次の標的は習近平?ペロシ米下院議長“強行”台湾訪問で見えたバイデン政権の中国弱体化シナリオ。自衛隊も作戦計画に組み込みか=高島康司

次の標的は習近平?ペロシ米下院議長“強行”台湾訪問で見えたバイデン政権の中国弱体化シナリオ。自衛隊も作戦計画に組み込みか=高島康司

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  • 更新日:2022/08/06
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ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問した。中国は軍事演習などで激しく反応しているが、これはバイデン政権が中国を追い詰める方向に大きく舵を切った可能性を示唆している。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

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中国の猛反発を受けたペロシ下院議長「台湾訪問」

8月2日夜、ペロシ下院議長は台湾に到着。翌3日には台北で蔡英文総統と会談を行った。

ペロシ下院議長は大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ2位の要職で、アメリカの現職の下院議長が台湾を訪問するのは1997年のギングリッチ以来25年ぶりとなる。

一方、台湾は中国の一部だとする中国政府は、ペロシ議長の台湾訪問計画がイギリスの新聞フィナンシャル・タイムズで7月中旬に報じられた直後から、「断固反対する。訪問すれば強力な措置をとる」などと繰り返し表明していた。

ペロシ下院議長の台湾訪問を受けて、中国外務省は声明を発表し「ペロシ議長は中国の強烈な反対と厳正な申し入れにもかかわらず台湾を訪問し「1つの中国」の原則に著しく違反し、両国関係の政治的な基礎に深刻なダメージを与えた。中国は断固反対するとともに厳重に非難する」と激しく反発した。

そして、3日未明、台湾本島の南西沖に設定している防空識別圏に、中国軍機のべ21機が進入した。それは、殲16戦闘機のべ10機、殲11戦闘機のべ8機などだった。

また2日には、総統府のサイトが、大量のデータを送りつけてシステムをダウンさせようとする「DDoS(ディードス)攻撃」と呼ばれるサイバー攻撃を受けた。攻撃は台湾域外から行われ、攻撃のデータ量は通常の200倍にのぼり、サイトの表示が一時できなくなったが、およそ20分後に復旧した。

さらに3日、中国は台湾の需要の9割が依存し、建築材として使われる天然砂の台湾への輸出を禁止した。これは台湾の建設業に大きな痛手となる。

中国の軍事演習と米海軍の展開

このように、ホワイトハウスの警告をも無視された格好で実施されたペロシ下院議長の台湾訪問に中国はこれまでにないくらいに反発し、下手をすると武力衝突すらも懸念される状況だった。不測の有事の事態である。

しかし、中国政府は武力衝突する意思はなく、大規模な軍事演習の実施で不満を表明するようだ。

ペロシ下院議長が台湾に到着した2日夜、中国軍で東シナ海を所管する東部戦区は台湾周辺で軍事演習を開始すると発表した。台湾の北部や南西部、それに南東部の空と海上で軍事演習を行うほか、台湾海峡でも長距離の実弾射撃などを行うとしている。演習は台湾を囲むようにしたあわせて6か所の海域や空域で実施し、実弾での射撃なども行う予定だ(編注:原稿執筆時点2022年8月4日。中国は実際に軍事演習を行い、ペロシ氏の台湾訪問に対する抗議を続けています)。

一方米軍は、空母レーガン打撃群をバスティーユ海峡東部海域に配備し、集中的に航空機の着陸作戦を行なっている。さらに、沖縄海域にも関連艦艇を配備して待機している。

また、台湾軍の動きも活発だ。中国による軍事挑発の可能性に対応するため、軍は2日から4日正午までの3日間、「強化即応指導期間」に入った。空軍の台東基地に8機のミラージュ戦闘機を追加配備した。これまで台東基地には4機のミラージュ戦闘機が配備されていたが、中国軍に対応し、東部空域の安全維持のために8機が追加配備され、合計12機にした。これで、関連海域をパトロールする海軍艦艇の密度を高める計画だ。

自衛隊も作戦計画に入っている

このように、南シナ海と台湾付近の海域で中国軍と米軍の空母部隊が睨み合う状況なので、予想外の軍事衝突の可能性もあるとして警戒されている。

米中の専門家は中国軍は軍事演習の実施だけで、武力衝突の可能性はほとんどないとしている。だがアメリカは、台湾海峡で有事が発生した際の計画はすでに準備しており、それが中国側から明らかになっている。

2日、北京に本拠を置く軍事専門のシンクタンク、「南シナ海戦略情勢啓発」は、空母レーガン打撃群がバスティーユ海峡の東側海域におり、レーガンの動きを監視していると述べた。この監視の結果、同シンクタンクは、台湾の東太平洋海域は米軍と日本軍が担当し、台湾海峡の西側は国民軍が担当するはずであると米軍の計画を推測した。

つまり、台湾海峡を東西の2つのエリアに分け、中国との戦争では米軍と自衛隊が東側を、台湾軍が西側を担当するということだ。

このシンクタンクの推測が正しいとすると、台湾有事で中国軍との戦闘状態になった場合、すでに自衛隊も米軍の作戦行動に組み込まれ、戦闘に参加することになっている。

もしそうだとすると、危機は台湾にだけ止まることはないだろう。中国との戦争の規模にもよるだろうが、小競り合いの範囲を越えて、本格的な戦争になるような場合、日本国内の米軍基地が真っ先に中国軍の攻撃対象になるだろう。

いまは考えられないかもしれないが、最悪なケースではこのような状況も想定しておいた方がよい。留意しなければならない。

ペロシ下院議長台湾訪問のタイミング

このような最悪なケースも考えられるだろうが、少なくとも今回のペロシ下院議長の台湾訪問では、こうした状況になることはまずない。

米中両国とも武力衝突は望んでいないので、両者とも軍事力の誇示に止まるはずだ。これはこれまで何度も起きていることだ。

しかし、それにしても、なぜペロシ下院議長は中国が過去に前例がないほど強く反発しているときに、あえて台湾訪問を強行したのだろうか? バイデン政権は議長の台湾訪問には反対していたとしているが、それは本当なのだろうか? むしろ今回の台湾訪問は、中国を挑発して追い込む規模の大きな戦略の一部なのではないだろうか?

少なくとも筆者にはそのような疑念がある。ホワイトハウスの声明をそのまま信じるわけには行かない。

ペロシ台湾訪問と同じタイミングで起こったこと

このような視点で台湾訪問と同じタイミングで起こった出来事を見ると、興味深い。

8月1日にロイター通信が報じたところによると、アメリカは、中国への半導体製造装置の輸出規制を拡大し、メモリーチップ製造業者を含めることを検討しているという。輸出規制は、特に国有企業の「長江存儲科技(YMTC)」を含み、128層以上の3D NANDフラッシュチップを製造するためのチップ製造ツールの輸出を禁止することになるという。

現在の商用チップに対する規制は、メモリーチップではなく、プロセッサーなどのアプリケーションで使用されるロジックチップが焦点になっている。メモリーチップの製造に使用する装置の販売が規制されると、中国のチップ開発には痛手になる。

2016年に設立されて以来、中国国営の「YMTC」は世界の既存メモリチップメーカーにほぼ追いつたものの、いま同社が製造・販売している「128層3D NANDチップ」は最先端から1~2世代遅れている。「YMTC」は、さらに高度な「192層」の次世代チップの開発にも着手している。

一方、米メモリーチップメーカーの「マイクロン」は7月にもっとも高度な「232層メモリーチップ」を出荷している。これに追いつくため、「YMTC」にもこれの開発計画がある。だが、これを実現するためには、アメリカのメーカーだけが持つ高度な製造装置が必要となる。今回バイデン政権は、この製造装置の輸出を規制をしようというのだ。

「ラムリサーチ」と「アプライドマテリアルズ」のアメリカの2つの企業が、問題のチップ製造装置のトップサプライヤーである。一方「アップル」は、「YMTC」と、中国製のメモリチップの一部が「iPhone」に採用されることになる取引について交渉していると報じられており、これを受けて米フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員は、「アップル」のティム・クックCEOに対し、「YMTC」が中国政府や人民解放軍とつながっているという懸念についてまとめた厳しい手紙を送付している。

アメリカはすでに、線幅10ナノメートル(nm)以下の半導体が製造可能な装置の大半について、中国最大の半導体メーカーである「中芯国際集成電路製造(SMIC)」に販売することを禁止している。今回はこの制限の対象を14nm以下の半導体が製造可能な装置に拡大したのだ。

今回の制限は「YMTC」や「SMIC」以外にも拡大し、「台湾積体電路製造(TSMC)」など受託半導体メーカーが中国で稼働する製造施設も含まれる公算が大きい。

ドル高による中国からの資本流出

中国への輸出規制の動きは新しいものではない。すでにトランプ政権のときからのものである。

オバマ政権までのアメリカは、中国の拡大を軍事的に牽制しつつも、グローバル経済の最大のパートナーとして、いわば協調路線歩んでいた。だがトランプ政権は、中国の発展と拡大を封じ込める抑止策に大きく舵を切り、経済制裁を思わせるような規制を中国に体して導入し始めた。

トランプ政権とバイデン政権はそれこそ本格的に敵対する関係であるが、両者で唯一共有しているのが対中国政策である。バイデン政権も、トランプ政権が実施した中国抑止策を継承している。その点では、今回のチップ製造装置の輸出規制は特に目新しいものではない。

しかしながら、やはり注目しなければならないのは、これが実施されるタイミングだ。ペロシ下院議長の台湾訪問で中国との関係がこれまで以上に緊張している時期に実施しているのだ。

このタイミングを見ると、さらに興味深いことが見えてくる。いま、アメリカと中国の金利差は拡大し、中国からの巨大な資本流出が起こっているのだ。

7月下旬には2022年の中国債券市場からの資金流出が300億ドルの大台に乗り、2014年以来最大の資金流出となった。これは、本来であれば中国国内に投資されるべき資本の流出なので、中国の成長にとっては痛手となる。

これを止めるためには、これまでの低金利政策を改め、利上げをしなければならない。要するにテーパリングである。

しかし、中国の4-6月期の経済成長率が前年同期比0.4%増にとどまるいま、テーパリングは中国経済にとって痛手になることは間違いない。

これは一種のジレンマである。資本流出を止めるためにはテーパリングしなければならないが、それはそれで景気をさらに悪化させることになるからだ。

ロシアを追い込む手法と似ている

このように見ると、どうも今回のペロシ下院議長の台湾訪問は、トランプ政権から引き継いだ中国抑止策のレベルを1段階高めるために行われたように感じる。

それは、半導体製造装置の輸出規制で中国のテクノロジーの発展を抑止し、また金利の引き上げで中国の資本流出が加速しているタイミングで、ペロシの台湾訪問を強行し、中国を挑発するという動きだ。

これら3つの出来事は関係がないように見えるが、そうではないように思う。全方位的に中国を封じ込める策の一環のように見える。

特に習近平が、今年の第20回党大会で異例の3期目を目指しているときにこうした挑発を行うと、弱腰を見せられない習近平は、強く出らざるを得ない。そして、万が一中国と軍事的に衝突するようなことでもあれば、これを機に中国を一気に叩くという戦略だ。

これは、将来的に中国を叩くために台湾と日本を使うという戦略ではないのか。このメルマガでは、今回のウクライナ戦争は、バイデン政権がロシアの国力を消耗させるため、ウクライナのゼレンスキー政権を誘導し、巧妙に仕掛けた戦争であるということを何度も書いた。

それほど遠くない将来、台湾と日本がいまのウクライナの立場になってしまうことも考えられる。

先に紹介した北京のシンクタンク、「南シナ海戦略情勢啓発」は、自衛隊は米軍とともに、台湾海峡の東側で戦闘に参加する計画になっていると推測している。いまのとろこ、中国がロシアのようにアメリカの挑発に乗るとは思えないが、バイデン政権の背後で外交政策を立案しているのは、軍産複合体とウォールストリートが結集している「外交問題評議会(CFR)」である。これはトランプ政権とは大きく異なる点だ。

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