「大手勤務で年収1,000万の人と結婚したかったけれど...」丸の内OL26歳に起きた、ある変化

「大手勤務で年収1,000万の人と結婚したかったけれど...」丸の内OL26歳に起きた、ある変化

  • 東京カレンダー
  • 更新日:2021/04/14

住んでいる街によって、人生は変わり、また人も変わる。

2020年、東京の街は大きく変貌した。

店は閉まり、代わりにフードデリバリーの自転車を頻繁に見かけるようになった。また時差通勤やテレワークが導入され、ラッシュ時の人は減った。

では、東京に住む女の人生は、どう変わったのだろうか? エリア別に、その実態に迫る。

今回は新宿区四谷在住、千代田区丸の内勤務の茉莉花(26)の話。

▶前回:すっぴんマスクで買い物に行ったら、まさかの鉢合わせ。商社マンの元彼の隣にいた女は…

No image

人が作った幸せの理想像に囚われていた丸の内OL・茉莉花(26)

9:20。

JR東京駅から丸の内方面へ、皆と一斉に横断歩道を渡っていく。

「うぅ…足が、痛い…」

オフィスのあるビルまで歩く途中で、かかとの痛みにくじけそうになる。以前は当たり前のように履けていた6cmヒールのパンプス。家を出て電車に乗ったわずか30分の間で、すでに足が痛い。

「以前は9cmでも平気だったのになぁ。でも我慢、ガマン」

リモートワークが主流になり、すっかり忘れかけている。一昨年まで当たり前のように送っていた、華やかな、丸の内OLの生活を。

ヒールを履いて歩くのも窮屈になってしまったし、洋服を買っても着る機会がないので買い物もしていない。リモートワークが続き、出社の機会もなく、出会いも減った。

「おはようございまぁす」

久々のオフィスワークに、心が躍る。以前はマイデスクにポストイットやお気に入りのカラフルなペン類を揃えていたけれど、今はフリーデスク制だ。

強制出社ではないため、オフィスにいる人もまばら(年上のおじさまたちだけ、妙に出社率が高い)。

9:30。仕事が始まった。

消えゆく丸の内プライド…リモートワークで変わる街並み

— 涼真:今日、何時頃来るの?

12:00。

昼休みにお弁当箱を広げながら携帯を見ると、涼真からLINEが入っていた。

涼真は同じく丸の内勤務。大手不動産関連会社に勤める、3歳年上でイケメンの彼氏だ。

出会いはまさかの新丸ビルでのナンパだったけれど、かれこれもう2年も続いている。

「そろそろ、外にもご飯を食べに行きたいなぁ」

ここ1年、デートはほぼ涼真の家だ。

乃木坂にある彼の家のほうが、私の四谷にある家より広いので、居心地はいい。でも行くと必ず私が食事を作り、掃除なども全部私がしていることに、最近少し不満があった。

「茉莉花みたいな女の子が、理想だったんだよね」

彼はそう言ってくれていたし、最初は嬉しかった。半同棲のような気分だったし、結婚をちゃんと考えてくれているのだと思っていたから。

ただ最近、2年経っても結婚に対して何もアクションを起こさない彼の態度に苛立つ自分もいる。

「やばい。昼休みが終わっちゃう」

No image

1時間のランチタイムはあっという間だ。コーヒーを買うために、慌てて丸の内仲通りに面するカフェに走った。

「な〜んだかなぁ。ヤル気が出ないなぁ」

今の会社に就職が決まった時、心から嬉しかった。新卒から今まで、丸の内で働いていることが私のプライドでもあった(ただのOLじゃなくて、#丸の内OL ということが)。

アフターファイブは充実していたし、彼氏ができる前は、金曜に同期たちと出会いの宝庫であるこの界隈で飲むのは最高の時間だった。

でもこの1年半の間に、街は変わった。

激混みだったカフェが、並べばすぐにコーヒーが買えるようになったのは嬉しい。でも私はスーツをびしっと着こなした男性や、上品で綺麗な女性たちで彩られていた丸の内が好きだったのに、最近そんな人たちはめっきり減ってしまったのだ。

その代わり、綺麗なママたちがテラス席でランチをしている姿をよく見かけるようになった。そんな裕福そうな主婦たちの姿を見ると、いつか私もあちら側に…と心が躍りつつも、本当に結婚できるのか不安にもなる。

「あぁ、ツマラナイ!早く結婚したい!」

そう、空に向かって叫んでいた。

17:30。大手町駅から千代田線に乗る。ピンヒールを履いてきた自分を恨みながら乃木坂駅で降りて買い物を済まし、彼の部屋の扉を開けた。

「今日の晩御飯、なに?」

リモートワークを終え、ゲームをしていた涼真は一瞬振り返っただけで、すぐにテレビ画面に視線を戻してしまった。

一昨日掃除をして出て行ったはずなのに、彼の部屋はすでにもう散らかっている。

「あのさ…」

言いたいことは、山ほどある。でも私たちは婚約をしているわけでもない。結婚をしているわけでもない。

だから喧嘩をしたら別れを言い渡されそうで、怖くて何も言えない。

そんな私の心の声が漏れていたのだろうか。急に涼真がゲームの手を止め、振り向いた。

「あ、そういえば、来週は俺出社するから、帰りに外でご飯でも食べる?久しぶりに丸の内で」
「う、うん!! 久しぶりのデートだ!嬉しい!!」

以前は仕事帰りに落ち合って、丸の内デートをしていた。でもお互いリモートワークになって、その機会がなくなってしまっていた。

今年の6月で、私は27歳になる。結婚するなら、彼のようなイケメンで身長が高くて、大手企業勤め(年収1,000万レベル)の人がいい。

彼は結婚相手として最高だし、どうしても離したくない。そう思い、しがみついていた。

女が愕然とした、男が丸の内OLに求めていたこととは!?

「涼真♡」

翌週。待ち合わせの新丸ビルの近くに佇む姿を見て、思わず笑みがこぼれる。久しぶりに外で見たが、相変わらずカッコいい。

だが、涼真は私を見るなり眉をひそめた。

「今日、なんか雰囲気違わない?前はもっと綺麗めな感じじゃなかった?」
「え?」

実は足が痛くなるので、今日はピンヒールではなく、 チャンキーヒールのパンプスにしたのだ。

「今日はちょっと、カジュアルな気分で…」
「え〜…。会社の人に会うかもしれないのに。一緒に出かける時くらい、ちゃんとしてよ。誰に見られているかもわかんないんだからさ」

— え??

急に不機嫌になる涼真。どうしていいのかわからず、私はひたすら謝る。

「ご、ごめん…」

そんな私たちの前方から、男女二人組が歩いてきた。でもその女性の姿を見て、絶句してしまった。

淡い色を基調としたコンサバな服装に、ゆるふわ巻きの髪型。かつての私と全く同じような、まるでコピーのような女性だったのだ。それを見て、私のなかで何かが弾けた。

No image

「あのさ、涼真。私の何が好きなの?私と結婚する気は、あるの?」
「何だよ突然。こんなところで大声出すなよ…誰かに見られたらどうすんだよ。恥ずかしいな」

以前だったら人の目が気になって、街中でこんなことは言えなかった。でも今の私には、そんなことはどうでもいい。

「なにそれ。みんな結婚していくのに、どうして私たちだけ…」

ここまで言いかけたて、はたと気がついた。

— みんな?みんなって、誰のこと?

「おまえ結婚したいなんて言わなかったじゃん?何を今さら…」

ハッキリしない彼の態度を見て、私は悟ってしまった。涼真からすると、私はかなり都合の良い彼女だったのではないだろうか。

連れて歩くには合格レベルで、掃除も料理も文句を言わずにやってくれ、結婚しろなどと迫ってもこない。

「私である必要ってなに?ただ身近にいた、都合のいい女?」
「はぁ?茉莉花だって、俺と結婚できればラッキーくらいに思っていただろ?俺が違う会社に勤めていて、年収が低かったら好きになっていた?」
「そ、それは…」

人のことを言えない。肩書きや見栄えばかり気にしていた。とにかく結婚というゴールまで駒を進めて、ただ安心したかっただけだ。

結婚したいがために、ワガママも言わず、彼の顔色ばかり伺っていた。

足が痛くなっても我慢して、見栄えのためにピンヒールで頑張って歩いていた。

それが丸の内OLのプライドであり、素敵な男性と結婚するのが正解だと思っていたから。

でも、もうそんな考えは古い。丸の内は大好きだけれど、アイデンティティーは今そこにはない。

どこにいても、どこに勤めていても、私は私。代わりはいない。

自分を大切にしない限り、そこに幸せはない。誰かに同調ばかりしていても、その先に未来はないと、ようやく気がついた。

「涼真…。正直、私もあなたのことを肩書きで見ていたかもしれない。でも好きだから、一緒にいるんだよ」

たしかに、外見ばかり気にしていた。でも根底には、ちゃんと好きだという気持ちもある。

「もしこの先結婚を考えられるならば一緒にいたいけれど、私との結婚を考えられないなら、この場でハッキリと言ってほしい」

初めて誰かに、ここまでの本音をさらけ出した。今まで言いたいことを我慢して、人の顔色を伺ってばかりだった。でも今、自分の気持ちを言わないと一生後悔する気がしたのだ。

人の目を気にするのではなく、自分の幸せをちゃんと考えよう。

丸の内の街だって、変わり始めている。私だって、今こそ変わる時だ。

でも心臓は、バクバクしていた。このまま振られたら結構キツい。

ただ…目の前の涼真の反応は、違っていた。

「ごめん。何を言っても怒らない茉莉花に、正直甘えていたと思う。それに、茉莉花も茉莉花で、何を考えているのかよくわかんないところがあったから…。でも今ハッキリ言われて、気がついたよ。ごめんな。ちゃんと将来のこと、真面目に考えるから」

「そうだったの…?ごめん、私も今後は、言いたいことがあったらちゃんと言う。ちゃんと伝えるようにするね」

― あれ?ちゃんと話し合えば、私たち、向き合えるじゃない。

誰かの判断に委ねているだけの人生は、もう終わりにしよう。自分の人生の舵は、自分で切るべきだから…。

東京駅のライトアップが、今日は一段と綺麗に見えた。

▶前回:すっぴんマスクで買い物に行ったら、まさかの鉢合わせ。商社マンの元彼の隣にいた女は…

▶NEXT:4月16日 金曜更新予定
神聖化した代々木上原女子

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加