現役時代に13億を稼いだ元プロ野球選手、「お金」へのこだわり

現役時代に13億を稼いだ元プロ野球選手、「お金」へのこだわり

  • JBpress
  • 更新日:2022/01/15
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第一回WBC、北京五輪など日本代表としても活躍した里崎智也(写真:アフロ)

プロ野球、オフシーズンの風物詩「契約更改」は、そのほとんどが終わった。野球選手にとって、年俸は評価と一体であり多くの注目を集めるが、選手がそれを公に口にすることは多くない。

そんな中で、「お金が大事だ」と言い切る元プロ野球選手がいる。2006年のワールドベースボールクラシックで正捕手として「世界一」を支え、その名を知らしめた里崎智也だ。

里崎はいま、野球界で屈指の人気を誇る「YouTubeチャンネル」を運営することでも注目を集める。そんな里崎のユニークな「思考法」をまとめた一冊が面白い。スポーツライターの田口元義氏が紹介する。

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「早く試合に出られるチーム」を選ぶ

人生で最も大切なものは何か?

元プロ野球選手の里崎智也氏は新著『シンプル思考』(集英社新書)で、「お金」だと潔く綴っている。

“世の中、「お金」に対して肯定的に捉えている人ばかりではありません。「金を稼げればそれでいいのか」「お金よりも大事なものがある」。たしかにそうです。そういった概念をひっくるめて、僕にとってはお金が一番大事。ある程度のものが買える。生活が保障される。すなわち、より多くの不幸を回避できることとなります”

里崎氏は千葉ロッテマリーンズの選手として16年間プレー。新刊ではその間に稼いだ額は約13億円であると本書で公表している。現在ではスポーツ紙での評論、プロ野球中継の解説に、チャンネル登録者数約50万人のユーチューバーとしても活動。

プロ野球選手という肩書きだけで生きていけない時代に、セカンドキャリアでも成功を収めらた理由。里崎氏の思考にこそ大きなヒントであると気づかせてくれる。

本書のタイトルでもあるように、里崎氏は「物事をシンプルに考えたほうがいい」と読者に助言し、自らの実体験を惜しげもなく伝えてくれている。なかでも興味深いのがロッテに入団した経緯だ。

里崎氏がプロ野球選手となった1998年当時は、有望選手が自由に行きたい球団を決められる「逆指名」制度があった(1球団あたり2名まで)。

その契約には球団と選手が相思相愛であることが前提ではあるが、氏が読売ジャイアンツ(巨人)や阪神タイガースといった人気チームではなくロッテを選んだのは、「早く試合に出られるから」。

すなわち、お金を稼げる可能性が高かったからだ。

所属していた帝京大学の監督から「プロ野球は夢でもなければ憧れの世界でもない。ただの仕事だ。試合に出てなんぼだし、出なければ稼ぐこともできない」と助言を受けた里崎氏は、次のようにロッテを逆指名した背景を記している。

“僕にとって、それはすなわち「弱いチーム」でした。大学四年の一九九八年、十二球団で最も弱い球団はおそらくロッテでした。(中略)「ロッテ=弱い。だから、早く試合に出られる」。これが、決め手でした”

プロ5年目で主力選手となるが、そこに至るまでは「技術がないなら身に付けるために練習するのは当たり前」と、道程もシンプルに考えてきたと述べている。結果、7年目には「一流選手の証」とも言われる年俸1億円に到達。16年間で13億円を稼ぐまでの選手となり、現在では「慎ましく暮らしていけば、働かなくてもいいくらいの貯えがある」と明かす。

稼ぎが見込めると判断して弱小球団に入団し、自身が主力となるにとどまらずチーム2度の日本一を支えるなど成功を収めた。

そんな里崎氏ではあるが、引退した今、プロ野球OBならば誰もが狙う指導者の椅子にはまったく興味がないという。その理由を、

“給料が安いから”

と、一蹴し、根拠をこう綴った。

“プロ野球の指導者は、監督こそ実績や期待値を考慮され一億円を超える報酬を手にする人もいますが、コーチの相場はヘッドコーチで千五百万円から二千万円。他は八百万円から千五百万円です。当然、所得税を支払うため、手元に残る額はこれよりも少なくなります。一千万円以上の収入がある人は「高額所得者」と区分されるようなので、日本においては十分な稼ぎなのかもしれません。

考えてみてください。プロ野球の世界は指導者も個人事業主。会社員のようにこの金額が何年も保証されるのであれば安泰でしょうが、結果を残せなければ一年でクビを切られることだって珍しいことではありません。

(中略)指導者としてレギュラークラスの選手を何人育成しようとも、選手時代のように年俸が飛躍的にアップすることはない。これまで野球しか経験してこなかったため、「なれるならなりたい」と考える人が多い。でも、額はほぼ決まっている。この構図は変わっていません。成功報酬など待遇が明確化されているのであれば、僕も少しは「やってみたいな」と思うかもしれませんが、改善傾向がまったく見られないので面白みを感じられないんです”

里崎氏にとってプロ野球の指導者とはハイリスクローリターンでしかない。ならば、自分が楽しめる今の仕事で収入を増やしていったほうが豊かな生活を持続できる。これも、氏にとってのシンプル思考なのである。

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一貫しているのは、ストレートな考え方はもちろんのこと、里崎氏が「欲」を理解しているところだ。

現役時代なら野球、引退後なら解説やYouTubeと楽しめそうな物事には貪欲だが、無欲である物事もリアルに伝わってくる。衣服や食べ物への執着は人並み以下であると、自分でも認めているという。

人間とは、意識や自制しなければどうしても欲が溢れてくる生き物だ。里崎氏はそれを、こんな比喩を用いながら伝えている。

“引っ越しを想像してみてください。
家賃、築年数、駅からの距離、間取り、その他の設備……希望を挙げたらきりがありません。自分が住む物件を決めるときには、どこかを妥協していると思います。”

物件を決めたときに「妥協したな」と思うと、なんだか損した気分になりませんか? そんな感覚に襲われてしまうのは、多くを求めすぎているためです。「予算内の家賃ならばほかは我慢できる」と決めれば、築年数は古いかもしれないけど、駅から近く、広い部屋に住めるかもしれない。そう考えたほうが、幸せに暮らせると僕は思うんです

里崎氏は本書を通じて、「シンプルに考えることが成功への最短距離である」と教えてくれている。同時に、人間の欲望に警鐘を鳴らしているような側面も垣間見せる。

読者からすれば、痛いところを突かれる文面と多く出くわすかもしれない。ただ、不思議と読後感がすっきりする一冊である。

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『シンプル思考』(里崎智也・著/集英社新書)

田口 元義

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