「新型レヴォーグ2.4L」乗ってわかった鋭い実力

「新型レヴォーグ2.4L」乗ってわかった鋭い実力

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2021/11/25
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スバルの主力ステーションワゴン「レヴォーグ」が年次改良を受け、生まれ変わった。従来型との違いとは……?(筆者撮影)

スバルの主力ステーションワゴン「レヴォーグ」が年次改良を受け、通称「Bタイプ」に生まれ変わった。最大の変更点は、新たに水平対向4気筒2.4L直噴ターボエンジンが加わったことだ。従来型の初代レヴォーグには水平対向4気筒2.0L直噴ターボモデルがあったが、2.4Lはそれに代わるモデルだ。

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なお、年次改良前のAタイプには水平対向4気筒1.8L直噴ターボが搭載されていたが、こちらはBタイプでも併売される。

新しい2.4Lは「STI Sport」と「STI Sport EX」の上位機種にあたりグレード名は「STI Sport R」と「STI Sport R EX」を名乗る。1.8Lから出力(177PS→275PS)、トルク(30.6kgf・m→38.2kgf・m)とも大幅に向上させ、同時にガソリン種類も変わり1.8Lのレギュラー仕様に対し2.4Lはハイオク仕様に改められた。

トランスミッションは従来通りCVT。スバルは一般的なベルト方式ではなくチェーン方式を採用しトランスミッションの小型化を図りつつ、高出力/高トルクにも対応する。

70km/hからの加速が素早く

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レヴォーグの改良モデルと同じ2.4Lエンジンを積むセダンの「WRX S4」(筆者撮影)

2.4Lでは、1.8Lが搭載するリニアトロニックのファイナルギヤを約14%ローギヤード化し、専用の制御ロジックを組み込んだ「Subaru Performance Transmission」へと進化させた。

これにより、70㎞/hからの加速が素早くなった。具体的には、加速度が0.5に達するまでの時間が、従来型の初代レヴォーグが搭載していた2.0Lターボモデル(300PS/40.8kgf・m)よりも約30%早まったという。

1.8LのCVTと同様に2.4LのCVTにも手動でギヤレシオを移行(≒変速)させるマニュアルモード(8速)が備わるが、2.4Lではその変速制御を早期化し、シフトアップ方向で最大30%、シフトダウン方向で最大50%の短縮を実現した。

これにより、素早い変速で知られるDCT(デュアルクラッチトランスミッション/有段ギヤ方式)と同等(0.2秒程度)の変速が行えるようになった。

進化型CVTを組み合わせたメリットは試乗してすぐに体感できた。1.8LのCVTも遅れは少なかったが、2.4Lではほとんど遅れがなくなってアクセル操作に対し従順に反応する。また、カーブ手前の減速時には手にした素早い変速により、リズミカルな運転操作をアシストしてくれる。

さらにカーブ途中、車体に強い横方向の加速度(身体がカーブの外に持って行かれる遠心力)が加わると、現状のギヤ段を維持する機構も備わる。また、微妙なアクセルペダルの戻し操作にまでしっかり反応してくれるので、これまで以上に速度調整が容易に行える。

今回はサーキットという限られた道路環境での試乗だが、CVTの進化は人の操作に対する応答遅れの改善に直結するため、走行速度が限られる一般道路の山道でも効果は十分に体感できるはずだ。

肝心の2.4Lエンジンはどうか? 低~高回転域(2000~4800回転)まで最大トルクを発揮する特性と、アクセル操作に忠実なSubaru Performance Transmissionとの組み合わせは、まさにステーションワゴンの見本といえる。

その理由は、ステーションワゴンが求める低回転域からの豊かなトルク特性と、それを活かす専用のCVTにより応答遅れのない走りが実感できるからだ。

速度は出力、加速力はトルクがそれぞれ決定づけるが、ラゲッジルームに荷物を積み込み、さらに多人数が乗車したわかりやすく車両に負荷のかかる運転状況では、トルク値が大きいほど運転操作が楽になる。

低~中回転域のトルク特性に優れるディーゼルエンジンが運転しやすいと言われるのは、ドライバーのアクセルペダル操作に対してじんわり、そして力強く反応してくれるからだ。そしてこの2.4Lも同じく力強く、ガソリンエンジンであることから高回転域まで滑らかに速度をのせていく。

1.8Lよりも二回りほど全域で力強い

最高出力の275PSは5600回転で発生するが、そこを超えて6000回転までスムースに回転を上昇させる。よって、5000回転以上で回転の勢いが落ち始める1.8Lよりも二回りほど全域で力強い。

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エンジンルーム(筆者撮影)

ちなみに、荷物を積載した多人数乗車の傾向が強いといえばSUVやミニバンも同じ。北米市場に導入されているスバルの3列シートSUV「アセント」にもこの2.4Lターボが搭載されている。未試乗ながら、おそらく相性は良いはずだ。

サーキットでの走りはどうか? スバルによれば、足回りは基本的に1.8LモデルのSTI SportとSTI Sport EXと同様とのこと。2代目レヴォーグの登場時(2020年)、同じサーキットで1.8Lの試乗を行っているが確かに違いはない。

ただ、4輪駆動方式には違いが設けられた。1.8Lの「アクティブトルクスプリットAWD」(基本の前後駆動配分が前60:後40)に対して、2.4Lでは前後の駆動力分配が緻密に行える「VTD-AWD」(同45:55)に変更され、より高い直進安定性とカーブでの積極的な挙動変化を両立させた。筆者の経験則では、滑りやすい路面での安定性もVTD-AWDが優位だ。

1.8L同様に、電動ブレーキブースターを採用したブレーキによる制動力も頼もしい。さらに踏み込んだペダルをゆっくり戻していくと、どこかでスッと抜けることなく、操作に沿って忠実に制動力が弱まるから、速度調整がスムースに行える。こうした扱いやすく、そして素早く確実に立ち上がる制動力は、衝突被害軽減ブレーキをはじめとした先進安全技術「アイサイトX」の性能向上にも大いに役立つ。

かつてWRXのカタログ(2004年)には表紙を開くと、左ページ一面に大きく前輪ブレーキ(ディスクとキャリパー部分)の写真が掲載されていた。傍らに「速いクルマほど、よく止まる扱いやすいブレーキが大切である」という主旨の説明文があったが、スバルはWRCをはじめとした数々のレースシーンから、その重要性を深く理解していたメーカーのひとつだ。

それにしても2.4Lは加速力が強くて、当然ながら速度のノリが良い。またカーブではより高い速度で通過できることからボディへの負荷は確実に増えている。にもかかわらず、1.8Lで感じた落ち着いた車両挙動は2.4Lとなっても変わらない。その点を開発担当者に聞いてみた。

「ワゴンボディは後半部の開口面積が大きくなるため剛性面では不利な傾向です。レヴォーグではフルインナーフレーム構造として剛性を確保しつつ、サスペンションの取り付け剛性を高めました。また、当初からかなり余裕をもったスペックで設計しています」とのこと。

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リアスタイル(筆者撮影)

なるほど、当初から2.4Lのハイパワー/ハイトルクを見越したボディ設計が施されていたわけで、どうりで1.8Lの試乗時に感じたシャーシやボディ(いわゆる骨格)のゆとりが大きく、安心感が高かったわけだ。

2.4Lエンジンは新型「WRX S4」にも搭載

ところで、この2.4Lはレヴォーグへの搭載と同時期に新型「WRX S4」にも搭載された。出力やトルク、そしてトランスミッションにしてもすべて同じだが、筆者はレヴォーグとの組み合わせがベターだと感じた。

ならば、純粋に走りを楽しむために生まれた新型WRX S4と2.4Lの組み合わせはナシなのかといえば、そんなことはない。

スバルには名機「EJ20型」がある。数々のスバル車に搭載され、歴代WRXのエンジンとしても活躍した。高回転域で炸裂するパワーと痛快な回転フィールは、レースシーンのみならず世界中のユーザーを魅了した。

かくいう筆者も、かつてEJ20型を搭載した「インプレッサS203」(6速MT)オーナーの一人だった。

アクセルペダルを操作する右足がつるほどのエコラン(低燃費走行)に徹しても10.0㎞/Lの大台に乗せるのがやっとだったが、いかにもリッチに燃焼してますと言わんばかりに高回転では力強かった。ピストンをはじめ各部のバランス取りを行った専用エンジンが織りなす緻密な出力特性や、チタンマフラーからの咆哮は素晴らしいの一言だった。

「年々厳しさを増す環境問題への対応はとても難しく、われわれは市販車へのEJ20型の搭載を終了しました。この先、スポーツモデルの継続販売にはこれまでにない知恵と努力が必要ですが、スバルはあきらめません!」

こう断言するのは、WRX S4やレヴォーグの開発責任者である五島賢氏(スバル)だ。

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WRX S4やレヴォーグの開発責任者である五島賢氏(筆者撮影)

五島氏は今回、WRXが魅了し続けてきた痛快な走りと、ステーションワゴンに求められるゆとりの走り。これを2.4Lの豊かなトルクと、新たなCVTで表現した。

確かに、カタログ上の燃費数値だけを切り取って環境性能の善し悪しを判断するのであれば、2.4Lは1.8Lよりも確実に劣る。ただ、トルクを活かした走りは、高速道路を使った長距離移動の際など、思いのほか燃費数値にも好影響を及ぼす。これも事実だ。

水と油に思えるスポーツカーとステーションワゴンのパワーユニット。だが、スバルはかねてこうした組み合わせにチャレンジしてきた。

新型レヴォーグ2.4Lは現代版GT-Bだ!

今や販売車種が限られるステーションワゴンだが、1990年代の爆発的なブームを知る読者も多いことだろう。1989年に登場した初代「レガシィ・ツーリングワゴン」は当時流行の兆しをみせたアウトドアブームに乗り、ステーションワゴンの認知度を一気に押し上げた。

続く2代目では、280PS(ツインターボ仕様のEJ20型)にビルシュタインダンパーを組み合わせたスポーツグレード「GT-B」が大いに支持された。同じくEJ20型(シングルターボ仕様)を搭載する「インプレッサ・スポーツワゴン」に続くスポーツワゴンとして擁立したことで、その後のスバルの立ち位置を明確にした。

レヴォーグの2.4Lエンジン搭載モデルであるSTI Sport RとSTI Sport R EXは、そのスポーツ性だけを切り取れば現代版GT-Bとも言える。

またこの2.4Lエンジンは、時代が求める厳しい環境性能に配慮しながら、スポーツモデル(WRX S4)でもステーションワゴン(レヴォーグ)でも、そしてSUV(北米市場のアセント)としても成立するマルチな性能を持つパワーユニットとして生み出された。次なるは水平対向エンジンと電動化の組み合わせだ。スバルがどう立ち向かうのか見守っていきたい。

(西村 直人:交通コメンテーター)

西村 直人

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