鉄道ニュース週報 第247回 和歌山からラブコール「WEST EXPRESS 銀河」はどこまで行ける?

鉄道ニュース週報 第247回 和歌山からラブコール「WEST EXPRESS 銀河」はどこまで行ける?

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/10/17
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和歌山県紀南地方の7市町村と和歌山県は10月7日、「WEST EXPRESS 銀河」の誘致要望書をJR西日本和歌山支社に提出した。7市町村は紀勢本線沿線の新宮市、すさみ町、那智勝浦町、太地町、古座川町、北山村、串本町だ。テレビ和歌山の報道によると、新宮市の田岡実千年市長が代表してJR西日本和歌山支社を訪れ、冨本直樹支社長に要望書を手渡したという。

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紀伊民報の10月8日付の記事「観光列車『銀河』を紀南へ 7市町村がJRに要望」では、「7市町村と県は2年前から、鉄道を活用した観光活性化について勉強会や意見交換会を開き『銀河』誘致を議論してきた」と報じている。新宮市の田岡市長は、「魅力ある観光メニューを開発し、山陰に負けないおもてなしをしっかりと用意したい」と伝え、冨本支社長も、「銀河が紀南を走る日の実現に向け、ともに頑張っていきたい」と応じた。見通しは明るそうだ。

そういえば、紀伊半島には現在、地域独自の食事など、おもてなしを伴う観光列車が走っていない。紀伊半島は海の幸があり、温泉があり、オーシャンビューの車窓風景も素晴らしい。JR西日本もこれらの地域の魅力はよくわかっていて、新大阪(一部列車は京都)~白浜・新宮間で特急「くろしお」を日中に毎時1本の頻度で走らせている。パノラマ型グリーン車を連結した列車や「パンダくろしお」などもあり、にぎやかな印象がある。広い意味では、「パンダくろしお」も観光列車に分類していいくらいだ。

一方、JR西日本の観光列車は山陰・山陽・北陸エリアに分布している。「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は京阪神エリアから山陰・山陽エリアを巡り、山陰エリアの各地で「あめつち」「○○のはなし」「奥出雲おろち号」「うみやまむすび」、山陽エリアの各地で「ラ・マル・ド・ボア」「etSETOra(エトセトラ)」「SLやまぐち号」が活躍している。北陸エリアにも「花嫁のれん」「ベル・モンターニュ・エ・メール(べるもんた)」がある。

それだけに、紀伊半島の観光列車不在は、特急「くろしお」の隆盛に隠れた盲点だったといえる。沿線地域の人々は寂しい思いをしてきたと思う。「くろしお」はやはり昔ながらの特急列車であり、「早く移動する」手段に見える。山陰・山陽・北陸エリアのような、地域と一体となって盛り上がる観光列車が欲しいという気持ちはよくわかる。筆者自身、紀伊半島の観光列車に乗ってみたい。

「WEST EXPRESS 銀河」は昼行も夜行も対応する車両だ。紀伊半島の夜行列車といえば、国鉄時代に設定されていた「はやたま」があった。普通列車だけど寝台車を連結していたので、「はやたま」という列車名が付いていた。その後、寝台車が外されて愛称がなくなった後も夜行列車は存続していた。筆者は36年前に、天王寺駅からこの夜行普通列車に乗った。夜明けを迎え、青くきらめく海の眺めを覚えている。終着の新宮駅で食べためはり寿司が美味しかった。

「はやたま」の名称はなくなり、夜行普通列車も廃止されてしまったが、「WEST EXPRESS 銀河」なら再び同じ夜行体験ができるかもしれない。いや、沿線7市町村がおもてなしをしたいと言えば、夜間に通過するわけにもいかないか。そうなると昼行で、何度か「くろしお」に追い越されながらの行程になるだろう。実施も未定でダイヤも未定。いまは実現することを期待したい。

「WEST EXPRESS 銀河」は直流電化区間用の近郊形電車117系を改造している。紀勢本線の和歌山~新宮間も直流電化区間だから、走行には問題ない。紀伊民報の記事によると、2021年4月以降の運行ルートは未定。ただし、JR西日本管内の各地から要望が届いているという。ちなみに、JR西日本の直流電化区間は東海道・山陽本線をはじめ、湖西線、小浜線、舞鶴線、宇野線など、景色の良いところがたくさんある。紀州路運行のライバルは多そうだ。

非電化区間や保安信号の違いについては、JR北海道管内を走った「THE ROYAL EXPRESS」のように、電源車の連結や保安装置に対応する機関車で牽引するなどの方法もある。しかし、そこまで無理をしなくても、非電化区間にはディーゼルカーの観光車両を使えば良いわけで、「WEST EXPRESS 銀河」の目的地は直流電化区間に絞られるだろう。

私案ながら、京阪神エリアから瀬戸大橋を渡り、四国方面へ向かう観光列車にも期待したい。寝台特急「サンライズ瀬戸」も乗り入れているし、JR四国を支援するためにも有意義だと思う。

いずれにしても、運行区間を固定しない「WEST EXPRESS 銀河」が、季節ごとに違うエリアを走るという展開は面白い。各地を巡る中で、通年運行の手応えがあるなら、専用車両による観光列車も検討の価値がある。「WEST EXPRESS 銀河」が新たな観光列車の試金石というわけだ。もし紀州路専用に観光列車ができるなら、列車名はもちろん「はやたま」がいい。

杉山淳一

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