ月後の日本の姿か?

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河野太郎ワクチン担当大臣/photo by gettyimages

世界規模で見ると、ブルームバーグの集計では172ヵ国で10億2000万回以上(1日あたり約1920万回)の接種がなされたという。しかしこれは世界人口のわずか6.7%で、このペースだと世界的な免疫を獲得するのにあと何年もかかるだろうとしている。

その中でも東京五輪を控えた日本は、先進国の中で唯一、ワクチン接種が出遅れている。

河野太郎ワクチン担当大臣は日本のメディアを通して、ゴールデンウィーク明けには毎週1000万回のワクチンが日本に届き、2週間で1800万回分(高齢者の半数分)を分配することを約束した。一般の人々への接種は秋以降になると見られている。

しかし、今後大量のワクチンが確保でき、接種スピードを早めることができるようになったとしても、アメリカと同じ壁にぶち当たる可能性は高い。

日本ではワクチン接種の利点よりも副作用がフォーカスされがちだ。接種はあくまで「努力義務」であり、接種者への特典を設けることに政府は慎重な姿勢を示しており、ワクチン推進の啓蒙活動も十分とは言えない。

果たして、この状況で日本のワクチン接種はスムーズに進むのだろうか。今アメリカが抱えている問題は、数ヵ月後の日本が抱える問題といえるのかもしれない。

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