伝説の魚と、幻のコント台本(ランジャタイ国崎)

伝説の魚と、幻のコント台本(ランジャタイ国崎)

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  • 更新日:2021/11/25
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お笑いコンビ・ランジャタイの国崎和也が、徒然なるままにコラムを執筆。本連載での名義は「ふっとう茶そそぐ子ちゃん」です。

第5回は、ある人物とのささやかな思い出話。

「大」の大人が見つけた、本物のダチ

東京に来て、大変お世話になった人を書こうと思います。

『能美次郎』さんという芸人で

住んでいるところが近所ということもあり、

休みの日は、ジローさんとメシに行くことが日課になった。

それから数年後、

ジローさんが、芸人を引退することになった。

「でもまあ近所だからなあ、いつでも会えるか」

そう思いながら、

『能美次郎ラストライブ』という、

ジローさんの引退ライブを観に行った。

ネタもよかったが、

エンディングのときに

ジローさんの「元相方」さんが駆けつけてくれて、

「ジローさん、お疲れ様!

もうすぐ誕生日でしょう?、、これ!」

と、誕生日ケーキを持ってきてくれた。

ジローさんはビックリして、

「うわー何?!うれし〜!!ケーキ?!」

と、はしゃいでいると

ケーキを運んでいる途中で、ケーキにささっているロウソクの火が消えてしまう。

すると、ジローさんが

「せっかくだから、もう一度火をつけてもらえる?」

と、

一度ケーキを袖に引っ込めた。

最後のライブ。誕生日ケーキに、火をつけて終わりたい。

そして、しばらくしてケーキが運ばれてきたが

なんと、また途中でロウソクの火が、消えてしまった。

「せっかくだから、もう一度、つけてもらえる?」

再び、袖に運ばれていく誕生日ケーキ。

そして、ケーキがやってくるが

またもや火が消えてしまう。

「せっかくだから、、もう一度、つけてもらえる?」

ジローさんなりに、こだわりがある。

「もう一度、せっかくだからつけてもらえる?」

絶対に火をつけたい。

そのあと、何度も、何度も

ロウソクの火が消えて、

何度も運ばれてくる誕生日ケーキ。

そのたびに、

「うわあ、何、何〜?!」

と、はじめて見たかのようにリアクションして驚き、

ロウソクの火が消えたとたん、

「、、せっかくだから、もう一度、つけてもらえる?」

と、袖にケーキを引っ込める。

これが、ふざけ半分ではなく

本気でやってるから、おかしくて仕方なかった。

その日、ジローさんは芸人を引退して

「芸人の先輩」から、

「近所の気のいい兄ちゃん」になった。

当時、お金がないことや、家にお風呂がない自分を知っていて

「腹減ったろ?なんか食うか?」

「俺んち風呂わかしたけど、入るか?」

「グルメ券もらって、1人で使うのもなあ?一緒にどうだ?」

そう言って、

なにかと理由をつけては、ご馳走してくれた。

もっぱら食べたあとは、近所のゲームセンターに、2人でずっと張り付いた。

お目当ては、魚を釣って遊ぶ、大型メダルゲーム。

そのメダルゲームに本気になり、ジローさんと、まわりの子供たちと、日々ヤッキになって魚を釣っていた。

大きい魚が来たときは、

「なんだよォ!あれ!」

「でっけーー!!」

「釣れるぅ!?あれ!」

「オイオイなんだぁ?!」

など、子供たちと一緒にリアクションしていた。

「大」の大人だ。

「大」の大人が、子供にまじって、一喜一憂。

真っ昼間から全力だった。

このゲームを、2人で自転車を飛ばして、隣町のゲームセンターへ。

毎回通い詰めてやっていた。

覚えているのは 冬のある日

『伝説の魚』が、登場した。

目が光り、画面いっぱいに真っ赤な巨体に、みんなで「うわあああ!?」と、どよめいた。

噂には聞いていた伝説の魚が、目の前に現れた!!

すぐさまみんなで総力戦でかかったが、釣り糸が切れる切れる!!

さすが「伝説の魚」、、!!

コンティニューして、お金がなくなるなくなる。

「なんなんだよぉ、、」

「ふざけんなよー、、!」

「どうしよおお、お金もうない、、、」

子供たちの悲しい顔。

それを見て、思い立った。

俺は、大人なんだ。

大人は、お金をもっている!!(バイト代)

そうだろ?

お金にものを言わして、

伝説の魚に挑んだ。

コンティニュー!コンティニュー!

コンティニュー!コンティニュー!

100円!!200円!!!

300円!!400円!!!!

コンティニュー!コンティニュー!

コンティニュー!コンティニュー!

800円!!1000円!!!

1500円!!2000円!!!!!

コッ、コンティニュー!!コンティニュー!!!

コッ、!!コンティ、コー!!!!コココココココうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

「いっけー!!!」

「もうちょい!もうちょい!!!」

「釣れる!釣れる!」

「がんばれー!!!!!」

子供たちの声が、勇気に変わる。

「「「「「「「いけー!」」」」」」

いまならわかる。

こいつら、ダチだったんだ。

本物の、本物のダチだったんだ。

君たちの声援で、何度も何度も、、

おじさんの財布から、お金が飛び出すよ!!!!

ぬあああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーー!!!!

『『『『『『『バシャ〜ン!!!』』』』』』

豪快な音が、店内に響き渡った。

『伝説の魚』を、釣り上げたのだ、、!!

「うわあああああああA A A A A A A A!!」

雄叫びをあげた。

大の大人が、ゲーセンで雄叫びをあげた。

恥ずかしくはなかった。

子供たちも、叫んでいたからだ。

あの瞬間、

年齢も、世代も、価値観も、

そんなのぶっ飛ばして

子供たちと、雄叫びをあげた。

最高だった

絶対走馬灯に出てきてほしい。

そのあと、伝説の魚を釣り上げた我々は、子供たちから『ヒーロー』として扱われた。

『やだ。。ここが自分たちの居場所かも。。』

へんな感情も生まれてきた。

ゲーセンに通う日々

だんだん魚釣りのコツもつかめてきて、だいぶ貯メダル(ゲームセンターに預けられるメダル)も貯まって、

一ヶ月くらいは遊べるんじゃない?くらいまでメダルが貯った。

「楽しいなあ〜、オイ!」

マリカーを運転しながら笑うジローさんが、

気のいい近所の兄ちゃんだった。

カッコつけジローさんからの、唯一の頼みごと

そのうち、自分が引越して、

お笑いライブの出番が増えて

お互いなかなか会う機会もなく

会うのは月に一回、数ヶ月に一回となっていった。

そして、今年の2月

久しぶりに会ったジローさんに、

『事情があって、田舎に帰ることになった』

と伝えられた。

そのときはまだ実感がわかなくて、

「そうですかあ、、はあ、、ええ。。?」

とかごもってしまって、ふわりと相槌をうった。

そうこうしているうちに、ジローさんは真剣な顔で、

「5月いっぱいで帰るんだけど、、頼みがある」

そう言った。

少し驚いた。

ジローさんから、いままで頼みごとをされたことがなかったからだ。

「お金以外なら、大丈夫ですよ、ええ。」

そう返すと、

「お金も〜できれば欲しいんだけどね!」

そう笑って、でも違うよ、なあ、ははは

と、話しはじめた。

ジローさんは、ここ数年

やっぱりお笑いが好きで、なんとかお笑いに携われないかと、「作家」を目指していたらしい。

バイトしながら、趣味でコントを書いていたのは知っていたが、それが本気で作家を目指していたことは、その時はじめて知った。

「それがさ、どうしても田舎に帰んないといけなくなって、、もう、どうにもこうにもいかねえんだよね」

そこで、と。

「もしよかったらでいいんだけど、、〇〇さんと、同じライブになることがあったら、俺の書いたコント台本、渡すことはできないか?、、もしタイミングとかあったらでいいんだ。あれだよ?座付き作家志望、なわけじゃないんだ。ただ、、帰る前にさ、、なんか見てほしくて。」

それは

ジローさんから初めてされた、頼みごとだった。

ジローさんはカッコつけなので、絶対にこんなことはしない。

自分が書いたコントを、東京に来て、お笑いをやっていた「証」を見てほしい。

いつもお世話になっていたジローさんが、僕を頼ってくれている。

「もちろん。〇〇さんまだ会ったことないですけど、きっと渡すだけならできますよ!」

ジローさんの頼みごとに、心良く返事をした。

「たださ、まだコントが出来てないんだよね。出来次第連絡するから、待っててくれよ、な?な?」

完成させたら!

という理由で、僕は待つことになった。

そして、ある日のこと。

ついに、

ジローさんがコント台本を渡したがっていた方々と、ライブで一緒になることになった。

大チャンスだ。

すぐさまジローさんに連絡をした。

「ジローさん!大チャンスです!ここです!!ここで渡しましょう!ここしかないです!!」

「マジか!?おおお!!マジか?!、、、」

興奮したジローさんに言う。

「ジローさん、思いきっていきしましょう!!」

「まあな、でもお前〇〇さんたち初対面なんだろう!?大丈夫なんか!?」

「誠意を持って渡すだけなら、きっと大丈夫です!!きっと伝わるはずです!」

「そうか、、!!そうだよな!!よし!、、、、いまさ、三本コント書いてて。あと一本で完成なんだよね。なんとか間に合わせなきゃな!なあオイ!」

一気に嬉しくなった。

あとは──。その気持ちを、渡すだけ。

それから、少しバタバタして、

日々は過ぎて、

ある日のライブ。

「あ!」

ジローさんから『コント台本』をもらってないと気がついたのは、そのライブ会場に着いて、初対面の〇〇さんに挨拶をしたときだった。

「、、」

『完成したら連絡する!』と言っていた

ジローさんからの連絡は、

ついになかった。

そして、今年の2月。

ジローさんが田舎に帰る前の日に、

会うことになった。

「よォ、久しぶり。」

ジローさんは、いつもと変わらぬ様子で来た。

そのまま、公園で少し話をした。

「あのメダルがさあー、、」

芸人時代の会話よりも、

ゲーセンに2人で張り付いた話、

伝説の魚を釣り上げた話、

あのご飯屋がうまかった、

あそこのラーメン屋はテーブルにネコが乗ってきた、

ありゃひどかったなあ!とか、

そんな他愛もない話ばかりだった。

まだ肌寒い公園で、

「キーコーキーコー」ブランコをしたあと、

「明日さあ、朝イチで行くよ」

ふと、ジローさんが言った。

「あっちに行ったらさあ、、遠いから、なかなかこっちには遊びに来れんなあ、、。あのゲーセンにも、うまい飯屋にも、な、、。、、」

ブランコに乗ったまま、そのまま

「あの、」

どうしても、

「あの、、。」

どうしても、聞きたいことがあった。

「渡せませんでしたね、コントの台本」

ジローさんからの連絡がなかったから

自分も催促せずに、

あやふやになったコント台本

「ん?、、ああ、あれか。ははは、、」

少し黙ったあと、

「あれな、、実はもうできてたんだよ」

「え?」

そんなことを、言った。

「いやあ、、よく考えたらさ。

お前はこれからテレビ出てくんだろ?

この先、いろんな芸人さんと関わっていくと思うんだよ。

そんなのにさ、初対面で、

いきなり、知らないやつのコント台本を渡して、

渡されたほうは、どう思うかなって。

変なヤツだって。

なんだアイツって。ふざけてんなって、、

評判悪くなったら、、なあ?

、、俺、イヤでさ、」

ジローさんは、

「どうしても、連絡できなかったよ。はは」

照れくさそうに、笑った。

「、」

どこまでも、

気のいい近所の兄ちゃんだった。

「いやいや、僕なんか最初から変だと思われてますよ。変なんだから」

「そうかあ?ははは」

そのあとまた他愛もない話をして、

「でさあ、」

「はい」

帰り際

いつもの様子で、

「じゃ、またなー!」

ジローさんは帰っていった。

別れてから、

商店街の道を、自転車をこいて帰った。

夜だからほとんどシャッターが閉まっていて、

途中でファミリーマートを見つけた。

すぐさまファミチキを買って、

来た道を戻った。

少し走ったあと

ジローさんの後ろ姿を見つけて、

「おーい!」

と追いついた。

「ジローさん!ファミチキ、食べましょう!」

「なんだよそれ、ははは!」

お前やっぱり変だなあ、と笑って

2人でファミチキを食べた。

「おい、こんなの他の先輩にするなよ?!ヤバいやつだと思われるからな?オイ、だいたいお前は、、」

「ふぁい」

ジローさんからの説教を、ファミチキを食べながら聞いた。

「、」

ジローさんが分けてくれたファミチキは、

僕の方が大きかった。

「聞いてるのか?なあオイ??」

いつまでも、

いつまでも、気のいい近所の兄ちゃんだった。

隣町。

あのゲーセンには、
山ほどのメダルが眠っている。

あの頃に貯めたメダルを使わないまま
ずいぶんと時間がたってしまったけど

ジローさんが東京に遊びに来たときは、
隣町に向かいたい。

「いいゲーセンがあるんだ」と、

知られながらも案内したい。

伝説の魚を──釣り上げたい。

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能美次郎

《追記》

このあいだゲーセンに行ったら、
メダルの『保管期限』が切れてたらしく、貯メダルは全部なくなっていた。

マジやばくない!?
もうサイアク〜!!マジげんなり!
げんなりの最大級のやつ!
げんなななななりん!!!
プーっ!
そら屁もこくわな!
ジローさんもうあれないよ!
メダルゼロ!!
遊べないっぽい!!ドイヒー!
ドイヒーの最大級のやつ!
ドドドイのドイ!!ヒーヒヒーのヒー!!
ヒーヒヒーヒヒー!!
プーっ!
そら屁もこくわな!
マジもう、ね!
プーっ!そら屁もこくわな!
マジ、ね!
プーっ!そら屁もこくわな!マジ!!プーっ!マジ!そら屁もこくわな!プーっ!そら屁もこくわな!マジ!プーっ!マジ!プーっ!!そら屁もプーっ!こくわな!プーっそら!屁も!プーっマジこくわな!プーっそらマジこくわな!屁もこくプーっ!マジ!そら屁もプーっ!こくわな!プーっ!プーっ!そらプーっ!マジプーっ屁プーっもこくわプーっマジっ屁もプーっ!こく!プーっわな!そらプーっマジプーっ!ジローさんプーっ!プーっ屁もプーっ!プーっ!プーっ!マジこくプーっ屁もプーっマジプーっこくマジ!プーっ!マジ屁もプーっ屁もこプーっ!マジプーっ!ゲーセン屁もプーっこくプーっマジゲーセンこくプーっマジ!屁もプーっ!

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