◇セ・リーグ 阪神3-2広島(2022年8月5日 マツダ)

<広・神>8回2死一、二塁、ピンチを連続三振でしのぎ、ガッツポーズで雄叫びを上げる湯浅(撮影・北條 貴史)
今季まだ猛虎が1勝しかしていなかった敵地マツダスタジアムで湯浅が仁王立ちした。8回、リードは1点だけ。無死一、二塁の窮地を招いてから、鬼神と化した。
「ランナーを背負ってしまいましたが、一つずつアウトを取っていこう…と切り替えて投げられた」
野間に右前打を浴び、菊池涼の一塁線へのバント処理では果敢に二塁送球。捕球した中野が二塁ベースを踏めず、セーフ(記録は中野の失策)になった。矢野監督のリクエストでも判定は変わらない。1点もやれない中で3番からの中軸と対峙(たいじ)した。
「ずるずる引きずっても、いい結果にはならない。クリーンアップでしたけど、バッターと勝負する気持ちで、一人一人しっかり投げ切れた」
まずは秋山を152キロで押し込んで左飛。走者を進塁させなかった。続くマクブルームに対してカウント2―2から6球目、何度も首を振って選んだのは、スライダーだ。今季の全投球でも7・7%の割合しかない“隠し球”で空振り。今季47個目の奪三振でスライダーを決め球にしたのは初めてだった。
「絶対、誰の頭の中にもなかったと思う。自分の中でサインを見る前に決めていた。三振を狙っていたので、いい感じに投げられた」
4回に適時打していた坂倉は153キロで再び空振り三振を奪い、力強く拳を叩いた。リーグトップの31ホールドに伸ばして1点差の逃げきりに貢献。選手の思いも代弁した。
「まだまだゲーム差はありますけど、本当にみんな大逆転を目指してやっていますし、現実的に無理ではないと思う。明日からも勝てるように準備して、自分もチームに貢献できるように頑張ります」。先月17日に23歳になったばかり。投球と言動には風格すら伴ってきた。
(阪井 日向)