世界と日本の「変革への熱量」に差が? オンライン開催されたダボス・アジェンダ

世界と日本の「変革への熱量」に差が? オンライン開催されたダボス・アジェンダ

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/02/22
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例年1月に開催されていた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(通称ダボス会議)は、コロナ禍により8月に延期されたが、その代替イベントとして、1月25日から29日にオンラインでの国際会議「ダボス・アジェンダ」が開かれた。

日本ではあまり報道されなかったが、ダボス・アジェンダではセッション数を絞り、次の7つの主要テーマを設け、活発な議論が交わされた。

1. How to Save the Planet
2. Fairer Economies
3. Tech for Good
4. Society & Future of Work
5. Better Business
6. Healthy Futures
7. Beyond Geopolitics

日本からは、菅義偉首相、河野太郎行政改革担当相、小泉進次郎環境相、竹中平蔵氏らが、それぞれ参加していたが、日本経済の成長戦略として、グリーンやデジタル、さらには東京オリンピック・パラリンピックの開催について発言をしていた。

世界のリーダーたちの力強いメッセージ
筆者はダボス・アジェンダに全日すべて参加したが、その際に感じた印象は、世界のリーダーたちと日本社会の「変革への意欲の差」だった。

例えば、世界のリーダーたちからは、コロナ危機を乗り越える、格差を早急に埋める、環境配慮型に全てのライフスタイルを移行する、気候変動リスクを気候危機として再認識する、次世代の声を積極的に聴く、ステークホルダー資本主義(昨年提唱されたWEFの新たなマニフェスト)を確立し新しい世界経済を創造するなど、未来志向の力強いメッセージを数多く聞くことができた。

なにより、発言者の信念や情熱からは、オンライン会議の画面を通じても伝わるくらいの圧倒的な熱量を感じた。

WEFは昨年6月から、「GREAT RESET(グレートリセット)」の名のもとに、さまざまなイニシアティブを展開している。リセットとは、過去を断ち切ること。すなわち、コロナ以前には戻らない、非連続な変化を必ずや生み出す、そんな強い意思と勇気が込められた言葉だ。

なぜ、そんなにも危機感をもって、WEFに集う世界のリーダーたちはリセットや変革を叫ぶのか。筆者が属するWEFのヤング・グローバルリーダー(YGL)の会合で、率直に聞いてみた。

「それは、国の強制力の差がもたらす、各国民の危機意識の差ではないか」と、英国や中国のYGLは語った。

「ロックダウン」とは都市封鎖を意味する。特に経済先進国は、コロナ禍に対応してすべからくロックダウンを行い、私権や自由を制限した。それには罰則もついていた。

あるYGL曰く、「居住するマンションの住民1人が新型コロナに罹患した際、当該マンションのみならず、隣接するマンションそして近所のスーパー、飲食店なども全て強制的に封鎖され、機能が停止し、1カ月強は部屋から一歩も外に出られなかった」という。行動監視と強烈な罰則があったため、従わざるを得ない状況だったようだ。

私は、それを聞いて、ハッとした。日本は、自粛を「要請」するという、ソフトロックダウンの政策で、コロナ禍と経済の両立を図ってきた。緊急事態宣言と言っても、スーパーへの買い出し、感染対策をしたうえでの飲食店の利用、在宅勤務は前提となりつつも出勤もできた。

2月3日に成立、公布された新型コロナ対策の改正特別措置法や改正感染症法では、営業時間短縮に応じない事業者や入院を拒否した感染者への行政罰は加えられたが、所謂ロックダウンの強制力とは比較にならないほど緩い。

ソフトロックダウンがもたらす弊害
民度や社会秩序水準を踏まえての、日本なりの強制力とも理解できるが、私は別の観点から危惧している。

それは、ソフトロックダウンがもたらす弊害だ。「泥縄だったけど、結果オーライだった」(「新型コロナ対応・民間臨時調査会 調査・検証報告書」)でやってきたこの1年。その間、新しい生活様式等を提唱し、日本版のグリーン・デジタルリカバリーを叫んではいる。

しかし、グレートリセットが意味する抜本的な社会変革を、日本は達成できないのではないかという懸念がある。理由は、コロナ禍での原体験がもたらす国民1人1人の危機感、危機意識、変革への意欲が、強力なロックダウンを体験した国の人々とは明らかに開きがあるからだ。

内閣府が、昨年11月6日に公表した年次経済財政報告のタイトルは、「─コロナ危機:日本経済変革のラストチャンス─」だ。しかし、「ラストチャンス」と認識している日本国民はどれだけいるのだろうか。新型コロナ対策と経済活動の両立を行えば行うほど、またいつか「元に戻ることができる」という楽観意識を国民に植え付けることにならないだろうか。

社会変革のための国家資源は、政治家や経済界など限られたセクターだけではない。彼らの国際競争力を念頭に置いた意識変革は当然必要だが、国民自身のマインドセット、すなわち「変わらなければ日本の将来はない」という危機感をどれだけ多くの国民が持ち、共有できるかどうかだ。

コロナ禍の原体験から生まれる未来創造への熱量、その日本と世界との差を痛感し、世界のトップリーダーたちの将来に向けた変革の意欲に圧倒されたダボス・アジェンダの1週間だった。

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