猛暑の甲子園、どう乗り切る? 普段の暮らしでも使える意外な策

猛暑の甲子園、どう乗り切る? 普段の暮らしでも使える意外な策

  • 毎日新聞
  • 更新日:2022/08/09
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アルプススタンドで掲げられた熱中症予防を訴えるボード=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2018年8月18日午前11時26分、諸隈美紗稀撮影

猛暑が続いている。6日には夏の風物詩である高校野球の甲子園大会が、3年ぶりに一般客を入れて開幕した。熱中症を防ぐため、観客や選手は大会をどう乗り切るのか。水分補給や日陰など涼しい場所での休息に加え、専門家に聞くと、普段の暮らしにも応用できる意外な対策が浮かんできた。

夏の甲子園で「2部制」など検討 熱中症対策

10万袋以上売り上げることもある名物

「かちわり、いかがですかー?」

夏の甲子園を観戦したことがある人は、スタンドで声を張る売り子の声を聞いたことがあるだろう。

かちわりとは甲子園名物の「かちわり氷」のこと。1袋に約400グラムの氷が入っており、250円(税込み)で販売されている。ストローが付いており、氷水を飲むことができる。多い年には大会期間中に10万袋以上売り上げることもある人気商品だ。

「かちわり氷」は顔や首に当てて、涼を取ることもできる。ただ、大会中に球児の熱中症対策などをサポートする理学療法士で組織する「アスリートケア」代表の小柳磨毅・大阪電気通信大教授は意外なアドバイスをくれた。「冷やすなら他の部位と合わせて、(氷が冷たすぎなければ)手のひらもやられた方がいい」

「手のひら冷却」は近年、スポーツ界で注目される暑熱対策の一つで、東京オリンピックでも実践された。では、なぜ「手のひら」なのか。

手のひらや足の裏には動脈と静脈を結ぶ「動静脈ふん合(AVA)」血管がある。AVA血管は体温が上昇して熱を体外に逃がす必要がある時に開き、毛細血管に比べて直径は約10倍、血液の流量は約1万倍もある。そのため、手のひらを冷やすことで大量の血液が冷えて体内に戻り、体温の上昇を抑制する効果があるという。

「手のひら冷却」は甲子園大会でも3年前から導入された。試合中の舞台裏ではこんな場面がある。グラウンド整備が行われる五回終了後のベンチ裏。先発投手が送風機の前で涼を取り、15度前後に冷やして配備された専用のペットボトルを両手のひらで転がして冷やす姿だ。冷たすぎると刺激を与えて血管が収縮する可能性があるため、15度前後がポイントという。

熱中症の発生は1回戦が多い傾向

小柳教授によると、甲子園のグラウンドでの熱中症の発生件数は例年、1回戦が多い傾向にある。2、3回戦と進むにつれて、発生件数が緩やかになっていく。球児の体が暑さに慣れるのが理由として考えられるが、発生のメカニズムは謎に包まれた部分も多い。

小柳教授は「体が順化するとはいえ、大会中の暑熱環境はほぼ変わらない。さらに、(各日の)第1~3試合で発生件数に大差はなく、沖縄の代表校からも発症する選手はいる」と指摘し、「単に暑さだけでなく、初戦の緊張など精神的な部分も原因かもしれない」と推測する。

夏の甲子園では、多くのさまざまな熱中症対策が行われる。毎日、約10人の理学療法士が球場に詰める。予防策として、理学療法士が試合前の選手にこれまでの発症歴や当日の体調などを確認する時間を設けている。「地方大会などで熱中症を経験した子は再び、発症する確率が高いというデータがある」(小柳教授)からだ。

試合中は出場選手が各イニング間に給水するが、理学療法士がベンチ裏に待機し、各選手の給水状況を確認する。ベンチ内には扇風機、裏には送風機、冷水につかれるアイスバスを完備する。今夏からはアイスベストも用意した。小柳教授は「最新の知見を踏まえながら、少しでも有効なものがないか、探しているのが実情です」と明かす。

日本高校野球連盟によると、新型コロナウイルスが感染拡大する前の19年大会は早朝から当日券を求めて1万人以上が並ぶ日があり、大会期間中に約400人が熱中症の手当てを受けた。熱中症防止や混雑緩和、感染症対策のため、今大会は入場券は原則、前売り・全席指定とし、400~1700円の値上げを4年ぶりに行った。

将来的には、気温が上昇する昼間を避けた朝と夕の「2部制」での開催などが検討されている。【長宗拓弥】

毎日新聞

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