東京より出会いが多様? 「北海道に移住した都会っ子」が語る不便な暮らしの豊かさ 〈志田芳美(株式会社FoundingBase)、小林実央(PHPオンライン編集部)〉

東京より出会いが多様? 「北海道に移住した都会っ子」が語る不便な暮らしの豊かさ 〈志田芳美(株式会社FoundingBase)、小林実央(PHPオンライン編集部)〉

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  • 更新日:2023/09/19
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コロナ禍で在宅勤務が一般的になったことで、社会人でも職場に縛られることなく住む場所を選べるようになりました。忙しない都会での暮らしから逃れ、地方でのんびり暮らしてみたいと考えている人も多いのではないでしょうか。

株式会社FoundingBaseで働く志田芳美さんは、東京生まれ東京育ちという、正真正銘の都会っ子。しかしコロナをきっかけに、現在は北海道の安平町(あびらちょう)に移住し、自治体からの委託で教育魅力化推進事業に携わっています。24年間の都会生活から一変、自然溢れる田舎町に移住して思ったリアルな感想を聞きました。

コロナ禍で考えた「どこで働き、どう生きるか」

新卒で人材会社に入社した志田さん。中途採用の法人営業として仕事に打ち込んでいましたが、社会人2年目にしてコロナが流行。在宅勤務が増えたことをきっかけに、自身のキャリアを見つめなおすようになったと当時の心境を懐かしそうに振り返ります。

「改めて自分がやりたいことを考えたときに、キャリア教育に携わりたいと思ったんです。社会人になると、答えが一つじゃないことにたくさん向き合います。そしてキャリア選択もその一つだと思います。

でもそういったことを10代のうちに学んだり、体験できる機会があまりなく、大人になってから悩んでいる人をたくさん見てきました。"自分がどうしたいか"に向き合い、行動し、幸せに生きていける人を育むには、発達段階の子どもたちに関わるしかないと考え、教育に携わりたいと思いました。

実際に教育の仕事をしてみようと思い、教育のNPO団体で副業を始め、転職を決意しました」

さらに、「どこで働き、どう生きるか」という問いへの答えを明確にすべく、当時行われていたGOTOトラベルキャンペーンで北海道の安平町へ。人生で初めての観光地化されていない地域への旅が、志田さんの人生を大きく変えることになります。

「安平町は何もかも東京とは逆の環境で、とても新鮮。この旅で、東京じゃなくても楽しいし、地域には素敵な暮らしが眠っていることを発見しました。自分が幼少期には経験できなかった、人と人とのつながりや自然と近い暮らしに強烈な憧れを抱くようになったんです。それに人生100年ぐらい生きるんなら、地方で暮らす時期があっても良いよねって」

また、安平町は「日本一の公教育を目指すまち」を掲げ、教育に力を入れています。教育を軸にした数々の取り組みに感銘を受け、「地域×教育」に関する仕事をしたい! と自分の進むべき道が明らかになったそう。

そこで、地方創生を事業として展開する株式会社FoundingBaseに入社。配属先は偶然にも、地方移住を決心するきっかけとなった北海道安平町でした。

「安平町では日常が気を抜ける暮らし」

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北海道の胆振(いぶり)総合振興局管内の北東部に位置する安平町は、緑豊かな森林と清流安平川が流れる丘陵地帯。乳牛生産やメロン栽培が有名で、大きな農園が広がる人口7000人程の長閑な町です。24歳で初めて東京を出た志田さんですが、「北海道の暮らしは意外にも快適」だといいます。

「東京での窮屈な暮らしの中で、息抜きをしたいと思ってもなかなか遠出は出来ませんでしたが、安平町では日常が気を抜ける暮らしです。一方で、新千歳空港から車で20分。札幌までは車で70分とアクセスの良さも兼ね備えています。刺激を求める時には大都市まで足をのばせばいい。だから地方移住して選択肢が狭まったとは全く思っていません」

近隣が苫小牧や千歳といった大都市であるため、車さえあれば買い物は不便なく出来るといいます。まさに都市と田舎の良いとこどりの町。都会っ子の志田さんにとっても快適なバランスで生活ができる環境だったのです。

「北海道で暮らす楽しみは、季節の移ろいを肌で感じることです。直売所に並ぶ季節ごとの野菜はどれも安いし、とにかくおいしい。木々の紅葉や美しい雪景色を見ることも心を豊かにしてくれます。東京では感じられなかった季節の移ろいを実感できて幸せです。自然に身をゆだねて生きる楽しみを日々噛みしめています」

「地方は排他的」は本当?

地方移住で気になるのは、「地方=排他的」という噂。初めて田舎暮らしをする人にとってはかなり気がかりな要素ですが、志田さんは「全く問題がなかった」と明かします。

「北海道はそもそも開拓地ですし、移住者が多いこともあって、よそ者扱いされたことはありません。移住してから地域の子どもからお年寄り、農家の方々など、関わる人の幅が一気に増えましたが、みなさんフレンドリーで温かい人ばかりです」

明治時代に多くの移民たちが北海道へ渡って土地を開拓した歴史や、近年の自治体による積極的な移住支援の影響もあり、北海道には移住者を受け入れる体制が整っているそう。よそ者ではなく、地域の一員としてコミュニティに受け入れて貰えると、志田さんは太鼓判を押します。

しかし移住先が温かく受け入れてくれても、移住者が暮らしを楽しめるかはまた別の話。ポイントは「暮らしにかかる手間を楽しめるか」にあるのでは?と志田さんは本音を打ち明けます。

「正直なところ、多少の不便を楽しめない人には田舎暮らしはきついと思います。暮らしにかかる手間が色々あります。東京であれば管理会社が行うような作業を、地方では住人が行う必要があります。雪かきを筆頭に、細かいところだとゴミの分別もかなり丁寧にやらなきゃいけなかったり。私もよく間違えて注意されることがしばしばです(笑)。

雪かきは大変な作業ですが、近所のおじいちゃんおばあちゃんの家の雪かきを手伝ってあげると、お礼として食材をもらえたりします。地域の人と助け合って問題を解決していくカルチャーなんですよね。これを面白いと思える人には、地方移住はオススメです。不便だと思えることでも、助け合ったり、有難いと思えるスタンスは大事だと思います」

都会暮らしの利便性に慣れきっていると無駄と感じるような作業でも、自分の責任で行うことが求められるのが田舎暮らしの大変な部分であり、醍醐味とも言えるのかもしれません。

地方で得た「充実したコミュニケーション」

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安平町には月に一度「大人の探究プロジェクト」と称して、地域住人が自主的に開催する意見交換会があるといいます。

「参加者には議員の方や役場の方、会社員など、安平町の住人が参加しています。そこではひと月の仕事や暮らしの振り返りをするんです。ほかにも朝の読書会を開いたり、地域住民が話しあう機会が多く設けられていて、自分にも居場所があると実感させてくれます」

「東京よりも意外と田舎のほうが出会いの豊富さがあるんじゃない...?」と笑顔で語る志田さん。北海道と東京では人々とのかかわり方に違いがあるというのです。

「北海道に来て、関わる人々の多様さが増しました。一日に0歳から100歳までのいろんな人たちと会話をするんです。東京に住んでいると、大学時代の友人や、会社の同僚など、日々で関わるのは限られた人だけでした。

東京のコミュニティにいるのは、似たような生い立ち、似たような学歴...同質の属性の人たちばかり。もちろんそれは居心地が良くて楽しいです。でも、北海道ではこれまで出会ったことのない経歴の人たちと、価値観を変えるような刺激的なコミュニケーションをとっています。それがすごく楽しいんです」

【志田芳美(しだ・よしみ)】
1996年生まれ。東京出身。大学時代は立教大学に進学しスポーツ栄養を中心にウェルネスとしてのスポーツについて学ぶ。卒業後はリクルートに入社し、中途採用の法人営業を行い、幅広い業界の採用支援を行う。その後2021年4月にFoundingBaseにジョイン。安平町にて教育チームリーダーとして、あびら教育プランの運営・推進に携わる。

志田芳美(株式会社FoundingBase)、小林実央(PHPオンライン編集部)

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