自衛隊のワクチン接種戦略は正しい 中国ワクチン外交はもう終わり

自衛隊のワクチン接種戦略は正しい 中国ワクチン外交はもう終わり

  • WEDGE
  • 更新日:2021/06/11
No image

自衛隊によるワクチン大規模接種会場(アフロ)

自衛隊のワクチン接種予約システムで接種券に適当な番号を入れても受付できることが批判された。アエラドットが5月17日、予約サイトで、接種券に記載されている6ケタの市区町村コードと10ケタの接種券番号、さらに自分の生年月日すべてを、適当に入力しても予約できるようになっている、つまり、接種券を持っていなくても、簡単に予約できてしまうと「欠陥」を指摘する報道を行った。毎日新聞や日経クロステックも同様の問題を報じた。しかし、これは欠陥だろうか。

自衛隊が、なぜそういうソフトを作ったかというと、元データに照合していたら間に合わないからだ。市区町村の予約システムは独自のもので、そんなものに合わせて連携するソフトを作っていたらいつまでたってもできない。

会場では接種券がないと受けられないので、でたらめに予約した人が実際に接種できることはない。悪意のある人、愉快犯が大量に予約をしてキャンセルを続出させれば困るだろうが、今のところキャンセルは十数%のようである(そのうち悪意のものがどれだけあるかは分からない)。市区町村の独自システムに合わせて自衛隊が予約システムを作ることによって接種が遅れることと、わずかにキャンセルが増えるかもしれないこととどちらが問題だろうか。

なお、自衛隊のソフトで予約したものが消えてしまう、2回目の接種予約を取ろうとしたら通信障害があったというトラブルもあった(どちらも一時的なトラブル)。本稿の目的ではないので、これらは正しくなかった、とだけ書いておく。

また、自衛隊が運営する大規模接種会場で新型コロナウイルスワクチンの注射を受けた人が、自治体の接種予約をキャンセルしていない「二重予約」が起きているという問題もある(読売新聞オンライン2021/05/27)。こちらは自分でキャンセルしてもらわないといけない。

大事なのはたくさん打つこと

戦争で大事なことは大局を見ることである。私は、戦争に詳しい訳ではないが、戦争映画では、敵の現場指揮官などを射殺する狙撃兵は、敵の指揮系統を混乱させ士気を挫くために重要らしい。狙撃兵のもつ銃は何百メートル先からピンポイントで狙える銃だが、普通の兵士の持つ銃は命中率は低いが手間がかからず故障しない銃だ。そもそもワクチンを打つのに、それほどピンポイントで打つ必要があるのだろうか。

なぜ、医療関係者や高齢者に優先的に打つ必要があるかと言えば、前者は感染者に接触する可能性が高く、かつ、彼らが感染すれば医療が崩壊してしまうからだ。高齢者を優先するのは、感染すれば重症化する確率が高いからだ。だから、ほとんどの国で医療関係者、高齢者を優先している。しかし、感染を広げる可能性の高い人に優先して接種すれば感染を早く抑えられるという説もある。新宿区は、本年7月7日から行動範囲が広いとされる20代から30代の若者を対象に、優先的に集団接種の予約を始めるという(「64歳以下ワクチン接種 新宿区は若者から優先的に集団接種」NHK首都圏NEWS WEB、2021年6月3日)。

こう考えると、自衛隊の接種会場のある都心の大手町まで接種を受けにくる高齢者は元気な高齢者に違いなく、おそらく感染を広げる可能性も高い高齢者だ。このような高齢者に先に接種するのは一石二鳥の妙案だ。

つまりは、コロナとの戦いでは、たくさん打つことが重要で、狙撃兵がピンポイントでゆっくり狙って打つようなものではない。自衛隊のソフトは、コロナとの戦争の大局を理解した正しい戦い方に則ったもので、批判は大局を理解していない。

ワクチンは1回分たりとも無駄にするな、優先順位を厳密に守れという言論が広がるのはワクチンが足りないからだ。インフルエンザワクチンなどは毎年5%以上を無駄にしている。だからと言って、インフルエンザワクチンを1回分たりとも無駄にするな、などという言説を聞いたことがない。

中国のワクチン外交はいかに

自衛隊の東京会場では、予約がなかなか埋まらなくなっている。多くの人が不思議だというが、私はワクチンが余ってくることを示しているものだと思う。余って予約が埋まらなくなってくれば、若者に打てば良いし、場合によっては接種券がなくても本人確認書類だけで打っても良い。

ワクチン嫌いの人はいて、「コロナワクチンに関する意識調査」(リーディングテック)によれば、62.8%の人は接種を希望するが、37.3%の人は希望しないとなっている。海外の例を見ても、人口の6割に達したイスラエルは新規の接種数が激減している。イギリスもアメリカもそうである(未成年は接種しないので全人口に対する比率は6割でも成人人口に対する比率は8割)。日本はファイザー7200万人分、モデルナ2500万人分、アストラゼネカ6,000万人分、95%の有効率があるファイザーとモデルナで9700万人分を確保している。日本の18歳以上人口は1億756万人、8割の人がするとすれば8600万人分のワクチンがあればよい。5%を無駄にしても9,215万人(9,700×0.95)に打てる。

ごくわずかだが血栓のできる可能性があり、有効率が7割と言われているアストラゼネカのワクチンはもう余ることが分かっている。アストラゼネカのワクチンは、イギリスや大陸欧州諸国、韓国など71か国で接種しているから問題はないと私は思う(ファイザー社製は72か国。「EU主要国、アストラゼネカ製ワクチン接種を再開へ」BBC|Japan 2021年3月19日)。

政府は、6月4日、まず台湾に124万回分を提供した。今後さらにベトナムやマレーシアにも供与するとのことである。

これはまた、中国のワクチン外交も今年までだ、ということである。私は、中国のワクチンよりアストラゼネカのワクチンを打ちたい。アストラゼネカのワクチンは日本で製造している。ライセンス料さえ払えばいくらでも製造することができるだろう。ファイザーもモデルナも、高く売れる先進国に売った後は、安くても途上国にたくさん売りたいはずである。

中国がワクチンを海外に配布できることが、共産主義体制の勝利を示すものだという中国の自己宣伝を信じる人が日本にもいることは残念だが、仮に勝利であるとしても、それは短期的なものにすぎない。1年で自由主義体制下の製薬企業が大量生産できる。

中進国は自分で購入して、貧しい国は日本を含む先進国が援助すればよい。ファイザーとモデルナの95%の有効率という、感染症学者にも思いもよらないほどの高い効果を持つメッセンジャーRNAワクチンを発明し大量供給できることこそ、短期的に旗色が悪くなることはあっても、長期的には(といってもせいぜい1年間の遅れに過ぎないのだが)、人々の自由な試みを賞讃する自由主義体制が勝利することの実例である。

原田 泰

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加