男性多い建設業でどうやって「女性活躍」進めたか? ヒントは社内外みんなの声/熊谷組の黒嶋敦子さんに聞く

男性多い建設業でどうやって「女性活躍」進めたか? ヒントは社内外みんなの声/熊谷組の黒嶋敦子さんに聞く

  • J-CASTニュース
  • 更新日:2022/06/23

なでしこ銘柄、PRIDE指標(※)のシルバー、えるぼしの3つ星、ダイバーシティ100選など、ダイバーシティ分野での評価が目覚ましい、建設会社の株式会社熊谷組。

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2016年にダイバーシティ推進室が設立されたが、それより前のプロジェクト段階から、ダイバーシティ推進の推進役を担ってきた同管理本部 ダイバーシティ推進部長 黒嶋敦子(くろしま・あつこ)さんに、同社の取り組みについて話を聞いた。

(※)セクシュアル・マイノリティ(以下、LGBTQ+)への取組みの評価指標

独自の「現場環境整備チェックリスト」を活用!

――さまざまなダイバーシティや女性活躍を推進してきたとのことですが、熊谷組独自の取り組みなどがあったらお聞かせください。

黒嶋敦子さん「熊谷組では、2016年にダイバーシティ推進室を新設し、女性活躍を推進してきました。主に「意識改革」「人事制度改革」「現場の環境整備」の3つを柱として取り組んできました。なかでも、弊社独自の取り組みといえるのが「現場の環境整備」です。具体的に力を入れてきたのが、建設現場の女性用トイレの設置です。背景には、2016年当時、日本建設業連合会が会員企業向けにアンケート調査を行ったところ、女性が建設業界で働けない理由として「女性用トイレなどの設備がない」という理由が最も多く上がっていたことがあります」

――そういった状況があったのですね。

黒嶋さん「当時、女性が現場作業所で共に働くという意識は、ほとんどない状況でした。実際に、私が10年以上前、建設現場で働いていた頃も女性用トイレはほとんどなく、水を飲まないで我慢することもありました。その経験から6年前にダイバーシティ推進室を設置するとすぐ、熊谷組独自の「現場環境整備チェックリスト」を策定し、現場の環境整備に取り組みました。そして、各支店で選任したダイバーシティ推進担当者がダイバーシティパトロールという名のもとに、男女ともに働きやすい環境であるかという視点で、現場を点検する仕組みをつくりました。これによって、徐々に現場環境は改善され、現在、弊社の現場作業所の83%に快適な女性用トイレが設置され、男女とも快適トイレを全社員が推進しています」

――「意識改革」や「人事制度改革」の面ではどんな取り組みをしてきたのでしょうか。

黒嶋さん「「意識改革」の面でいえば、さまざまなダイバーシティ研修を実施してきました。意識改革の段階に応じた取り組みを行っており、初期の2016年~17年には全社の女性社員の交流会を2度開催し、中期の施策として、女性社員にキャリアデザインセミナー、その上司にはダイバーシティセミナーを開催し相互理解を深めました。最近では全グループ社員にアンコンシャスバイアスのeラーニング研修を受けてもらい、無意識の偏見について理解を深めてもらいました。「人事制度」としては、育休制度の充実を図っているほか、今年から新たに、妊活や不妊治療をサポートする制度を設けました。妊活支援休暇制度は5日間の特別有給休暇を30分単位で取得できる制度で、男女ともに対象です。不妊治療休業制度は、女性が対象で、通算365日を上限として、3回に分けて取得できるというもの。取得しにくいと思われるかもしれませんが、以前からある介護休業制度と同じ内容ですから、社員に違和感なく取得してもらえると考えています」

――ダイバーシティを進めるにあたって、業界の内外で、積極的にヒアリングしたそうですね。

黒嶋さん「2016年にダイバーシティ推進室を立ち上げるまで、全くダイバーシティに関わったことがなかったので、先進的な取り組みをしている会社を訪ねて、都度教えていただきました。ちょうど日本建設業連合会(※)でも、女性活躍推進のために『けんせつ小町委員会』を設置し、その専門部会に参加していたため、担当者間での交流もあり、情報共有できる場を持つことができました。弊社で導入している取り組みには、業界内外の優れた施策を参考にさせてもらったものも多くあります。ただ、どんなにすばらしい取り組みでも、弊社の現状にあっていなければ、逆効果になりますので、導入の際は、会社の現状にあっているかという点には気を配りました」

(※)建設業界の連合組織、正会員と特別会員で構成されている。正会員数141社5団体

男性の育休取得への意識改革も進む...上司の理解や後押し大切

――現在の女性活躍推進の進捗状況はいかがでしょうか。

黒嶋さん「現在の女性活躍推進の目標として、新卒採用に占める女性の割合を25%以上、女性管理職数を2020年4月から10%増とする、子の出生に伴う男性の育休取得率を70%以上とすることを目標に掲げています。2021年4月時点では、新卒における女性の割合は30%で、女性管理職数は目標人数とする60人に対し66人となり、大幅に10%増の目標を達成できています。子の出生に伴う男性の育休取得率は2021年4月時点で50.9%と昨年より減少傾向にありますが、これには、対象の社員となる母数が増えていることと、コロナの影響で病院にお見舞いに行くことができないなどの特殊な要因も含まれています。男性の育休取得には、上司の理解や後押しが大切だという声があり、社長からのメッセージ発信や、上司への意識づけも行っており、こうした意識改革によって、今後、達成に近づくものと思っています」

――こうした一連の取り組みの効果や、社内や社外で感じた変化はありますか。

黒嶋さん「新しいことに挑んでいける人財が育成されつつあると感じています。たとえば、熊谷組では、国際社会貢献としてミャンマーで小中学校の校舎を建設するSTAR PROJECTを2015年から進めてきました。このプロジェクトを一貫してリードしてきたのはひとりの女性社員ですが、そこからまた新たな国際貢献の流れが起き、他の社員にも波及しています。また、弊社は、技術に興味のある人ならだれでも参加できる技術本部主催のR&Dミーティングを催していますが、これを通じて、2021年の福井の本店の建て替えプロジェクトに、多くの若手社員や女性社員が関わりました。本店の建て替えは、ビルの省エネの取り組みであるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)と耐火木材の技術を駆使したモデルケースとなり、イノベーションの好事例になったと思います」

――今後の課題と考えていることはありますか。

黒嶋さん「長時間勤務については、近年の取り組みによって、この5年間で社員の平均残業時間は月平均で20.5時間減少しました。しかし、外勤の土木建築、いわゆる建設現場の社員については、まだまだ長時間勤務者が多く、これらの改善に今後は取り組む必要があると考えています。そのためには、さらなる業務の効率化や意識改革が必要です。具体的には、経費精算の簡素化等を考えています。また、女性が出産して、現場で働き続けることができるように、4月に導入した現場社員のフレックス制度等の柔軟な働き方を浸透させ、長時間労働を改善したいと考えています」

――最後になりますが、働くママとしての黒嶋さんのワークライフバランスの取り組みやプライベートで楽しんでいることはありますか。

黒嶋さん「息子が、サッカー観戦が好きなので、Jリーグなどの試合を一緒に観戦しにいくことがあります。ちなみに今日の夜にサッカー日本代表の試合があるので、定時で退社して一緒にテレビで試合を見る予定です」

――ありがとうございました。

(聞き手:戸川明美)

【プロフィール】
黒嶋敦子(くろしま・あつこ)
株式会社熊谷組管理本部 ダイバーシティ推進部長

大学の建築学科卒業後、設計部に入社。その後施工管理業務等を12年経験し、現場代理人を務める。2度の育児休業を経て、購買業務を担当。
業務の傍ら、2015年より女性活躍推進プロジェクトにおけるプロジェクトリーダーとして女性が活躍できる環境整備・風土改革に携わる。
2022年より管理本部ダイバーシティ推進部長として、女性活躍にとどまらず多様な人財の活躍を後押ししている。
ほかに、一般社団法人日本建設業連合会けんせつ小町委員会 けんせつ小町部会委員も務める。

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