「住生活領域のZOZOになる」:ルームクリップ 高重正彦氏 × bydesign 石川森生氏

「住生活領域のZOZOになる」:ルームクリップ 高重正彦氏 × bydesign 石川森生氏

  • DIGIDAY
  • 更新日:2021/10/16
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この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。

スタートアップから大手レガシーまでが参入し賑わいを見せるD2C市場。しかし、ニッチな需要に目を向けた課題解決型のビジネスモデルであるD2Cは、熱狂的ファンを生み出す可能性を秘めている反面、規模を拡大しづらい面も持つ。投資や支援を求めるブランドも見られるが、撤退を決めたブランドも少なくない。

顧客との強い繋がりを作りつつスケールするには? 多くのD2Cがこの課題を抱えるなか、家具D2CのKanademono(カナデモノ)などを運営するbydesign(バイデザイン)が8月下旬、家具・インテリア領域に特化した国内最大級のソーシャルプラットフォーム、RoomClip(ルームクリップ)を運営するルームクリップ株式会社の傘下に入ること(完全子会社化)を発表した

bydesignは2016年に創業。数々の大手通販サイト企業でマーケティング責任者や代表取締役などを歴任し、ダイレクトマーケティング領域で手腕を振るってきた石川森生氏が社長を務める。カテゴリーやテイストを絞り込んだ編集で、Kanademonoなどを成長させてきたが、石川氏が感じていたのは、「D2Cという枠組みのなかでブランドを続けていると、トップラインの上限がある」ということ。「売上規模数十億円がD2Cの限界かなと思いはじめていた」。

一方、RoomClipは今年3月、プラットフォームに投稿されたアイテムをそのまま買えるソーシャルプラットフォーム、RoomClipショッピングをリリースした。月間ユーザー600万人超、投稿写真500万点を抱える巨大プラットフォームをさらに拡張させるが、同社の代表取締役兼代表執行役員CEOを務める髙重正彦氏が求めているのは、「出店者がユーザーと直接コミュニケーションを取りながらブランドを作るというプロセスを、トータルで支援していくこと」だという。「bydesignと組めば、彼らの持つノウハウをほかのブランドに展開できる」。

成長中のD2Cブランドが巨大プラットフォーマーとタッグを組むことで、どのようなシナジーを生み出すのか。bydesignの保有するD2Cブランドは今後、どうスケールしていくのか。髙重氏と石川氏の両氏に話を聞いた。

◆ ◆ ◆

ーー既存メーカー企業によるD2Cブランドの買収はよくある事例だが、プラットフォーマーによる買収は訊いたことがない。今回の子会社化の経緯は?

石川森生氏(以下、石川):D2Cという枠組みのなかでブランドを続けているとトップラインの上限が見えてくるというか、売上規模数十億円がD2Cの限界かなと思いはじめていた。D2Cはニッチな世界観に対して、共感してくれるお客様がいる。それをマス化するにはいかに効率よく集客するかが求められるが、商材がニッチなだけに集客のコスト効率が合わなくなってくる。また、特に我々のような家具ブランドは、何度も繰り返し購入してもらうことが難しい。広告をどんどん回して新規の獲得数を狙うようなビジネスになりかねない。

さらにスケールするには、恐らく組織や事業ドメインも広げなければならないだろう。だがそれは、もはやD2Cではない。D2Cとして何をどこまでやるのが正解なのか、判断がつきかねていた。そこで考えたのが、SNS要素を持ったコミュニティと組むことだった。家具やインテリアに特化したコミュニティと組めば、新規のトランザクションが見込めるし、我々の商材と顧客とのタッチポイントが生まれ、関係を築くための接点を維持できると考えた。

RoomClipは、インテリアの領域では唯一無二の存在だ。投稿される写真のデータや月間のトランザクション、来訪するユーザーの質量を見ても、RoomClipのような存在は、国内はおろか、世界を見渡しても多くない。コミュニティとしての本質的な機能を持っていると感じた。だから、複数の企業にお声がけするのではなく、最初から髙重さんだけに話をさせてもらった。

ーーbydesign側から持ちかけられた買収ということだが、RoomClip側の思惑は?

髙重正彦氏(以下、髙重):ちょうど2020年の秋頃の話だった。RoomClipもちょうど2021年にマーケットプレイスをはじめるところで、お互いのタイミングが重なった。我々の成長戦略と、bydesignの課題を組み合わせれば、両者がハッピーになれるという話になった。

旧来の流通や商品供給の形態のままでは、多様化するユーザーのライフスタイルにマッチする住生活を提供するのは難しいと感じていた。ユーザーが、自分の好みやユースケースに合うものに出会えず、「自分の住生活を思い通りにできない」という課題もあった。RoomClipはそれに対し、共感できたり手本になるようなユーザーを取り上げ、それを見たほかのユーザーが自分の住生活のイメージを描いたり、実際に住生活を変えようとする機会を提供してきた。

そして昨年、RoomClipショッピングをやることを決断した。ユーザーがRoomClip上でほしいものを見つけた場合に直接購入できたり、出店者が自分たちの商品を求めているユーザーに対し、直接アプローチできるようにしたかったからだ。

ただし、我々がマーケットプレイスをやるからには、既存の商品とユーザーを単にマッチングさせるのではなく、出店者がユーザーと直接コミュニケーションを取りながらブランドを作るというプロセスを、トータルで支援していきたいと考えた。プラットフォームのなかで、さまざまな出店者がさまざまな商品を作る流れが起きないと、ユーザーの多様な価値観に応えられない。参加企業向けのクラウドサービスであるRoomClipビジネスを2020年にスタートし、ユーザーの行動データや属性データを共有するなど参加企業への支援はしてきたが、我々が次にやりたいのが、RoomClipビジネスをさらに強化し、D2Cを支援することだ。D2Cが積極的にユーザーとつながり、商品を販売するまでの一連のサイクルをサポートする。

インテリアファッションの領域で、ゼロからものを作っているデジタルネイティブなD2Cブランドは、Kanademono以外ほとんどない。ユーザーからニーズや課題を吸い上げながら商品を作り、世界観を磨き込むことで支持されている。bydesignと組めば、彼らの持つノウハウをほかのブランドに展開できると考えた。

ーーなるほど。つまり、RoomClipが描く事業展開に対し、bydesignも同じ方向を見ていた

石川:ひとつのブランドを100億〜200億円規模にするより、20億〜30億円規模のブランドを10個作る方が、実現性が高い。それにECの運営は、サプライチェーンやカスタマーサポートなどオペレーションひとつとってもタスクが多い。それをすべて自分たちでやるのではなく、それぞれ強みを持ったプレイヤーたちがアセットを組み合わせ、足りないところを供給し合う方が成功の確度が高い。その点で高重さんと合意形成ができたことが、今回のグループ化に繋がった。

私たちが目指すのは、「住生活領域のZOZO」だ。ホームファッションというカテゴリーに特化したECプラットフォームは存在しておらず、まさに今そのポジションが空いている。RoomClipショッピングの規模であれば、家具領域におけるZOZO的ポジションを狙えると思う。

さらに、ユーザーの求めているものをD2C的アプローチで作ることを支援するプラットフォームは、世界的に見ても少ない。つまり我々は、「住生活領域のZOZO」にとどまらず、「ZOZO+α(プラスアルファ)」というポジションを狙っている。

ーー具体的にどう支援するのか?

髙重:Kanademonoのように、サイズオーダーを受け付け、ユーザーの要望に合うものを作る試みもある。また、流通や商品の見せ方などをデジタル化するだけでも訴求を高められることがあるだろう。それをできるだけプラットフォーム上で実現できる流れを作りたい。

ひとつの商品に対して、1Kに住むひとり暮らしの男性が使う場合もあれば、4LDKの4人家族が使う場合もある。だが、個々の使用シーンを想定して何パターンもコーディネートを組んだり撮影するのは、膨大なコストがかかる。一方、RoomClipでは、さまざまなユーザーがそれぞれの使用シーンを自ら投稿してくれる。たとえば「猫がいる暮らし」というテーマで、ユーザーからの投稿を取り上げた場合、猫に関連する商品でなくても、「この商品は、実は猫好きのあいだで人気がある」といったニッチなニーズも顕在化しやすい。

石川:ブランドにとっては、既存の売り方とはまったく違うベクトルで、ユーザーの多様なニーズに応えられるということだ。それこそがコミュニティから生まれたECの強みだ。我々は、「そもそも何が合うのかわからない」「アイデアがほしい」といった、商品を決める前のニーズに対してサービスが提供できる。既存のプラットフォームやプレイヤーと圧倒的に差別化できる点でもある。

ーー直近で目指す目標は?

髙重:マーケットプレイスに関してはまず、ホームファッション領域で一定のポジションを取りたい。年間のGMV(商品取扱高)100億円がマイルストーンになる。新しいブランドや商品を立ち上げる企画もあり、すでに何社かと話を進めている。

日本の住環境で思い通りのインテリアを実現するのは、非常にハードルが高い。だが、全国にこれだけ多くのメーカーがいるのだから、テクノロジーを組み合わせれば実現できると思っている。また、RoomClipに投稿してくれるユーザーがいるということは、思い通りの住空間を実践している人もいるということ。そのユーザーたちが住空間を作り上げる際の思いや試行錯誤を我々がきちんと届けることができれば、ほかのユーザーもそれを実践できるようになる。成功体験を積み上げることで、日本でも住生活を楽しむ文化を作れるはずだ。少し先の話になるが、その「文化を作る」ことが、RoomClipの大きなゴールでもある。

石川:我々はすでにその文化が生まれつつあると思っている。RoomClipにはDIYで作ったプロダクトを投稿する人が多い。ユーザーがDIYをしている領域はつまり、空白になっている領域でもある。その領域にあるプロダクトをきちんと作れば、RoomClipが提供してきたDIY文化に対し、プラスアルファのソリューションを提供することができると考える。

Written by 戸田美子

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