犬や猫の通院いらず! 獣医師が自宅にやって来る「往診専門の動物病院」とは

犬や猫の通院いらず! 獣医師が自宅にやって来る「往診専門の動物病院」とは

  • sippo
  • 更新日:2022/01/15

病院嫌いの愛犬や愛猫の通院に頭を悩ませる飼い主は少なくない。そんなストレスから解放されるサービスが、今後じわじわと広まっていきそうだ。

「ペットの家族化推進」を掲げ、多様なペットサービスを展開するTYLは今年5月、往診専門の獣医療サービスをスタートした。東京都内23区を中心に往診サービスを展開する『アニホック往診専門動物病院』(以下アニホック)の藤野洋先生に、往診サービスのメリットや利用者の反応、展望などを伺った。

(末尾に写真特集があります)

家で待つだけでOK

「往診専門動物病院」とはその名の通り、獣医師が利用者の自宅に向かい、自宅や往診車の中で獣医療を受けられるサービスのこと。全国的にもまだ珍しく、なじみの薄いサービスだが、飼い主とペットにさまざまなメリットがあると藤野先生は語る。

「まず大きいのが、飼い主さんの通院の手間を減らせることです。通院の場合、往復時間や順番待ちの時間、診察にかかる時間などをトータルすると、2〜3時間はかかってしまいますよね。さらに、お仕事が忙しい方は動物病院が空いている時間に通院すること自体難しいという声もある。往診サービスの場合は、診察までの時間のロスがなく、ただ家で待っているだけでいいので、忙しい飼い主さんにぴったりです」

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株式会社TYL取締役、アニホックグループ総獣医師長・藤野洋獣医師(アニホック提供)

もちろん、ペットの視点から見ても往診診察のメリットは大きい。

「寝たきりの子や、末期がんの子などのターミナルケアでは、通院による体力の消耗が心配されます。症状が軽い場合でも、通院や待合時間での動物たちの負担は大きい。犬同士であれば、他のワンちゃんが苦手な子がいますし、猫はそもそも家から出ることがストレスになりやすい動物です。そのほか、うさぎやハムスターなどの小動物も、待合で他の動物と同じ空間にいることが負担になります。往診サービスなら慣れ親しんだ自宅で診察ができるので、大切なペットが診察で感じるストレスを最小限に抑えられるんです」

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外出が苦手な猫も慣れた自宅で診察を受けることができる(アニホック提供)

獣医師の視点から見れば、往診サービスだからこそできる診察もある。

「獣医師が自分の目でペットの生活環境を見られるので、食事改善の指導がしやすいんです。例えば、『アレルギー食を与えているのに症状が治まらない』と言う方のおうちを見てみると、おやつがたくさん置いてあったりする。通常の診察ですと飼い主さんからの情報が全てなので、こうした“落とし穴”に気づきにくいんですよね。また、しつけにお困りの方なら、トイレやケージの配置を見ながら改善点を具体的に伝えることができます」

1件1時間、丁寧に診察

他人に家に入られることに抵抗がある飼い主の場合は、往診車での診察も可能だ。一口に往診サービスと言っても会社によって往診車の設備は異なる。藤野先生によると、アニホックの往診車では、レントゲンや外科手術以外のほとんどの処置が行える。

「診療設備を運ぶためには場所も費用も必要なので、一般的には往診車にここまでの設備を整えるのは難しいと思います。健康診断やワクチンはもちろん、緩和ケアもできるので、飼い主さんの多様なニーズに応えることができます」

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アニホックの往診車(アニホック提供)

アニホックの診療は予約制で、現在は都内23区を中心に、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県での往診サービスを行っている。 一般的な動物病院との料金の違いは、治療費の他に往診費用が税込み5,500円から発生することだ。

「通院時間や通院にかかるストレスとてんびんにかければ高くはないとおっしゃっていただけます。僕自身が担当している飼い主さんからは、『出かけないで済んで本当に良かった』という声をいただくことが多いですね。特に病院嫌いの猫ちゃんの通院は、飼い主も本人も大変ですから」

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往診車内でエコーをとる藤野先生と動物看護師(アニホック提供)

藤野先生の担当する飼い主は、ターミナルケアでの利用も多い。

「痛みの緩和ケアや介護ケアの場合、家から連れ出して通院することに悩まれている飼い主さんが非常に多いんです。『病院はかわいそう。だけどやっぱり治療してあげたい』という気持ちがある場合、往診サービスならペットの負担を減らすことができます。弊社では、予約1件につきおよそ1時間の往診時間を取っているので、混み合う動物病院よりも丁寧に診察できる。飼い主さんが治療に納得できると、亡くなった後も後悔がなく、ペットロスになられる方が少ないんです」

業界改善と医療の向上へ

アニホックが往診専門動物病院を始めたのには、ペットの生活環境の多様化に対応していくほか、獣医師たちの労働環境改善という目的もある。

「動物病院での仕事は、拘束時間が長く、重労働。特に、出産や子育てを計画している女性が働き続けるのは大変なことなんです。往診サービスであれば、産休から復帰した子育て中の女性も、子供が保育園に行っている間だけ、など自分の都合のいい予約時間に対応できます。キャリアがあって腕のいい先生に職場復帰してもらうことで、獣医療の質が上がり、ひいては日本のペットたちの健康につながる。往診専門動物病院はそんな大きな可能性を秘めているんです」

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「女性の飼い主さんが女性の獣医師を希望する場合、可能な限り対応する」と藤野先生(アニホック提供)

現在、アニホックでは獣医師のワーク・ライフ・バランスと雇用拡大の一歩として、藤野先生のほか、2人の女性獣医師が往診サービスで活躍している。また、飼い主からの相談に獣医師がLINEで回答する無料相談サービスを展開し、身体的な事情で現場では働けない獣医師を積極雇用している。

アニホックの今後の目標について伺うと、藤野先生はふたつの展望を話してくれた。

「ひとつは往診サービスのメリットをもっと多くの人に知っていただき、利用していただきたい。そのために、次のステップでは対応エリアを一都三県以外の大都市や地方都市に広げていきたいです。ふたつめは、今後は往診サービスだけでは対応できない入院や手術に対応していくため、施設型の動物病院を運営していきたいですね。『病院』『往診サービス』『相談サービス』など、いままでの動物病院だけでは対応できないことを担保していくことで、飼い主さんをさまざまな方向からサポートし、日本をペットと幸せに暮らせる国にしていけたらと思っています」

原田さつき

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