「切れ痔になっちゃったのかなと思い込んでた」19歳で潰瘍性大腸炎、10回の手術をした30歳マンガ家が“大腸全摘”するまで

「切れ痔になっちゃったのかなと思い込んでた」19歳で潰瘍性大腸炎、10回の手術をした30歳マンガ家が“大腸全摘”するまで

  • 文春オンライン
  • 更新日:2022/06/23

19歳で指定難病の潰瘍性大腸炎に罹り、その闘病記をギャグマンガ『腸よ鼻よ』に描いている島袋全優さん。20回以上の入院、10回もの手術を乗り越え、マンガを描き続ける島袋さんに、大腸を全摘出するまでの経緯や葛藤、ストレス発散法について聞きました。(全2回の1回目。後編を読む)

【マンガ】『腸よ鼻よ』を読む

◆◆◆

「私も切れ痔になっちゃったのかな」と思い込んでいた

──潰瘍性大腸炎と診断された時のことを教えてください。

島袋全優さん(以下、島袋) 最初は「腸炎」と診断され、下痢止めを処方されて飲んでいたんです。でも一向に治らないので入院になり、さらに入院後もどんどん症状が悪化していくので、「腸炎じゃないのかもしれない」と内視鏡検査を受けることになって、そこでようやく「潰瘍性大腸炎」と診断されました。

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デーモン閣下ばりの白塗りメイクをほどこした島袋全優さん。後ろに見えるのは「龍が如く」のスカーフ

──自覚症状は、どのくらい前からあったのですか?

島袋 もともとお腹をこわしやすい体質で、揚げ物など脂っこいものをたくさん食べると腹痛や下痢を起こしていたんです。だから3週間以上下痢が続いても「またか」という感じで、あまり気にしていませんでした。

しかも毎回トイレが真っ赤になるような血便が出ていたんですけど、親戚に切れ痔の人がいて「便器が真っ赤になる」と話していたのを聞いたことがあったので、「私も切れ痔になっちゃったのかな」と勝手に思い込んでました。

でもさすがにトイレに行くたびに便器が血まみれになるのはおかしいんじゃないかと思うようになり、両親に相談して病院に行きました。

──潰瘍性大腸炎と診断された時は、どのようなお気持ちでしたか。

島袋 潰瘍性大腸炎って、厚生労働省が定める指定難病のひとつなんですよ。「難病」という言葉に両親が激しく動揺してしまったので、私は逆に冷静になれました。「総理大臣を辞任した安倍元首相の持病と同じ病気」と聞いて、「そうなんだ」と思ったくらいです。この時はまだどこか病気をなめていたところもあったので、「大丈夫だってば!」と両親を励ましたりもしていましたね。

あとからネットで調べてみたら、「治らない」と言っている人が多かったのでへこみましたが、「まあ、なんとかなるやろ。大丈夫、大丈夫」と、自分に言い聞かせていました。

食べたいものが食べられないのがきつかった

──潰瘍性大腸炎になっていちばんつらかったのは、どんなことでしたか?

島袋 私は、生きる上で食に重きをおいている人間なので、食べたいものが食べられなくなったのはきつかったですね。だから、入院して絶食中もグルメ雑誌を読んだり、持ち込んだパソコンで大食い動画を見たりして「食べたい」欲を満たしていました。友達や親からは「こんなに食べ物が好きなのに食べられない病気なんて……」と哀れまれましたが、私はむしろ「元気になって、これを食べるぞ」という執念で見ていたように思います。

──何が食べたかったですか?

島袋 ウチナー天ぷらです。私は沖縄出身なんですけど、沖縄って、おせち料理やお盆のオードブルに必ずウチナー天ぷらが入っているんですよ。子どもの頃から食べてきた料理が食べられなかったのはきつかったですね。

あと、うちは家族がみんなカツ丼好きで、何かあるとカツ丼を食べていたので、そのカツ丼が食べられなくなったのもきつかったです。

おいしいものが食べたかったら自分でつくるしかなかった

──大腸摘出手術の退院祝いでも、お父様がカツ丼をつくってくれていましたよね。単行本の扉絵で紹介されている「腸にやさしいレシピ」にも、「食べられない料理をなんとかして味わいたい」という島袋さんの執念を感じます。

島袋 大腸がまだあった時はかなり食事制限があったので、おいしいものが食べたかったら自分でつくるしかなかったんです。

父がコックだったせいか、私も料理は好きだったので、鶏ムネ肉に少し油を染みこませたパン粉をつけてオーブンで焼き、卵でとじて「鶏ムネ肉のカツ丼風」を作ったりして、それを扉絵で紹介させてもらっています。

でも扉絵を描いたあとで、さらに研究してもっとおいしくなっているので、本当はその改良レシピも紹介したいんですよ。同じ材料で同じ料理名なので、気づいていただけないかもしれませんが……。

潰瘍性大腸炎から逃れられるんだったら全摘してもいいかな

──大腸を摘出してしまえば、「潰瘍性大腸炎」ではなくなるので、食事制限はなくなります。大腸の全摘出を決意した背景には、そうした食事制限を克服したいという思いもありましたか?

島袋 もちろんそれもありますが、ネットで大腸を全摘出した人のブログや記事を読んだら症状が安定している人が多かったので、大丈夫かなと思ったんですよね。

それに潰瘍性大腸炎は、大腸がある限り再燃(症状が再び悪化すること)の可能性があります。実際、私は発症して3年近くの間に再燃で10回以上入退院を繰り返していたので、そんな生活から逃れられるんだったら全摘してもいいかなと、前向きに考えました。

ストーマ装着時の食生活

──でも、大腸を全摘出して「完治」とはならなかったんですよね……。

島袋 はい。私は大腸を全摘した後、小腸を使って一時的にストーマ(人工肛門)を造設したので、術後半年経って縫合不全がないことが確認できたら、ストーマを閉鎖して肛門からの排泄に戻して終了、となる予定でした。

でも、手術で肛門の縫合不全が起き、そこからバイ菌が入って難治性瘻孔(ろうこう)という、肛門から体の奥に向かって膿の袋みたいなのができてしまったんです。なので、一度閉じたストーマをまた造成することになってしまって……。それから5回、ストーマを閉じては再建手術をする、ということを繰り返し、いまはまたストーマの状態です。結局これまでに二十数回入院して、10回手術をしましたが、ここ3年は何とか入院せず過ごせています。

──ストーマ装着時は、食事や行動の制限はないんですか?

島袋 大腸を摘出したあとは、一応食事制限はなくなりました。でも、お酒を飲むと排液の量が増えてパウチが溶けて皮膚の炎症を起こしやすくなるので、お酒を飲み過ぎないでください、と言われています。

また、消化の悪い食品を一度に大量に食べるとストーマの出口で便がつまりやすくなったり、肉や豆類を大量に食べるとガスが出やすくなったりするので、バランスよく食べてください、という指導も受けています。

行動制限はとくにないですね。いまは体調も落ち着き、旅行にも行けるようになりました。

ストレスがたまってきたら寿司を食う

──ストレスも潰瘍の大敵です。ストレスをためないようにどんな工夫をされていますか?

島袋 病気とつきあっていくには、妥協が必要です。私は根がまじめすぎて、働けない自分が許せなかったんですが、友人や家族に支えてもらって、妥協した自分を「これでいいんだ」と肯定できるように意識を変えました。

ここ数年は、ストレスのゲージがたまりはじめてきたら、寿司を食うようにしています! 私にとっておいしいものを食べることは、コスパのいいストレス軽減方法なんです。いまはそれがとくに「寿司」になっていて、奮発してひとり5000円のお寿司を食べると、ストレスがす~っとなくなります。毎食だと破産しますけど、月に数回くらい、とってもおいしいものを贅沢に食べるって、いちばんコスパがいいストレス軽減方法じゃないかと私は思います。ひとりでもいいですけど、誰かを誘って食べるとさらにおいしく楽しめるので、おすすめです。

人工肛門か永久ストーマか、35歳までに決断

──いまはストーマをつけた状態で体調が安定していますが、いずれストーマは閉鎖する予定なんですよね。不安はありますか?

島袋 ストーマがあると旅行でも荷物が多くなるし、お金もすごくかかって不便は不便なので、チャンスがあるなら戻したいとは思っています。

でも、35歳までに人工肛門を閉鎖できなかったり、閉鎖することで悪化する可能性が高いと医師からのすすめがあったりした時は、永久ストーマに変えようとリミットを決めています。35歳を超えてくると、体力的に手術後の復帰に時間がかかると思うんですよね。最初は30歳まで、と思っていたんですけど、いま30歳でまだ元気バリバリなのでリミットを35歳に延長しました。

ストーマの金銭的負担

──お金のエピソードは作品でも描かれていましたが、切実ですよね。

島袋 そうですね。沖縄県では永久ストーマしか補助金がもらえないので、一時ストーマの私は全額自己負担できつかったです。今住んでいる県では、月額9000円までのパウチを現物支給してもらえるので、かなり助かっています。

私がいま使っているパウチは1枚1000円ちょっとするものなんですけど、もっと安いのにするとはがれやすかったり、皮膚がかぶれたりするので、妥協はできないんですよ。

しかも病院から「ストーマ使用証明書」を発行してもらわないと、ストーマが医療品ではなく、消耗品と見なされ、医療費控除が受けられなくなってしまうので死活問題です。

専門以外をかたくなに診ようとする病院やドクターは地雷

──マンガでは、能力に不安が残る「第一の担当医」のエピソードや、セカンドオピニオン(セカオピ)の重要性についても描かれています。

島袋 あくまで私の経験ですけど、専門医がいるかどうかを聞いたときに「いないけどここで診ます」と言われたら地雷の可能性があるので、セカオピをしたほうがいいと思います。普通の医者なら、自分の専門以外は専門医を紹介してくれます。人生で医者にブチ切れたのはあれが最初で最後でしたが、そんな経験が人様のお役に立てるならうれしいです。

セカオピについてや、高額医療の医療費助成について、詳しく知りたい方は『腸よ鼻よ』(https://ganma.jp/chohana)をお読みいただければ役に立つと思いますので、ぜひ買って読んでください(笑)。

「全摘後に見た大腸は、牧志公設市場で見た豚のと似ていた」 “20代は治療とマンガで終わった”ストーマ保有者がLINEで男性から送られた“ある写真”へ続く

(相澤 洋美)

相澤 洋美

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