カタールW杯一番乗りのドイツ。新監督と絶妙な選手構成でリベンジを期す

カタールW杯一番乗りのドイツ。新監督と絶妙な選手構成でリベンジを期す

  • Sportiva
  • 更新日:2021/11/25

強豪国のカタールW杯(2)~ドイツ

今回のW杯予選で、世界で最初にカタール行きを決めたのはドイツだった。10月11日の欧州予選第8節で、どこよりも早くグループ1位を確定させた。

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ドイツはここ数年、受難の日々が続いていた。

最初の受難はディフェンディングチャンピオンとして臨んだ2018年のロシアW杯。ドイツは同じグループのメキシコや韓国に敗れ、まさかのグループステージ敗退。それも屈辱的な最下位という順位だった。

その後は若返りを図るも、なかなかうまくいかず、ちょうど今から1年前の2020年11月に行なわれたネーションズリーグのスペイン戦で、0-6という歴史的大敗を喫してしまう。ドイツが公式戦でこれほどの点差で負けたのは史上初。6点差で負けた記録は1931年のオーストリアとの親善試合にまで遡らなければならないという。ドイツのサポーターは国民性からか数字やデータを重要視する傾向がある。この大敗は彼らにとって大きな屈辱だった。

それに追い打ちをかけるように、今度は今年の4月、W杯予選で、北マケドニアという国の規模としてもサッカーのレベルにおいてもドイツとは比べることのできない小国に、それもホームで1-2と敗れてしまう。6月のユーロ2020でもドイツは強豪としての威厳を見せることができず、ベスト16で敗退。敗れた相手が永遠のライバル、イングランドであったこともドイツ人の悔しさを倍増させた。

つまりここ数年間は、ドイツサッカーの歴史のなかでもかなり悲惨な日々だったと言える。

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新生ドイツ代表のカギを握るセルジュ・ニャブリ photo by AP/AFLO

北マケドニアに敗れる少し前の3月、ヨアヒム・レーヴ監督が、ユーロ終了後に退任することを発表した。レーヴは代表監督を15年間、いや、ユルゲン・クリンスマン監督のもとでのアシスタントコーチ時代を入れると実に17年間もドイツ代表を率いたことになる。

退任を決意したのはレーヴ自身だった。彼もまたチームに新しい風を入れることの必要性を痛感していたのだという。2022年のカタールW杯、そして2024年の自国開催となるユーロで結果を出すには、いち早くチームを新しい監督にゆだねたほうがいいというのが、この決断の理由だった。

後任にはリバプールのユルゲン・クロップ、シャルケやライプツィヒなどを率いたラルフ・ラングニックなどの名前が挙がったが、彼らを抑えて代表監督の座に就いたのはハンジ・フリックだった。私個人は、最高の人選だったのではないかと思う。

フリックは監督としてのキャリアこそ浅いが、2006年から2014年まで代表のアシスタントコーチも務め、2008年のユーロでレーヴが退場になった(準決勝のポルトガル戦)際は、チームを率いて勝利に導いたこともある。ブラジルW杯での優勝も経験し、代表でのありかたも、その空気も、そして選手たちのことも熟知している。

監督としての手腕も見事だ。2019-2020シーズンの半ばにアシスタントからバイエルンの監督に昇格すると1年目でいきなりリーグ、チャンピオンズリーグ、DFBポーカルの三冠を達成し、その後はドイツスーパーカップ、UEFAスーパーカップ、クラブワールドカップも勝ち取っている。

フリックが監督に就いてから、ドイツはここまで7戦7勝。いち早くカタール行きを決めることができた。ドイツサッカー界においては久々に明るいニュースだったろう。

ただ、これでドイツが再び強くなったと手放しで喜ぶのは早計だ。ドイツの入った予選のグループJはリヒテンシュタイン、アイスランド、アルメニア、ルーマニア、北マケドニアと、メンツにかなり恵まれていた。ドイツが首位でないことのほうがおかしい。イングランドとポーランド、フランスとウクライナ、スイスとイタリアが同組に入っている他のグループに比べても、難易度は格段に低かっただろう。

いずれにせよカタール行きのチケットは手に入れた。これからの1年、ドイツはW杯に向かって、腰を落ち着け、新しいチームを作ることができる。カギを握るのはフリックの采配だろう。新監督は代表への信頼を取り戻し、チームにいい空気を作ろうとしている。

現在のドイツの強みは、若手とベテランのバランスが絶妙に取れていることにある。チームにはすべての年代の優秀な選手がそろっている。フリックはベテランを追い出すのではなく、ベテランのそばに優秀な若手をうまく配することで、経験とパワーを融合させようとしている。

たとえば32歳のトーマス・ミュラーは監督の信頼が厚く、31歳のイルカイ・ギュンドアン、35歳のGKマヌエル・ノイアーもそのまま使い続けている。

バランスを保つのに重要な20代後半の中堅もしっかりと存在する。バイエルンのMFレオン・ゴレツカとヨシュア・キミッヒ、パリ・サンジェルマンのユリアン・ドラクスラー、チェルシーのアントニオ・リュディガー、モナコのケビン・フォラントらだ。

なかでも新たなドイツの核となりうるのはバイエルンの26歳、セルジュ・ニャブリだ。背番号10をつけ、W杯予選ではこれまで5ゴールとチームで一番多くの得点をあげている。同じくバイエルンの25歳、レロイ・サネとともに、新生ドイツのキーとなる選手である。どちらもアフリカの血を引いており、ドイツの生真面目でハードなプレーに色彩を与えてくれる。

その下の世代も順調に育ってきている。筆頭はチェルシーの22歳、カイ・ハバーツ。チェルシーのチャンピオンズリーグ優勝に貢献し、ユーロ2020でも活躍を見せ、多くのビッグクラブが触手を伸ばしていると言われる。カタールでブレイクするかもしれない注目の若手のひとりだ。

バイエルンのFWジャマル・ムシアラ、レバークーゼンのMFフロリアン・ヴィルツはともに18歳。あまりにも若く、最終的にメンバーに入るかどうかはわからないが、クラブではすでに多くの試合に出ており、結果を残している。覚えておいてほしい選手たちだ。

このままフリックのチーム作りがうまくいけば、ドイツは優勝候補の3本の指のなかに入ってくるだろう。ドイツはただ参加するためにカタールに行くのではない。ここ数年の不振のリベンジを果たすため、本気で優勝を狙いにいくのは確かだ。-

リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon

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