
岡山放送
岡山県内6ヵ所に不審な箱を置いたとして、威力業務妨害の罪に問われている、倉敷市福島の無職、弓場晴菜被告(21)。交通機関や行政を一時ストップさせた事件の初公判が、9月19日、岡山地方裁判所で開かれました。
髪はストレートで、肩にかかるほどの髪の長さ。白いシャツに黒いパンツ姿の弓場被告は、「間違いないです」と起訴内容を認めました。
起訴状などによりますと、弓場被告は2023年6月19日、何者かと共謀し、JR岡山駅や岡山県庁など県内6カ所に脅迫文付きの段ボール箱を置き、職員などの業務を妨害したとされています。指示役は依然、捕まっていません。
(弓場晴菜被告)
「たくさんの人に迷惑をかける行動だった」
(裁判官)
「犯罪行為だと知っていた?」
(弓場晴菜被告)
「当時はいけないと思っていたが、やりとりをしていた相手に、大丈夫と言われ信じていた」
(裁判官)
「大丈夫とは?」
(弓場晴菜被告)
「捕まるリスクがない。当時はお金がほしかったがために、捕まらなければいいと思っていた。今は思っていない」
検察側の冒頭陳述によりますと、弓場被告は職場での人間関係の悩みから2022年5月にうつ病と診断され、翌月仕事を辞めました。その後、短期バイトや配送業などで働いたものの、どれも長続きせず、一方で年明けからホストクラブ通いが始まりました。
遊興費や携帯電話の支払い、車のローンの返済などで借金が約430万円に上った弓場被告は、スマホで「闇バイト 掲示板」と検索し、6月15日ごろ闇バイトに応募。通信アプリ「テレグラム」「セッション」で指示役と連絡を取るようになり、「運び」の仕事に手を出します。
(裁判官)
「薬物を運ぶのは抵抗があったと聞いたが?」
(弓場晴菜被告)
「今回は中身を知っていたので大丈夫だと思った。今はおいしい話はないと思っているし、悪いことをすれば必ず捕まると思っている。借金に困って母が入院し、金を稼ぐことができなくなった。相談しようにも迷惑を掛けられないと思い、自分でどうにかしようと思って事件を起こした」
(裁判官)
「会社を辞める前からローンの支払いがあった?」
(弓場晴菜被告)
「払っていこうと思っていた。仕事をして自分で稼いで返そうと思っていた」
(裁判官)
「うつ病と診断された」
(弓場晴菜被告)
「原因が(職場と)わかっているなら辞めたほうが良いと病院に言われた。信頼できる友達に相談し、両親にも話したが、原因を言ったら『理解できない』と言われた。うつ病を経験した人にしか分からず、理解してくれないとつらいから、相談しようにもできなかった」
(弓場晴菜被告)
「アルバイト先で出会った人に携帯の名義を貸した。(保証人になったが)携帯代を払ってもらえず、このままではいけないと思い、この時初めて闇金に手を出した。その前に相談しておけばよかった。相談しようと思っていたが、自分でなんとかしたいと思って闇バイトに応募した。犯罪行為だと分かっていたが、その時は、払ってもらえないとは思っていなかった」
(裁判官)
「今後は?」
(弓場晴菜被告)
「親と相談して、自分の出来ることと誠実に向き合っていく。人の役に立つ仕事やボランティアをしたい」
(裁判官)
「ずるはしない、できますか?」
(弓場晴菜被告)
「はい」
(裁判官)
「二度としませんか?」
(弓場晴菜被告)
「しません」
(裁判官)
「どうして相談ができなかった?」
(弓場晴菜被告)
「人に頼るのが苦手で、何でも自分で解決しようと思っていた。悩んだ時点で誰かに相談していれば、こんなことにはなっていなかった。自分自身が心の病気に向き合わないで、相手を信じてしまったせいでこんなことになった」
(裁判官)
「これからどうやって過ごしていく?」
(弓場晴菜被告)
「どうしようか迷ったときは、親や兄弟、信頼できる友達に相談して、納得できるまで話し合っていきたい」
裁判中は少し憔悴した様子で、下を向くことが多い印象だった弓場被告。出廷した母への思いを聞かれると、少し涙ぐんで答えました。
(弓場晴菜被告)
「たくさん迷惑をかけたのに自分のために出廷してくれたことに感謝している」
この日の証人尋問で母親は、「自分のやったこと、周りに迷惑をかけたことを謝罪して、忘れないで生きてほしい。娘を愛しているので、世界一だと思っているので、2人(の親)で育てていく」と述べていました。
裁判は即日結審し、検察側は「犯行は闇バイトの報酬に目がくらんだ身勝手かつ短絡的なもので、業務妨害の程度や社会的な反響は非常に大きい」などとして、懲役1年6カ月を求刑しました。
一方弁護側は、「被告は反省し、再犯の恐れはない」として、執行猶予付きの判決を求めました。
判決は10月5日に言い渡されます。