レッドブル・ホンダの見立てを覆す走り。アルボンはスタッフからの信頼も厚い

レッドブル・ホンダの見立てを覆す走り。アルボンはスタッフからの信頼も厚い

  • Sportiva
  • 更新日:2020/09/16

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アレクサンダー・アルボンがついに表彰台を獲得した。

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3度のセーフティカー導入と、2度の赤旗中断。完走12台という大荒れのレースで、F1出走30戦目にして初めて表彰台に立った。

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初の表彰台を獲得したアレクサンダー・アルボン

「ここに立つことができて、とてもいい気分だよ。今日はタフなレースだったけど、僕らはこの結果を手にするために懸命に努力してきたから。とてもハッピーだ。やっとひと息つくことができるね」

驚異的な速さを持つチームメイトと比較されては批判される日々に耐えてきた。

今季のレッドブルRB16はマシン挙動が不安定で、突発的にグリップを失う問題を抱えてきた。

マックス・フェルスタッペンはなんとかそれをなだめすかして走ってきたが、アルボンはその問題のせいでマシンの限界まで攻めた走りができなかった。マシンの限界点が唐突に変わるのだから、それも当然だ。

しかしトスカーナGPが行なわれたムジェロでは、金曜からレッドブル・ホンダのマシンは仕上がりがよく、フェルスタッペンが3位、アルボンが4位につけていた。

「モンツァの時とは違って、僕らのクルマは走り始めから正しいウインドウに入っていた。金曜からマシンバランスがよかったし、ウイングレベルも適切だった。クルマに満足できなかったこれまでのレース週末と比べても、セットアップがうまくいったんだ」

トップに対して予選で0.365秒差と、今季最少のギャップまで迫ったフェルスタッペンは、マシンフィーリングのよさがポテンシャルを引き出すことにつながったと説明した。

そのフェルスタッペンは、スタート直後にパワーユニットに問題が発生して加速が鈍り、集団に飲み込まれた末に多重クラッシュに巻き込まれ、ふたつ目のコーナーでリタイアを余儀なくされた。

アルボンはフェラーリのシャルル・ルクレールにかわされて4位にとどまり、さらには再スタート時の多重クラッシュと赤旗中断後のリスタートとなって、7位まで後退してしまった。

「楽なレースじゃなかったよ。スタートでポジションを落とすと、これからのレースは厳しくなるなと感じるからね。でも、挽回できると疑ったことはなかった。スタートでふたつポジションを失ったところで、僕の闘争心に火が点いたんだ」

アルボンはそう振り返るが、そこで我を忘れなかった。むしろ冷静に、自分たちの強みを生かしてポジションを取り戻す方法を考え、レース全体を組み立てたのだ。

「自分たちに速さがあることはわかっていたから、あとはレース中に忍耐力をいかに切らさないようにして、オーバーテイクを焦って仕掛けないこと。そして、あとでオーバーテイクができるようにタイヤを残しておくことを心がけて走ったよ」

レースが残り13周で2度目の赤旗中断となって2度目のリスタートとなった時、前に立ちはだかったのはルノーのダニエル・リカルドだった。

彼らもチーム初表彰台がかかっていた。ルノーは空気抵抗が少ないぶん、最高速が伸びるクルマだ。オーバーテイクポイントが乏しいムジェロでは、追い抜きができるかどうかわからなかった。

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その一方でホンダは、フェルスタッペン車に起きたパワーユニットのトラブルがイタリアGPと同様に赤旗中断とスタート前後のオーバーヒートによって起きた可能性を抱えていた。そのため、アルボンの再スタートも不安を抱えながら見守るしかなかった。

ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。

「詳しいことはまだ調査中なのでわかりません。(イタリアGPと)似たようなところもあるんですが、原因はまったく違うものではないかと思っています。ただ、原因がはっきりと究明できていないので、スタンディングスタートの2回目は『もういい加減にしてよ!』って感じでした」

チームからはアルボンにパワーユニットの温度を上げないよう、フォーメーションラップの間はフルスロットルを極力避けるように指示を飛ばした。一方、アルボンは2度のスタンディングスタートでの経験から「リアタイヤのグリップが重要だ」と感じ、タイヤのウォームアップを懸念していた。

スタートを切ったアルボンは、なんとかレーシングポイントのセルジオ・ペレスを抑えて4位をキープ。そして50周目のターン1で、アウト側から大外刈りでリカルドをパスした。

これまで2度、アルボンは昨年のブラジルGPと今年の開幕戦オーストリアGPで、目前の表彰台を接触によって逃してきた。だが、今回はしっかりとオーバーテイクを決めた。最終コーナーとストレート前半のセクター3が速い自分たちの利点を生かした、冷静なオーバーテイクだった。

「ルノーはストレート車速が速いから簡単には捕まえられなかったけど、僕らのクルマはブレーキングが強かったので、(リカルドのタイヤがタレるのを待って)最後にターン1でアウト側に飛び込んだ。僕らのクルマは最終コーナーが速かったから、オーバーテイクポイントはターン1しかなかった」

追い抜きは容易ではないとチームでも見ていたが、前戦モンツァとは違って今回はダウンフォースを削り気味にセットアップしていた。それも功を奏した。

「ここまで来たら表彰台を獲ってくれ、という気持ちで見ていました。長丁場のレースのなか、タイヤのコンディションも含めてチームパッケージとしてパワー負けしなかった」(田辺テクニカルディレクター)

アルボンのドライビングが安定感を増してきたのと同時に、アルボンのドライビングスタイルのフィット感を向上させる作業も急ピッチで進められてきたという。レースエンジニアも経験豊富なサイモン・レニーに代えて、アルボンの感覚をより正確にマシン作りにつなげるよう努力している。

マシンに問題を抱えるなかで奮闘するアルボンを、クリスチャン・ホーナー代表は高く評価した。

「彼のフィードバックは非常に素晴らしいし、マシンを感じ取る繊細さも非常に優れている。エンジニアからの尊敬もしっかりと勝ち取っているので、今後はそういったことが彼にとって追い風になると思う」

今回の3位は、フェルスタッペンがリタイアしたために空いた座とも言える。予選でもフェルスタッペンに対してまだ0.45秒の差があり、完璧に状況を打破できたわけではない。

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2度の赤旗中断など荒れたレースとなったトスカーナGP

それでもホーナー代表は言う。この表彰台獲得がアルボンにとってひとつの転機になるだろうと。

「自分ができると思うことと、実際に自分ができることの間には、大きな違いがあるものだ。ただ、今日の表彰台は彼に大きな自信を与えるだろうし、自分に対する信念も強くしてくれるだろう。間違いなく彼は、ここからさらに強く成長していくよ」

米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

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