阪神快進撃の陰の立役者・中野拓夢。これほどの選手がなぜドラフト6位だったのか

阪神快進撃の陰の立役者・中野拓夢。これほどの選手がなぜドラフト6位だったのか

  • Sportiva
  • 更新日:2021/05/02

昨年秋のドラフトでの阪神は、1位で4球団が指名した近畿大の佐藤輝明を抽選で獲得。待望の「猛虎打線復活」の足がかりを固め、さらに2位でJR東日本の即戦力左腕・伊藤将司を指名。チームの弱点をカバーする最高の滑り出しを見せた。

ならば3位は内野手だろう......こっちの勝手な推測だが、ちゃんとした根拠があった。昨年の阪神はエラーが多く、失策数、守備率ともに12球団ワースト。そこを埋めるには、まずは守備力のある即戦力内野手の獲得が先決だ。そこで、國學院大の遊撃手・小川龍成あたりが面白いと思っていたら、直前でロッテに持っていかれた。

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そうなると東北福祉大の元山飛優しかいないはずと決め込んでいたら、阪神が指名したのは上武大の150キロ右腕・佐藤蓮だった。

たしかに、阪神は西勇輝や秋山拓巳を筆頭に、強さよりもうまさが目立つ投手が多い。投手陣のバリエーションを考えれば、佐藤の3位指名も十分に納得できるものだった。

そのあとも4位で超強肩捕手・榮枝裕貴(立命館大)、5位は肩の故障さえなければ2位か3位で指名されていたはずの右腕・村上頌樹(東洋大)を獲得。こりゃ内野手の補強はトレード頼みなのかと思っていた矢先、中野拓夢(三菱自動車岡崎)が6位で指名された。その瞬間「この選手がいたか!」と思わず声が出てしまった。

中野がいかにすばらしい選手かというのは、今年1月8日に配信した<一軍の戦力にぴたっとハマる。 早川、佐藤だけじゃない即戦力ルーキー>で紹介させてもらったが、ここまで見事な活躍を見せてくれるとは思っていなかった。

キャンプ、オープン戦から遺憾なくその実力を発揮し、開幕一軍をゲット。4月10日のDeNA戦で初スタメンと果たすと、そこから5月1日までの16試合のうち12試合に先発出場(トータルで22試合に出場)。打率もここまで.340をマークしており、セ・リーグ首位を走る阪神に欠かせない戦力となっている。

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攻守で存在感を見せる阪神のドラフト6位ルーキー・中野拓夢

守備の安定感というのは、阪神内野陣のなかでも抜けており、捕球から送球までの一連の動きは「さすが」のひと言である。スイングの瞬間というか、バットがボールに当たる直前にはすでに動き出している"初動反応"のすばらしさ。そのセンスもさることながら、抜群のスピードがあるから「ヒットかな」と思った打球でも追いついてしまう。

「あんなうまい内野手、見たことないです。ウチの歴代でもトップじゃないですかね」

中野が東北福祉大でプレーしていた頃、入学時から彼をじっくり見てきた村瀬公三助監督がそんなふうに絶賛していた。これまで何人もの選手をプロへ送り出し、辛口で知られる村瀬助監督をしても称賛の言葉しか出てこなかった。

「2学年下に元山(飛優)が入ってきたのでセカンドで使っていますけど、とにかく守備がうまい。セカンドもショートも、どちらもあれだけ高いレベルでこなせるヤツなんて、全国でもいないと思います。ああいう選手が、ゆくゆくは本当のプロらしいプロになれると思うんですけどね」

それから3年が経ち、中野は「本物のプロ」への道を歩み出した。

ただ、社会人の頃から見るたびに感心するのは、じつはバッティングである。171センチ、69キロの右投左打の俊足内野手。バントがうまく、三遊間へ流し打って内野安打......そんなイメージが湧くが、中野は打席の最後方(捕手よりの位置)に立つ。俊足巧打の打者というのは投手寄りに立つ選手が多いが、中野は「スラッガー」の立ち位置でバットを構える。

18.44mをフルに使って、少しでも球筋を長くみて、その代わりひと握り短く持ったバットで目いっぱい振り抜くスイングスタイルだ。うまさに加え、強さを持ったバッターなのである。

それにしても、なぜこれだけの即戦力内野手が6位まで残っていたのだろうか。何人かのスカウトに聞いたが、チーム事情やドラフト戦略での理由がほとんどだった。たしかに、中野の前に9球団がすでに「遊撃手」を指名していた。そのなかであるスカウトがこんな話をしてくれた。

「大学の時はセカンドとして見ていましたけど、社会人に入ってショートもこんなに上手いのかって、ちょっとビックリしました。ただ、スローイングに少し不安があるというスカウトがいたんです。中野くんはゴロを捕ったあと、余裕があるとボールを握った右手でグラブを叩くクセがあるようで、その際、トップをつくりきれずに投げてしまい、送球がブレると。とはいえ、守備の精度は高いし、スピード感があっていい内野手だと思いますけどね」

ビックリするようなスーパープレーはしないかもしれないが、守備範囲に飛んできた打球は確実にアウトにする。それこそ、プロの第一線で活躍する多くの投手が掲げる「プロらしい内野手の資格」なのである。

黄金ルーキー・佐藤の豪快なバッティングに目を奪われがちだが、中野のいぶし銀の活躍こそ、今の阪神には不可欠な気がしてならない。

安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

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