
名鉄電車
名鉄電車の運転士は、毎日どんな景色を見ているのか。運転席に潜入して特別にカメラを設置して、専門家に話を聞きながらゆらり電車の旅を楽しみます。
今回は、「名鉄岐阜駅から名古屋駅」の区間を運転士目線でお届け! 名古屋鉄道運転保安部の米田大介さんに解説してもらいます。
それでは、出発進行!

下り列車
名鉄岐阜駅から出発したのは、名古屋方面に向かう上り列車です。名鉄岐阜駅から加納駅に向かってゆっくりと走行します。対向車線には下り列車が見えてきました。とてもゆっくり走っていますね。
米田さん:名鉄岐阜駅の出入り口は、一部が単線区間になっていて、線路が1本しかありません。上り列車が通るときに、タイミングによっては下り列車が信号待ちをしなければならないので、ゆっくり走るんです。
下り列車とすれ違ったあと、住宅地が密集した場所をグングンと走行します。
茶所駅を通過して岐南駅へ

茶所検車支区
茶所駅を通過すると、左側にはミュースカイ(名鉄2000系電車)が見えてきました。
米田さん:このミュースカイは、このあと名鉄岐阜駅に回送して折り返しで「中部国際空港行き」として運転するので待機しているんです。また、茶所駅は「茶所検車支区」といって車両の日常の検査を行ったり、岐阜から発車する列車を待機させたりする役割を担う重要な場所でもあります。茶所駅には約50台の列車を留め置くことができるんです。

名古屋本線の意味の「本」
岐南駅から笠松駅に向かう途中、左側には「本」と書かれた看板を見つけました。
米田さん:線路の切り替わりを示しています。この先は名古屋本線と竹鼻線の分岐駅である「笠松駅」があります。竹鼻線は、笠松駅から岐阜県羽島市の江吉良駅までを結ぶ路線です。どちらの方面に線路が切り替わっているのかを、運転士に知らせてくれているのです。
「本」→名古屋本線
「竹」→竹鼻線
ここでは「本」と表示されているので、名古屋本線の方面に線路が開通しているという意味になります。
分岐の笠松駅を通り過ぎ、木曽川堤駅へ進む名鉄電車。カーブを曲がった先の木曽川を渡ります。
線路の中央にあるATS(自動列車停止装置)

線路の中央に付いた白い物体
石刀駅から今伊勢駅に向かいます。線路の中央には何やら白いものがありますね。
米田さん:速度センサーの役割をしています。定められた速度以上で列車が接近すると、自動的に非常ブレーキをかけるんです。
名鉄一宮駅の上は百貨店の駐車場

留置線
名鉄一宮駅の手前には、留置線が見えてきました。
米田さん:こちらは名鉄一宮駅に到着した列車が折り返すために待機をしています。
名鉄一宮駅の建物は百貨店と共用。駅のすぐ上には百貨店の駐車場があります。

筒の中に予備の遮断機の竿が入っている
さらに進んで島氏永駅から国府宮駅へ。
米田さん:踏切の近くに見える白いものは、遮断機の予備の竿を置いておく場所です。万が一、遮断機が折れてしまった場合でもすぐ取り替えられます。雨風をしのぐために、塩化ビニール製でできた筒の中に保管しています。
新川検車支区となる須ケ口駅

新川検車支区
須ケ口駅には、いくつかの列車が停車しています。
米田さん:須ケ口駅は「新川検車支区」です。茶所駅と同じように、車両の日常の検査や列車を待機させる場所です。こちらは約100台留め置くことができます。
行き止まりかと思いきや…

Y線
新川検車支区の須ケ口駅を出発すると、隣の線路が行き止まりに!
米田さん:岐阜方面から来た須ケ口行きの電車が、折り返しをするための留置線です。線路の形がアルファベットのYの字のようになっているので、『Y線』と呼んでいます。
東枇杷島駅から栄生駅へ

名古屋駅発のミュースカイとして運行するため待機
少しずつ名古屋駅が姿を現してきました。隣の線路にはミュースカイがいますね。
米田さん:名鉄名古屋駅は、上下線1本ずつしかなく、長く留め置くことができません。そこで東枇杷島駅と栄生駅の間の留置線を利用して、折り返し、名古屋駅発のミュースカイとして運行できるように準備しています。
14駅前とJR東海の線路が入れ替わっている

交差するJR東海と名鉄
西枇杷島駅付近ではJR東海の線路は向かって左側になっていましたが、いつの間にかJR東海の線路が右側に!
米田さん:名鉄岐阜駅から名鉄名古屋駅まで、JR東海はまっすぐ走っている一方で、名鉄は線路が曲がりくねっています。そこで直角に交わる部分が西枇杷島駅付近です。交差したあとは並行して走るので、線路の場所の入れ替わりが発生します。
地下鉄区間を駆け抜けて名鉄名古屋駅に到着!

味わいのある地下の線路
列車は名鉄名古屋駅に向かって地下区間に入りました。古くて味わいのある地下鉄内。まるで洞窟を体験しているような雰囲気です。
米田さん:名鉄名古屋駅は昭和16年(1941年)に開業しました。たしかに、古いのですが、メンテナンスはしっかり行っています。

名鉄名古屋駅のホーム
米田さん:(写真左)向かって左側が乗車ホーム、(写真右)右側が降車ホームです。乗り降りを分けて、早く電車をさばけるような工夫をしています。
人々の生活を支える名鉄電車。その線路の行く先には、私たちがより便利で安全に乗車できるようなたくさんの仕掛けが隠されていました。