Kroi、2マンツアー『Dig the Deep』ライブハウス包んだ熱を帯びたグルーヴ マハラージャン、在日ファンク迎えた東京2公演

Kroi、2マンツアー『Dig the Deep』ライブハウス包んだ熱を帯びたグルーヴ マハラージャン、在日ファンク迎えた東京2公演

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  • 更新日:2022/01/15
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Kroi(写真=Momo Angela)

どんぐりず、韻シスト、CHAI、ニガミ17才、マハラージャン、在日ファンクーーこの2マンツアー『Kroi Live Tour 2021-2022 “Dig the Deep”』のラインナップが発表された時、全部見たいと率直に思った。というのも、どのバンドも1バンド1シーンのような“属せなさ”が共通しており、同時にアーティストのKroiに対する認知の高さも察することができたからだ。今回、セミファイナルとファイナルの東京2公演を見て、その予感は確信に変わった。さらに“高度な音楽性を持ちつつ、どこまでも自由で掴みきれないキャラが結集したバンド”なだけではない野望すら見えたのだ。

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初日、マハラージャンは初々しさと老獪さが並列したようなパーソナリティが立っていた。マハラージャンはDaft PunkとJamiroquaiが音楽的なベースであり、Kroiは千葉大樹(Key)加入前の4人が初めて一緒に入ったスタジオで合わせたのがその2組の曲。まるで従兄弟のようではないか。16ビートの軽快なカッティングギターの上手さに驚きつつ、元サラリーマンならではの、本音と建前が交錯する歌詞世界はライブでもキャッチーで、Kroiのファンの心も掻っ攫おうとかなり真っ向勝負のステージングが爽快。「いいことがしたい」や「セーラ☆ムン太郎」など、おなじみのナンバーでフロアを踊らせつつ、新曲「先に言って欲しかった」はファンクやディスコソウル以外のルーツであるR&Rリバイバル感のあるハードチューン。この新曲がなかなかのカオスを呈し、アーティストとしての狂気を垣間見た気分だ。

Kroiは高度なパス回しがデフォルトのプレミアリーグみたいなチームだと常々感じるのだが、冒頭に「pith」というじわじわ血を沸かせていくミディアムチューンを配し、内田怜央(Vo/Gt)のワイルドなボーカルで締める。続いて「Balmy Life」に突入。内田のラップはさらに切れ味がよく、千葉のトーキング・モジュレーターを使ったコーラスも洗練の極み。マハラージャンをサポートした辣腕・皆川真人(Key)もKroiの千葉もシンセサウンドのユニークさで共通する部分が多く、マニアックなフレージングも踊りながらいつのまにか楽しんでいた、そんなオーディエンスも多かったのではないだろうか。

EP『nerd』のツアーでもあり、同作から「blueberry」以外は全て披露したが、すでにライブアレンジに進化した「Rafflesia」はサイケデリックなシンセや内田のボーカルが不思議な浮遊感すら生み出す。『nerd』からの楽曲が増えたことで、よりサイケ&フュージョン、SF的なファンク色が増幅した印象だ。ライブではお馴染みの「Monster Play」では内田、長谷部悠生(Gt)と益田がギターソロ獲得のためにじゃんけん。勝負の結果、ソロを披露したのは長谷部だったが、メンバーの計らいにより益田がブルージーなソロを弾き、内田がドラムセットに座るというスイッチも。本編ラストにアップチューンではなく、せつなさを湛えた「WATAGUMO」をしっかり聴かせたことも、天の邪鬼なわけじゃないだろう。ネオソウルやジャズが溶け合ったアレンジに乗るいまという時代を象徴する現実感のないロマンス。高い集中力で聴き入るフロアを見て、今のKroiの求心力を確認した。

ファイナルである東京2日目の先攻は在日ファンク。ファンクミュージックをベースにしたバンドとして、Kroiの一回り上の世代だ。冒頭から浜野謙太(Vo)がキレッキレのダンスを披露する「ダンボール肉まん」や「ちっちゃい」。ギターカッティングを含めた緩急の効いたビートと洒脱なホーンも含め、すべてでグルーヴを巻き起こす。「Kroiみたいなかっこいいバンドに呼んでもらって嬉しいんですけど、あんまりいきり立っちゃうと感じ悪いおじさんになっちゃいますね」と言いながら、「いきり立ってましたね」と笑わせる浜野。ホーンがエキゾなムードを漂わせる「ぬるまゆファンク」、また、現状批判もこのバンドの大いなる持ち味であり、その最新版である新曲「いけしゃあしゃあ」も披露。オーディエンスが発声できない状況下、足踏みをさせてそのままダンスへと盛り上がっていく「足元」などなど、浜野のエンタテイナーぶりと振り切ったオリジナリティが両バンドのファンを隔てなく一つにしていく様は感動的なほど美しかった。

Kroiは初日と曲順や選曲も変更。一曲目から「Fire Brain」で上げていく。しかしこの曲とて、単にアッパーなわけじゃない。終盤テンポダウンする展開は妙な感覚を残す。以降はノンストップで曲を畳み掛けていく。「Balmy Life」の内田のラップはタイラー・ザ・クリエイターばりのナイスフロウ。「Page」では叫びにも似た強い歌唱とファルセットの移行がスムーズだし、支える関将典(Ba)のベースが重く五臓六腑を揺さぶる。

「在日ファンク、最高じゃないですか。2016年の『フジロック』で見て喰らって。喋ってるだけで恐縮しますね」と内田がリスペクトを表明したことも新鮮に映った。場の自然発生的な一体感は「Juden」あたりから、より自由なオーディエンスの反応も相まり、変な喩えかもしれないがTalking Headsのライブ映画『ストップ・メイキング・センス』を彷彿させた。これは初日よりオーディエンスの世代が広範囲なせいかもしれない。「a force」「夜明け」といった初日とは違う曲も披露するバンドのフレキシビリティ。「夜明け」は在日ファンクとの対バンにマッチする日常感のある歌詞に感じられ、関のブルーノートフィールなフレーズから千葉のピアノソロでのエンディングも見事だ。ラストのブロックは初日と同様だったが、よりアンサンブルが噛み合い、「WATAGUMO」のエンディングでは感嘆ともため息ともつかないような声がマスクに漏れた。

アンコールではKroiが春に大阪はBIGCAT、東京はZepp DiverCityでのライブ開催を発表。好きなことばかりやってきて、その気持ちは変わらないが、もっといろんな人に見て聴いてほしいと内田。このツアーも相まって心境に変化が訪れた様子だ。キャラクターのキャッチーさだけでこれだけツアーは盛況にならないし、ストリーミングでこれほど再生数も上がらないだろう。彼らは好き放題作った音楽にビビッドに反応するオーディエンスと熱演する競演者を目の当たりにしてきたのだ。コロナ禍の時代にありながら、ライブハウスで熱を帯びグルーヴを発生させたKroiのストーリーは今年、新たなチャプターに向かう。(石角友香)

石角友香

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