横浜F・マリノスが指揮官の退任で直面するジレンマとは...。日本と英国では期待と重圧にレベルの差がある?【英国人の視点】

横浜F・マリノスが指揮官の退任で直面するジレンマとは...。日本と英国では期待と重圧にレベルの差がある?【英国人の視点】

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  • 更新日:2021/06/11
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【画像:Getty Images】

指揮官を失った横浜F・マリノス

横浜F・マリノスは10日、アンジェ・ポステコグルー監督の退任を発表した。マリノスを2019年のJ1リーグ制覇へと導いた指揮官は、スコットランドの強豪セルティックの監督に就任する。退任と就任を巡る反応の違いは、日本と英国のサッカーにおける期待や重圧の差を表しているのだろうか。(文:ショーン・キャロル)
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サッカーの監督というのはクラブを渡り歩くものだ。毎週のように世界のどこかで監督がクビになったり辞任したりしており、2021シーズンのJリーグでもすでに3つのディビジョンで計13件の監督交代が起こった。

基本的に、監督との別れに対するサポーターの反応には2種類ある。クラブを去るボスを支持していなかったファンの場合は安心感、さらに言えば幸福感。そして、続投を望んでいたファンの場合であれば怒りや悲しみだ。

しかし、アンジェ・ポステコグルー監督と横浜F・マリノスとの別れはもう少し複雑なものだったと言える。

日本における監督交代は、ほとんどの場合チームの成績が望ましい水準に達していない時に起こる。クラブ側が決断を下す場合もあれば、現職の指揮官が自ら身を引く場合もある。だがポステコグルーとマリノスの場合はこれに該当するものではない。Jリーグの監督が他国からのオファーにより積極的に引き抜かれるという珍しいケースのひとつであり、マリノスサポーターは落胆や諦めの思いを抱きつつ受け入れることを余儀なくされる。

ソーシャルメディア上でも様々な反応があったが、一般的なサポーターの思いを把握する上で最適な手法ではないことは否めない。そこでの議論は、議論と呼べるものであるかどうかも分からないが、結局は両極端の大きな声で埋め尽くされてしまう。熟慮されバランスの取れたコメントなどほとんど目にすることができない。それでも噂に対する海外の反応は興味深いものであり、Jリーグが外からどう見られているかを確認できる機会となった。

日本と英国の期待と重圧のレベルの差

一つの傾向としては、控えめに言っても懐疑論と言うべきものが見られた。セルティックのファンは、「日本でしか経験のない」「聞いたこともない」何者かが自分たちの歴史あるクラブを率いるという話に好印象を抱いていない様子だった。

もちろん、こういった理由で誰かを批判するのは全く馬鹿げた話だ。聞いたことのある監督がいつも良い仕事をするとは限らないし、現在なら少し調べただけでもポステコグルー監督がオーストラリアと日本のクラブでも、オーストラリア代表監督としても成功を収めたことが簡単に分かるだろう。しかしこの反応は、日本と英国のサッカーにおける期待と重圧のレベルの差を表している。

一方で、“アンジェボール”の熱烈なファンたちは、彼らの応援する監督に今回のチャンスが与えられることを歓迎しているようだ。ポステコグルー監督をこき下ろす者たちに反論し、彼は欧州の名門クラブに十分以上にふさわしい指揮官だと主張していた。こちらの場合は逆に、もう少し慎重になってみてもいいかもしれない。確かにポステコグルー監督はどこへ行っても最終的にタイトルを獲得してきたが、自身の率いるチームに対して非常に特徴的な戦い方をさせようとする監督であり、その実現のためには時間もかかる。

一部のセルティックファンの反応も示しているように、ポステコグルー監督にグラスゴーで与えられる時間はそれほど長くはない可能性が高い。クラブは散々なシーズンを過ごし、スコティッシュ・プレミアリーグで宿敵レンジャーズに悠々とタイトルを奪われ10連覇を阻まれてしまったばかりだ。

ポステコグルーがセルティック・パークに喜びを取り戻すために必要な精神力も戦術的ノウハウも兼ね備えた監督であることに疑いの余地はない。それでも、クラブと選手たちからの全面的な協力が得られず、彼の手法が早いうちにファンからの支持を得られることもなかったとすれば、前進を遂げる前に厳しい状況に陥ってしまいかねない。

横浜F・マリノスが直面するジレンマ

再び日本に目を向けたとすれば、Jリーグがいまや選手たちだけでなく監督にとってもステップアップの土台となるレベルの競争力に達したという事実は間違いなく喜ぶべきことだろう。ポステコグルー監督がセルティックで結果を残せばJリーグの地位も向上し、売出し中の外国人指導者が自らの評価を積み上げるための選択肢としてJリーグ行きを考慮する例もおそらく増えると予想される。

一方で、マリノスは当然ながらジレンマに直面することになる。彼らが失うのは、クラブに成功をもたらし、Jリーグのトップクラブのひとつという立場を取り戻させてくれただけでなく、特徴的で効果的で見応えあるプレースタイルを植え付けてチームの姿を再定義してくれた監督だ。シティ・フットボール・グループは、傘下の全クラブに共通する哲学の適用を望んでいる。この関与を考えれば、同様の方向性を持った後任を連れてくることが見込まれるとしても、シーズン途中に準備期間もないまま監督交代を実行に移すのは簡単なことではない。

すでに日本で活動しており、攻撃的サッカーを信条とする指導者を早急に招へいすることもひとつの可能性かもしれない。アルビレックス新潟のアルベルト・プッチや、ポステコグルー監督の元アシスタントであり最近モンテディオ山形を率い始めたピーター・クラモフスキー、元川崎フロンターレ監督の風間八宏氏といった名前がすぐに頭に浮かぶ。あるいはもう少し時間をかけ、広範なスカウティング網を活用して、日本では聞いたことがないような誰かを海外から連れてくるのだろうか。

いずれにしてもポステコグルー監督を失うことはマリノスとJリーグ全体にとって大きな痛手ではあるが、彼自身が自らの仕事についてよく使う表現を借りるとすれば、彼の旅路の次のステージがどのようなものになるのかは非常に楽しみだ。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

ショーン・キャロル

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