ヘラルボニーが彩る JR東京駅「アップサイクルアートミュージアム」の全貌

ヘラルボニーが彩る JR東京駅「アップサイクルアートミュージアム」の全貌

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/11/23
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知的障害のあるアーティストによる作品のプロダクト化を手がける実験ユニット「ヘラルボニー」(本社:岩手県花巻市、社長:松田崇弥)の躍進が止まらない。

もともと「全日本仮囲いアートミュージアム」と銘打って、全国の建設現場の仮囲いをアート作品で彩ってきた彼らが、その展示作品の付加価値をさらに生み出すために、アップサイクルの手法を取り入れ、新たな取り組みを始めている。

その名も「アップサイクルアートミュージアム」だ。12月2日まで、JR東京駅のグランルーフ地下1階通路で色鮮やかなアート作品を展示している。駅での展示期間が終わると、その作品は洗浄された後、トートバッグへと生まれ変わるのだ。現地でQRコードをかざすと、鑑賞しながら購入できるほか、オンライン販売も行う。

トートバッグの素材は、ポリエステル製の布を軟質の合成樹脂で挟んだビニール「ターポリン」を採用。持ち手は天然皮革だ。バッグは全9種類で、東京駅丸の内駅舎のマークが刻印された本企画限定のもの。27500円(税込)で2021年3月以降、順次発送される。

駅 x アート作品の相性は抜群

今回の取り組みは、ヘラルボニーとともに、東京駅周辺エリアの商業施設開発や空間プロデュースを行う「鉄道会館」、東京駅とベンチャー企業の架け橋となる「JR東日本スタートアップ」がタッグを組み、実現した。

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鉄道会館社長の平野邦彦(左)とJR東日本スタートアップ社長柴田裕 =編集部撮影

これまでも、JR東日本スタートアップ社長の柴田裕とともに、吉祥寺駅で地域の障害のある人たちのアートで彩るラッピングなどを手がけてきた。今年8月には高輪ゲートウェイ駅で仮囲いアートの展示を行ったが、鉄道会館の社長平野邦彦が、この展示をたまたま見かけてすぐに柴田に声をかけたという。平野はこんな思いを口にした。

「高輪ゲートウェイ駅に家族で行った時、綺麗なものがあったので近寄ってみたんです。そこでこのプロジェクトが障がい者の支援にもなることを知り、提案しました。綺麗に仕上がってますし、温かく、非常に良い空間になったかなと思います。東京駅は東京から地方へ、地方から東京へ、とあらゆる方がクロスする場所です。そんな場所にふさわしいプロジェクトだと思います」

JR東日本スタートアップの柴田も熱っぽくこう語った。

「駅と鉄道 x アートって、実はめちゃくちゃ相性が良いと思っています。人が行き交う東京駅が彩られ、ここまできたかというのが感想です。障がいが障がいでない世界を東京駅から発信し、新しい社会が生まれることを願っています」

ところで、このアート、何がすごいのだろうか。

ヘラルボニーは、全国20以上の福祉施設の障がいをもつ人たちのアート作品2000点以上とライセンス契約を結び、商品化などの二次利用を行っている。

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松田崇弥(中心)とアーティストの高田祐(右)=編集部撮影

ヘラルボニーアートの強み 「強烈な異彩」を採用

アーティストやアートワークの選定などのクリエイティブは社長の松田崇弥を中心に行っている。

彼は東北芸術工科大学を卒業後、小山薫堂率いるブランドデザイン事業を行う「オレンジ・アンド・パートナーズ」にて経験を積んだクリエイティブのプロだ。ヘラルボニーの目利き役となっているのだ。

「毎月のように作家さんとの契約が増えていますが、あくまで素敵だなと思う出会いがあったら契約させて頂くというスタンスをとっています。強烈なこだわりが素敵だな、と思える人と取り組んでいます」

障がい者の作品だからといって採用するのではない。知的障がいをもつ人が放つ「強烈な異彩」を感じたものを採用する。以前、Forbes JAPANの取材で、ヘラルボニーで扱うアートの特徴として、ルーティンを得意とする障がいの特性から、アートワークにもその規則性が現れ「繰り返しのデザイン」が生み出されていると、松田は答えている。その点から、緻密かつ、大胆なアートが生み出されているのだろう。

障がいがあるからこそ描ける世界観は、私たちに驚きや喜びを与えてくれる。

その一例を紹介したい。あなたは、この作品を見て何を感じるだろうか。また、何が描かれていると思うだろうか。

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高田祐「迷路」=ヘラルボニー

松田が、この作品を手がけたNPO法人自然生クラブ(茨城県つくば市)のアーティスト高田祐に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「黄色、赤、青、ピンク、緑の絵を描きました。シンデレラ城で時計が鳴りました。自分の作品が東京駅で見てもらえてうれしい」

実は高田は、大のディズニーランド好き。シンデレラ城の時計の鐘が鳴った時の喜びを表しているのだろうか。一際目を引く赤地の背景に、いくつもの四角が重なり合い、インパクトを与える。松田が「非常にコンセプチュアルな作品ですね」と向けると、高田は満足そうに笑っているようだった。

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自身の作品が紹介され、笑みを浮かべる高田祐 =ヘラルボニー

上の写真の高田が座る背景にあるのは、小林覚の「数字」という作品。彼はある時から文字をすべて繋げて書くようになった個性を生かして、0から9までさまざまな数字を組み合わせてキャンバス全体に絵を描いている。このほかにも、それぞれの作品の物語に思いを馳せながら鑑賞するのも楽しい。

現在、JR東京駅のほかでも、名古屋のテレビ塔周辺でリニューアルされた公園「ヒサヤオオドオリパーク」の一角で、12月27日まで「サステナブル・ミュージアム」を開催しており、ヘラルボニーは、その名を全国区へと広めている。松田はこんな思いを口にした。

「障がい者、というワードが『欠落』といったイメージで語られることを打破したいと思っています。先日、名古屋の展示会場で『障がい者が描いてるのになんでこんなにグッズが高いの?』という言葉を受けました。障がいがある=安いというイメージがまだまだ根付いていることを実感した出来事です。『知的障害のある作家が描いてるからこそ高いんだね』と言われるような世界観で、社会を変えていきたいと思っています」

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高田南「風のロンド」=ヘラルボニー

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土屋康一「無題(葉っぱ)」=ヘラルボニー

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八重樫季良「(無題)」=ヘラルボニー

着実にこれまでとは違う世界を描き始めているヘラルボニー。2021年には、とある空港でのアートの展開や百貨店への出展なども進めているという。

福祉支援にとどまらず、強烈なアートを世に送り出しているから素晴らしい、と言われる未来へ向けて。彼らの挑戦は続く。

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