東京農業大学学術情報課程教授/東京農業大学『「食と農」の博物館』・学芸員|木村李花子さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊

東京農業大学学術情報課程教授/東京農業大学『「食と農」の博物館』・学芸員|木村李花子さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊

  • sotokoto online
  • 更新日:2022/01/15

大学教授としての業務の傍ら、3000点以上の古農具をはじめ、貴重な古農具や史料を所蔵する東京農業大学『「食と農」の博物館』に学芸員としても勤務する木村さん。農具や家畜を利用した農法に造詣が深い木村さんに、日本人と農機具・農法の歴史がわかる5冊を選んでもらった。

東京農業大学学術情報課程教授/東京農業大学『「食と農」の博物館』・学芸員|木村李花子さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊

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(左上から時計回りに)1.『大絵馬ものがたり ❶稲作の四季』/2.『民具学の提唱』/3.『写真で綴る 昭和30年代農山村の暮らし ─高度成長以前の日本の原風景』/4.『馬耕教師の旅 ─「耕す」ことの近代』/5.『ものと人間の文化史 藁 Ⅰ・Ⅱ』

『大絵馬ものがたり』シリーズのこの巻は、四季折々の稲作の姿を絵馬から辿っていく内容です。絵馬に描かれているのは、祈りが込められた幸福で理想的な姿が多く、見ているだけでも楽しくなります。農法や農機具の使い方、それを扱う人々の環境などがわかる絵もあり、写真のない時代の史料としてもおもしろい。「馬耕教師絵馬」など、その時代の最先端だった農法や、それを受け入れて沸き立つ農村の絵から読み取れることも多いです。

「民具学」とは、それまで日常的にあるものとして見過ごされていた「民具」に焦点を当てた宮本常一による研究分野で、それをまとめたのが『民具学の提唱』です。技術、流通、信仰、環境、資源の利用方法などを道具を通して見ていこうとするもので、独特のおもしろさがあります。宮本が研究した時代の民具はひとつひとつ手づくりの、すべてが異なる一点物で、手足の延長のような感覚だったのだと思います。ですから、使った人の個性や癖が見て取れるのも興味深いところです。

『馬耕教師の旅』では、明治時代の最先端農業技術だった馬耕とその指導者である馬耕教師が、農村にどんな変化をもたらしたかをていねいに聞き取り、調査しています。この時代の馬は去勢されていないため気性が荒く、馬耕教師は馬に大人しく犁を引かせる「異能の人」として尊敬の対象になっていました。時代を経てその技術は、やがてメーカーの普及員が継承していくことになり……と農具と人との関係の変遷が浮かび上がります。

『【写真で綴る】 昭和30年代農山村の暮らし 高度成長以前の日本の原風景』は、つい数十年前まで本当にこんな風景が日本にあったのだという感慨を覚える本。昭和35年(1960年)の池田内閣による所得倍増計画を機に、農業の分野でも機械化が進み、わずかな期間で農村の風景も大きく変わりました。ですが、それ以前には確実にあった風景なのだと思うと、あまりにも速い近代化への人々の適応力にも驚かされます。

藁は日本人の生活とは切っても切り離せない素材です。それが農具をはじめ、どれほど豊かに使われてきたかを著したのが、『ものと人間の文化史 藁』です。万能な材料としてさまざまな農具のほか、祭礼用具にも使われる藁。農業の近代化は藁の文化を大きく変化させました。日本の原風景をつくっている、農業が置かれている位置や責任の大きさを感じる一冊です。

東京農業大学学術情報課程教授/東京農業大学『「食と農」の博物館』・学芸員|木村李花子さんの選書 1〜2東京農業大学学術情報課程教授/東京農業大学『「食と農」の博物館』・学芸員|木村李花子さんの選書 3〜5

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きむら・りかこ●東京農業大学教授。専門は動物行動学で、馬、ロバ、シマウマなどの研究を行う。神奈川県横浜市の『馬の博物館』に学芸員として勤務後、東京農業大学の『「食と農」の博物館』に所属。企画展の実施などにも携わっている。

photographs by Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa

記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

ソトコトオンライン編集部

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