【ベテラン記者コラム(155)】大相撲の荒磯親方が出身地に創設する「荒磯部屋」に、NFLの古豪をみる

【ベテラン記者コラム(155)】大相撲の荒磯親方が出身地に創設する「荒磯部屋」に、NFLの古豪をみる

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  • 更新日:2021/06/10
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荒磯親方

大相撲の元横綱稀勢の里の荒磯親方(34)=が部屋付きの田子ノ浦部屋から独立し、8月1日付で「荒磯部屋」を創設することがこのほど、決まった。新たな部屋は来年8月完成予定で、茨城・牛久市出身の同親方にとって、隣接する同・阿見町に新築。最寄り駅のJR常磐線「ひたち野うしく駅」から徒歩で約10分、年3度の本場所が開催される東京・墨田区の両国国技館までの所要時間は1時間30分ほどかかる。

序二段以下の力士4人と行司1人が転属。完成までは同・つくば市の筑波大の施設が仮の稽古場となる。7月で35歳となる青年親方がいよいよ「師匠」となり、弟子を育成する手腕が試される。東京都内にこだわらず、広い敷地を求めた荒磯親方には、他の部屋には見当たらない複数の土俵を設ける斬新な計画もあり「環境を重視し、いろいろ挑戦ができると思った。故郷の茨城県へ恩返しをしたいという気持ちもある」と説明する。

遠隔地の相撲部屋は協会業務をこなす自身や、早朝から国技館内の相撲教習所で授業を受ける新弟子にも負担がかかる。だが、3月には早大大学院スポーツ科学研究科の修士課程1年制を修了。「新しい相撲部屋経営の在り方」をテーマとした修士論文が最優秀論文として表彰された荒磯親方は「大学院で新たな視野が広がった」。新部屋の敷地内や最寄り駅の広場などで他競技と連携したイベントを開く構想もある。

全国の地方公共団体はいま、特色ある地域の活性化に積極的に取り組んでいる。東京都のベッドタウン化した近郊都市は街の顔を喪失してしまったからだ。現役時代は真っ向勝負の取り口で高い人気を誇り、平成29年初場所後には、19年ぶりに誕生した国内出身横綱として大きな注目を集めた「稀勢の里ブランド」には魅力がある。

街おこしと連動するような〝第3セクター〟の雰囲気を根付かせ、「町・市民」による後援者を増やして組織へと発展させ、その規模を波紋のように「県民」へと広げていってほしい。

荒磯親方はNFL(米プロフットボール)に詳しい。米ウィスコンシン州グリーンベイを本拠地とする「パッカーズ」は、米国内に本拠を置くプロスポーツチームのなかで唯一、一般市民がチームの株式を100%保有する。人口は10万人余りに過ぎず、北米4大プロスポーツのチームの本拠地では最も規模が小さい地域だ。株式の配当金はなく、シーズンチケットの優遇もない。売買は禁止。家族間の贈与だけが例外として認められ、全米プロチームで唯一、毎年の収支も公開している。

リーグ創成期から存在する古豪、パ軍ファンの代名詞は「献身」。新たな部屋が愛され、守られる存在になることを願ってやまない。(奥村展也)

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