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ENHYPENが、2度目となるワールドツアーの日本公演『ENHYPEN WORLD TOUR 'FATE' IN JAPAN』を9月2、3日に京セラドーム大阪、13、14日に東京ドームにて開催。本公演はグループ初となる日本ドームツアーであり、また東京ドーム公演に関してはK-POPボーイズグループ史上最速での実現となる。『ENHYPEN WORLD TOUR 'FATE' IN JAPAN』は、感動と涙に包まれながら幕を閉じた。本稿ではその最終日9月14日の模様をお届けする。
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開演時間を迎え、会場が暗転すると、月蝕やヴァンパイアを彷彿とさせる映像が映し出され、一気に世界観へと引き込まれる。そして、白に金の刺繍が施された衣装をまとったメンバーが登場し、会場中に溢れんばかりの歓声が響きわたる。
トップバッターを飾ったのは、妖艶で中毒性のあるサウンドのダンスナンバー「Drunk-Dazed [Japanese Ver.]」、続いてTOMORROW X TOGETHER・YEONJUNがフィーチャリングしたことでも話題になった「Blockbuster」がENHYPEN Ver.のアレンジで披露された。
「Let Me In (20 CUBE) [Japanese Ver.]」「Flicker」「FEVER」では、フォーメーションダンスはもちろん、メンバー一人ひとりの食らいつくような表情や鋭い眼差しから、彼らのこの東京ドーム公演に対する気合いが感じられ、心をグッと掴まれる。また、ここでバックに映し出された心臓。はじめは青く凍結されていたものの、曲が変わるごとにどんどん溶けていき、最後には真っ赤な血の通った心臓となり、会場全体を赤く染めていく様子もかなり印象的だった。
ENHYPENにはヴァンパイアを彷彿とさせる作品があるが、この演出はまさに冷血な生き物として描かれるヴァンパイアが、体温を宿した人間となっていく様を連想させられ、“ENHYPEN”という生命の誕生とその進化を感じることもできた。また、「Let Me In (20 CUBE) [Japanese Ver.]」のMVから着想を得たような赤と青が大々的に使われた映像を背負いパフォーマンスする姿は、“光と闇”、“善と悪”というふたつの相反する要素の狭間でもがいている姿を映し出しているようにも思えた。
続いての、「Future Perfect (Pass the MIC) [Japanese Ver.]」ではENGENE(ファンの呼称)の大きな掛け声で一体感が生まれ、「Blessed-Cursed [Japanese Ver.]」でメンバーはパワフルなダンスを披露する。そして、VCRの静寂を打ち破るように「What’s up 東京!」とメンバーが高らかに叫ぶと、アップテンポのロック曲「Attention, please!」で一気に熱気が増した。曲の最高潮でJAYがギターをかき鳴らし、最後にはワイルドに投げ捨てる。その姿はまるでロックンローラー。グルーヴィーなダンスナンバー「ParadoXXX Invasion」が始まると、会場内のボルテージもMAXに。
疾走感溢れるギターサウンドが印象的な「Tamed-Dashed [Japanese Ver.]」では、背景映像が晴天下のスタジアムに切り替わり、メンバーがサイン入りのラグビーボールを客席に投げ込む瞬間も。カジュアルに着崩した衣装に身を包み、思い思いにパフォーマンスを楽しむメンバーの姿は、まるで荒削りなままの少年のようでもあった。
冒頭の耽美で厳かな「Drunk-Dazed [Japanese Ver.]」から始まり、エネルギッシュな青春の息吹を感じる「Tamed-Dashed [Japanese Ver.]」に至るまで。公演前半は、まさに『I-LAND』で熾烈なバトルを経験し、全世界の注目を一身に浴びながらデビューした彼らが、幾多の困難や試練を乗り越え、殻を破り、自由に音楽を楽しむまでに成長を遂げた軌跡を辿るようなステージだった。
ここまで圧巻のパフォーマンスを見せつけてきたかと思えば、MCコーナーでは先ほど客席に向けて投げたボールを取れなかったENGENEに向けて愛嬌を振りまいたり、「ラーメン、つけ麺、僕イケメン」と会場のENGENEに叫ばせてコール&レスポンスを楽しんだり(JAY)、普段の彼らが垣間見えるような自然体な姿で魅了する。会場にいるENGENE全員とペンライトでウェーブを作ろうと奮起する姿も、茶目っ気に溢れていた。
ユニットステージでは、まずJAY、JAKE、SUNGHOON、SUNOOによる「TFW (That Feeling When)」が披露され、春風のような優しい歌声とJAYのギター演奏に会場全体がうっとりする。続いて、JUNGWON、HEESEUNG、NI-KIによる「Just A Little Bit」が始まると、会場はENGENEのスマホライトに照らされ、星空のような空間のなか、HEESEUNGの弾く、切なくも美しい音色のピアノソロと3人の甘い歌声のハーモニーが鳴り響き、聴き入ってしまう。
軽快なイントロと共に、少年から大人になっていく様を描いた甘酸っぱい「10 Months」が始まると、メンバーがバス型のトロッコに乗り、センターステージに移動。続いて、ポジティブなエナジーを感じる「Make The Change」、TikTokでも話題になったポップなラブソング「Polaroid Love」など、彼らの愛らしい魅力が炸裂するステージでは、「もっとENGENEの近くに行きたい!」と言わんばかりにステージから身を乗り出し、手を振ったりウィンクしたりするメンバーたちの姿が。ド迫力のパフォーマンスに圧倒され続けられた前半ステージとは打って変わり、あたたかで楽しいムードに包まれた。
NI-KIの「今日はスペシャルゲストが来ています!」の一言に会場がザワつくと、今年7月にリリースされた『ポケットモンスター』の音楽プロジェクト「Pokemon Music Collective」の楽曲「One and Only」が始まり、なんと8体のピカチュウが続々と登場! ステージでメンバーとピカチュウが抱き合い、一緒に踊る様子に、客席からは歓声が鳴り響く。途中、はぐれてしまったひとりのピカチュウの元にHEESEUNGが駆け寄り、一緒に踊る優しい姿にもほっこり。
メンバーが「先輩、またね!」とピカチュウを送り出すと、「Make Some Noise!」の掛け声と共に「SHOUT OUT」へと続き、魂の叫びのような力強い歌声が轟く。会場にいるすべてのENGENEによる大合唱にも胸が熱くなる。続いて、JAKEの「コンサートはこれからが始まり!」「叫べー!」と共に、ノリノリのEDM曲「Go Big or Go Home」で中盤ステージが終了。
そして、先ほどの盛り上がりから、また空気感が大きく変わり、ダークでミステリアスな「Chaconne」がスタート。「初心を忘れない」という彼らのメッセージなのか、原点回帰と言わんばかりの公演序盤を彷彿とさせる厳かなムードが漂うなか、黒と赤を基調とした衣装をまとったメンバーたちが妖艶に舞う。第2章の幕開けだ。
続いて、夕日が差し込む屋敷をバックに、失った愛を請求書に例えた「Bills [Japanese Ver.]」が切なくも爽やかに歌い上げられると、セクシーなダンスナンバー「CRIMINAL LOVE」が繰り広げられる。この曲のステージを一言で表すならば、「覚醒」。赤く光る満月に照らされながら、激しく踊り狂うメンバーは実に妖艶かつたくましく、ENHYPENというグループの醍醐味のひとつには、こういったダークなファンタジー感溢れるステージにあるのではないかと感じさせられた。色気と危うさが漂う「Sacrifice (Eat Me Up)」では、バックの映像が吹き荒れる荒野に切り替わり、一糸乱れぬ群舞が繰り広げられる。最後には荒野に晴天の光が差し込み、暗く長い夜が明けたことを告げられたような気持ちになった。
JAYの「とうとう公演もラストに近づいていますが」という言葉を皮切りに、この公演のタイトルにもある“FATE”(運命)をテーマにしたダンスナンバー、「Bite Me [Japanese Ver.]」が始まる。スリリングで魅惑的なメロディに運命の赤い色が絡み合うような複雑なフォーメーションのダンスが繰り広げられ、ENGENEもそれに合わせて息ぴったりの掛け声をおくる。まさにENHYPENとENGENEが強い運命で結ばれていることを感じさせられる圧倒的な一体感に包まれながら、本編は終了した。
ENGENEが用意したメッセージボードが映し出され、笑いや心あたたまる空間に包まれたのも束の間、アンコールに応えて強いビートが鳴り響いた。メンバーが再び登場し、「One In A Billion (Rock Ver.)」をスタンドマイクで熱唱。ステージに噴き出される炎と力強く歌うメンバーの姿が、再び会場を燃え上がらせる。
熱いパフォーマンスが終わり、いよいよ最後の挨拶へ。「これからも僕たちを見守ってください」「愛してる!」と語ったSUNOO。「この瞬間がずっと止まっていてほしい」と名残惜しさを口にするNI-KI。「皆さんの姿を見て、デビュー前の夢が現実になりました」「こんなに大きなプレゼントをくれて、ありがとうございます!」と感謝を告げるHEESEUNGとJAY。「僕たちとENGENEは“FATE”、まさに運命ですよね」とJAKEが言うと、「この運命の赤い糸をもっと強くできるように頑張ります」「この先も幸せな思い出をたくさん作っていきたい」「必ず戻ってくるから、どこにも行かないでください」と、再会することを誓ってくれたJUNGWONとSUNGHOON。それぞれが、この公演や音楽、歌手という夢、ENGENEへの愛など、ありったけの想いを口にし、いよいよフィナーレへ向かう。
ラストを飾るのは、強烈なエレキギターサウンドが特徴のロック曲「Karma」。彼らの生命の雄叫びのような歌声と共に手拍子と歓声が湧き上がり、紙吹雪が壮大に舞うなか、メンバーはステージを後にした。
しかし、公演はまだ終わらない。実は、特別なサプライズが用意されていたのだ。スクリーンには、「ENGENEのBLOSSOMを聞かせてくれませんか?」の文字が。「BLOSSOM」は、9月5日に発売された日本3rdシングル『結 -YOU-』に収録されている日本オリジナル曲だ。ENGENEがサビを合唱すると、スクリーンに桜の木と花びらが映し出され、メンバーが再々登場。愛する相手を思う気持ちと大切さを花に喩えた歌詞を、一つひとつ噛み締めるように歌うメンバー。クライマックスで響き渡る美声に心を打たれた瞬間だった。
その時、涙を流したのはJUNGWON、HEESEUNG、JAKE、SUNOO、NI-KIだった。なかでも、「いつもENGENEのためだけに生きているので、僕たちがいなくなるまでずっと応援してください」「『I-LAND』で4位で終わった時よりも幸せです」と語り、最後の最後まで涙を止めることのなかったNI-KIの姿からは、彼がどれほど今回の東京ドーム公演に強い想いを懸けていたのかがひしひしと伝わり、思わずこちらの目頭も熱くなった。
曲を歌い終え、涙を流しながら円陣を組み、互いを離すまいと言わんばかりに、キツく抱き合うメンバーたち。再び客席に目を向けるとサプライズスローガンが上がり、7人が驚きの表情を見せる。ENGENEが歌う姿を「たまらない」といった表情で見つめ、それぞれが噛み締めながら、感謝の言葉をこぼす。お互いの姿が見えなくなる最後の瞬間までメンバーの名前を呼ぶENGENEの歓声と感動のムードに包まれながら、『ENHYPEN WORLD TOUR 'FATE' IN JAPAN』は幕を閉じた。
本公演を振り返ると、序盤では赤と青がせめぎ合う耽美で致命的な魅力溢れるステージでオーディエンスを圧倒し、「ENHYPENとはどういうグループなのか?」という物語と存在を一気に知らしめ、中盤では愛らしさも見せ、そして終盤で原点回帰すると共により一層ダークでスリリングな世界観を醸し出し「このグループの真骨頂はここにあるのだ」ということがよくわかったライブだったと思う。
それは、まるでひとりの人間が誕生し、光と闇の狭間に揉まれながらも、愛と自由を知り、自我を確立し、成長していく過程であるようにも感じられた。“成長”と言うと軽く聞こえてしまうかもしれないが、ENHYPENについては、彼ら自身が音楽を通して“成長”という概念を体現しているのではないかと気づかされた3時間20分だった。
(文=AMO)
AMO