
頻尿や尿漏れの心配があると、旅行や外出先はもちろんのこと、自宅にいても不自由で不快感が続きます。なかなか人に相談しにくい排尿トラブルについて、丁寧に解説していきましょう。第5回は、医療機関を受診するときに気をつけたいことについて。教えていただくのは、日本泌尿器学会専門医の髙山美郷さんです。
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頻尿や尿漏れなどの排尿トラブルで受診すると、一般的に次のような流れで診察や検査が行われます。受診時に気をつけてほしいのが、直前になるべく排尿を控えること。尿検査は必須ですし、超音波検査も尿がたまった状態で行わないと膀胱の中がよく見えないからです。
下記に挙げた検査も大切ですが、医師が診察で知りたいのは、どんなときに尿意を感じて、どんなことで困っているかです。そのため検査の一環として排尿の記録をつけてもらうこともあります。排尿記録は治療方法の選択や効果を見るために、とても重要です。
できれば受診前に、1日に何回、何時ごろトイレに行ったか、何時ごろどんな水分をどれぐらい摂ったか、食事の内容など、簡単なメモを持っていくと問診もスムーズでしょう。
一般的な診察の流れ
病状や性別・年齢によって検査内容は変わります。
問診
既往症の有無、いつから、どんなときに、どんな症状で困っているのかを細かく聞き取ります。
触診・打診
下腹部を触ったり押したり、腰背部を叩いたりして、膀胱・腎の状態をチェックします。
男性の場合は前立腺や精巣の状態、直腸診などで病気の有無をチェック。
女性泌尿器科を受診した場合は、外陰部の診察と内診で骨盤底筋の状態も確認します(一般の泌尿器科では外陰部の診察と内診は行わないことがほとんどです)。
尿検査
採尿して、炎症や血尿の有無などを調べます。

血液検査
血算、血糖、コレステロール、中性脂肪、肝機能、腎機能など一般的な項目の他、ホルモン値や腫瘍マーカーなども調べることがあります。
超音波検査
膀胱や前立腺、腎臓の状態を診ます。膀胱は尿がたまるとふくらみ、排尿すると縮みます。尿がたまってある程度ふくらんでいたほうが膀胱内は見えやすいので、受診直前の排尿は控えることが望ましいです。
残尿の検査
排尿後、膀胱にどれぐらいの尿が残っているかを調べる検査です。残尿が多いと常に膀胱に尿がたまっていることになるので、ちょっと尿が増えただけで尿意を感じやすくなります。
その他、場合によっては尿の出方の勢いを診る検査、膀胱内の圧を測る検査が行われることもあります。血尿がある場合は、膀胱がんのチェックのための膀胱鏡による検査を行います。
男女ともにまずは内服薬で治療。重症の場合は手術も選択肢

これらの検査で頻尿や尿漏れの原因になる病気が見つかったら、その治療を行います。
男性の場合、前立腺肥大症が大きな原因をしめています。そのため尿道が前立腺でしめられているのをやわらげる薬などを処方します。また過活動膀胱の症状も伴っているようであれば、それに対する内服薬も併せて処方します。
内服薬でよくならない場合、尿道からカメラを入れて前立腺を削ったり、くりぬいたりする手術(一般的には要入院)や、尿道を広げる手術を行います。
女性の場合、基本的に内服薬と骨盤底筋の運動で対処します。それでもよくならない重症の腹圧性尿失禁では尿道を支えるようなテープやメッシュを入れる手術を行います。髙山先生の女性医療クリニックLUNA 泌尿器科外来では、腟を引き締めるレーザーを照射し、尿失禁を改善させる治療(自費診療)も行っています。
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監修者
日本泌尿器科学会認定専門医 髙山美郷
日本泌尿器科学会認定専門医・医学博士・Certificate of da Vinci® as a console surgen
厚生労働省指定 オンライン診療研修修了 医師緩和ケア研修修了
2014年岩手医科大学卒業。亀田総合病院、盛岡赤十字病院、倉敷成人病センタ-、大手美容クリニックなどを経て、2023年5月、女性医療クリニックLUNAで泌尿器科外来を開始。女性泌尿器科・腟医療・美容、トータルで女性をサポートしている。
植田晴美