ピックアップ実は大人気!? ハイラックスの大成功に他メーカーが追従しないナゼ

ピックアップ実は大人気!? ハイラックスの大成功に他メーカーが追従しないナゼ

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  • 更新日:2022/05/14
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今ハイラックスが超熱い!! 2017年に日本市場を復活してからというもの、堅調なセールスを記録中なのだ。今やGRモデルもラインアップするなど選択肢が多いのも魅力だ。

ハイラックは東南アジアでも大ヒットしているのだが、実は現地では三菱や日産、いすゞなど国産メーカーも爆裂ヒットを記録しているのだ。そこで疑問なのが、なぜほかのモデルが日本市場に上陸しないのか? という点だ。SUVブームの後押しもアリ、いまこそチャンスな気もするが果たして。

文:工藤貴宏/写真:トヨタ・日産・三菱・いすゞ・フォード・GM/出典:car and driver・marklines

N-BOX以上の売れ行き!! アメリカに続きタイもピックアップトラックが国民車レベル

日本の常識が世界の常識とは限らない。いや、むしろそうではないことのほうが多いだろう。クルマ関連だって、日本人からすれば初めて聞いた人は「本当に!? うそでしょ?」と耳を疑うようなことだってひとつやふたつではないのだ。

たとえば販売ランキングナンバーワンのクルマも、国によっては日本人の意表をついてくる。アメリカ合衆国でもっとも売れているクルマがピックアップトラックだと聞いて、驚かない人はどのくらいいるだろうか。

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年間70万台以上という驚異的な台数を売り上げるフォードFシリーズ。ハイブリッドはもとより、2ドアなど豊富なラインアップも魅力

米国の「CAR AND DRIVER」のまとめによると2021年にアメリカ合衆国(以下アメリカ)で最も売れた車はフォード「Fシリーズ」で72万6400台、2番手がRAMピックアップで56万9388台、そして3番手がシボレー「シルバラード」で51万9774台も売れた。トラック以外のモデルで最も売れた車種はランキング4位となるトヨタ「RAV4」だが、その台数は40万7739台。最も売れたピックアップトラックは“もっとも売れた乗用車の1.8倍”も売れたことになるのだから、アメリカというのはとんでもないマーケットだ。ある意味、アメリカの国民車はSUVではなくピックアップトラックなのである。

実は、そんなアメリカと並んでピックアップトラックが高いシェアを持つ国がある。東南アジアのタイだ。タイでは2021年に66万8520台の車両が販売されたが、そのうち1トンクラスのピックアップトラック(トラックとシャシーを共用するSUVも含む)は35万691台と半分以上を占める(調査会社MarkLines調べ)。年間販売ランキングを見るといすゞ「D-MAX」が13万9232台と首位。2番手トヨタ「ハイラックス」で12万2669台、4位がフォード「レンジャー」、6位に三菱「トライトン」と販売ランキングのトップ10に4台もピックアップトラックが入っているのだから驚くばかりだ。

日本でもハイラックスがじわじわ増加中!! じつはハイエースより売れている!?

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2017年に国内復活を果たし、大ヒットとまではいかないが好調な販売台数をキープ!! とくにフロントフェイスの変更や先進安全装備の強化を施したマイチェンも追い風に

というわけで、ここからが本題である。タイで人気のピックトラップのうち日本で販売している車種はトヨタのハイラックス(タイからの輸入車)だけだ。かつて三菱がトライトンをタイから輸入していたこともあったが、現在は行われていない。「ハイラックスは堅調に売れているのに、どうしてほかのメーカーは続かないのでしょうか?」というのが編集部から今回与えられたお題である。

まずは、日本でのハイラックスの販売状況を見てみよう。

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2017年9月に導入し、右肩上がりに推移している。そして2022年3月までに3760台を売り上げるほど好調なのだ!!

日本仕様が発売されたのは2017年の9月。スタートダッシュこそ鈍いが、2018年以降は販売台数を大きく落とすことなく堅調に売れていることがわかる。

注目すべきは2021年だ、前年の1.5倍以上となる9960台を販売している。1ナンバーで商用車扱いとなっていることで国産車の新車販売ランキングには含まれないが、もしランキングに入れるのであれば三菱「エクリプスクロス」(8882台)、日産「マーチ」(8819台)、トヨタ「ハイエースワゴン」(8547台※バンは含まず)、ホンダ「シビック」(8520台)よりもラインキング上位となる。

そして2022年は、3月までのデータでは2021年を超えるペースで売れているのだから、これまた驚きだ。2020年8月にはマイナーチェンジを実施してエクステリアデザインとエンジン&サスペンションの改良が施され、2021年10月にはGR SPORTモデルが追加されたことが人気を押し上げたに違いない。

こうして販売台数をチェックしてみると、日本市場においては“バカ売れではないが、ニッチ商品としては地道に売れている”ということがわかる。これだけ販売できれば、日本導入が失敗ということはないだろう。トヨタは2020年8月のマイナーチェンジ時に月間目標台数を400台としていたが、それを大きく上回る実績となっている。

国内再参入は不可能に近いいすゞ……タイでバカ売れも販売網の再構築が非現実的

では、どうして他メーカーはトヨタに続かないのか?

まずピックアップトラックの聖地と言えるタイでマーケットリーダーに君臨するいすゞだが、日本でD-MAXを販売しない理由をひとことでいえば「個人に向けた乗用車販売の土台がない」からだ。

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タイで絶大な支持を得ているいすゞD-MAX。アジアクロスカントリーラリーで活躍していることからも、現地ではブランドが確立しているのだ

同社はかつて「ビッグホーン」などSUVだけでなく「ジェミニ」などのセダン、そして「ロデオ」といったピックアックトラックを日本でも販売していたが、2002年をもって日本国内での扱いを終了。現在は個人向けの販売ネットワークを持ってない。すなわち個人向けに車両を販売する手段がないのだ。「バスやトラックを販売する拠点で扱えばいいではないか…」と思うかもしれないが、それでは日本導入を収益化できるほどの販売量は見込めないだろう。

マツダの「BT-50」は同社らしく滑らかなデザインが特徴だ。しかし、マツダといえば「ブランドイメージの構築にふさわしくない。ミニバンではマツダを体現するデザインを実現できない」という理由で「プレマシー」や「MPV」を廃止してミニバンから足を洗ったメーカーである。そんなブランド戦略からも、日本においてピックアップトラックを展開するという選択はないだろう。

余談だが、かつてのBT-50は資本関係が強かったフォードの「レンジャー」とメカニズムを共用していたが、現行モデルはいすゞD-MAXの兄弟車となっている。

日産は選択と集中!! 国内は電動化が先決

かつて「ダットサントラック」だった日産のピックアップトラックは、その後「フロンティア」と改名され、現在は「ナバラ」と進化している。日本にはどうして持ってこないのか?

結論から言えば、効率のいい商売を見込めないからだ。日産の国内販売ラインナップは、ひとことでいえば“選択と集中”。昨今の売れ筋ジャンルであるSUVですら、海外市場では多様な車種があるにもかかわらずEVを除けば「エクストレイル」と「キックス」のみとしていることからもわかるように、売れる車種に絞って集中することで効率よく商売を進めるのが日産の手法なのだ。

そんな同社にとって「多くの販売台数を見込めないピックアップトラックを日本でも展開する」という選択肢など、あるわけがない。

タイで大ヒットのトライトン再販はほぼなし…過去の失敗がアダに

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これまたタイを中心に東南アジアや豪州で大人気の三菱トライトン。日本でも人気になりそうな見た目だが……

2006年から2011年にかけてトライトンを販売していた三菱が、その後に続かなかったのは率直にいえばその導入が失敗体験となってしまったからだ。当初に輸入したロットと第2弾の数百台はあっという間に売れたが、その後追加輸入した車両は販売に苦戦。国内販売台数は1800台ほどに留まった(とはいえ当初の目標台数はクリアしたのだが)。

最終的には売れ残った車両を不良在庫として抱えたことがトラウマとなり、三菱は新たなるピックアップトラックの国内展開には及び腰となっている。

販売台数が読めないゆえライバルが追従せず

いずれにせよ、最大の理由はハイラックスほどの販売ボリュームを見込めないことにある。「海外で生産しているのだから販売台数が少なくても採算を取れるのでは?」と思うかもしれないが、それは大きな間違いだ。日本仕様の開発、型式認定や取扱説明書および販売資料の制作といった日本で売るための準備、そして販売後に長期にわたって必要となる補修部品の用意などには多額の費用が掛かる。ある程度の販売台数がないと採算が取れないのだ。並行輸入ではなくメーカー自身が正規輸入するにはそこがネックとなる。

最後にトリビアだがハイラックスの由来は、動物のハイラックスとは全く関係がないことをご存じだろうか。そもそも英文字の綴りをみると動物が「HYRAX」なのに対して、トヨタのトラックは「HILUX」と異なるのだ。トヨタは「『ハイラックス』は、英語の『Hi(高級な、より優れた)』と『Luxury(ラグジュアリー、贅沢な、豪華な)』からの造語」と説明する。そんなハイラックスが日本で成功した理由は、ピックアップトラックに対して「作業車ではなくアクティブにレジャーを楽しむクルマ」というニーズを上手に開拓したことだ。

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