日本サッカー協会「500億円超」の巨額収入でも漏れるガラパゴス化懸念の声

日本サッカー協会「500億円超」の巨額収入でも漏れるガラパゴス化懸念の声

  • JBpress
  • 更新日:2022/05/14
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羨ましい――。そんな声が他のスポーツ界から漏れてきている。

日本サッカー協会(JFA)は9日、株式会社電通と2023年4月1日から2030年3月31日の8年間の期間にわたり「JFAパートナーシップ」契約を締結することで基本合意したと発表。金額については非公表だが、一部スポーツ紙の報道によれば推定で8年総額350億円にのぼるとみられている。

ワールドカップや五輪出場、本大会成績などのボーナスが加味されれば、最大で400億円にのぼるとの試算もあり、コロナ禍やウクライナ情勢でスポンサー収益に苦しむ日本スポーツ界の中においてJFAは「一人勝ち」の様相だ。

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W杯のアジア出場枠拡大が後押しした大型契約

すでに昨年6月の時点でJFAは、1999年からオフィシャルサプライヤー契約を結んでいるアディダスジャパン株式会社とも2023年以降の契約を引き続き締結することで合意したことを発表している。こちらも期間、金額に関しては公表されていないものの前出の一部報道でも示されていた通り、電通との8年契約と合算すれば「500億円を超える」との見方が根強い。

サッカー日本代表の根強い人気面を考えれば、電通やアディダスが巨額契約を締結するのも納得できる。

2002年の日韓大会以降続くW杯のアジア出場枠が現行の「4.5」から26年の3か国共催(アメリカ、カナダ、メキシコ)大会をもって一気に「8」へと引き上げられることも、どうやら両社の巨額契約を後押ししたようだ。出場枠の大幅な増加によってアジア予選で敗退する確率がこれまでより大幅に減り、7大会連続でW杯出場の常連国となっている今の日本の実力から考えれば今後の本大会進出はかなりハードルが低くなる。

W杯出場の有無がサッカー日本代表への注目度を大きく左右する背景を鑑みると、26年大会からアジア出場枠「8」への引き上げはJFAをサポートする両社にとって確かに巨額を投じる大きな判断材料になったと言えるだろう。

出場枠拡大でアジア予選突破が容易になればなるほど「スリル」失われる可能性も

そんな圧倒的な人気を誇るサッカー・日本代表を参考にしながら、代表チームの育成を目指している他のスポーツ組織は少なくない。

野球日本代表・侍ジャパンの定着化を図ってきたNPBエンタープライズは、その筆頭だ。同関係者もJFAと複数企業が締結した“巨額スポンサー契約”には、冒頭の「羨ましい」という感想に続けて、こう冷静に分析する。

「サッカー日本代表はやはりブランド力が群を抜いている。野球の世界大会であるWBCやプレミア12などよりも、サッカーのW杯は権威も高い上に参加国が多く、アジア予選もほぼ決まって熾烈な戦いを極めることで見ている側にスリリングかつ高い興奮を呼び込んでる。サッカーファン以外の関心も強く引き寄せられるから、スポンサー料も額がケタ違いになるのだろう」

しかしながら、必ずしもそうとは言い切れない側面もありそうだ。

2026年大会からアジア出場枠が一気に増やされることによって、前出の関係者が指摘したような「アジア予選」は「熾烈な戦い」でなくなる可能性も高まるからである。この点に関しては実際に他の複数メディアの間でも既に懸念材料として報じられており、JFA内部からは電通とアディダスの巨額契約締結と絡めながら「日本サッカー界のガラパゴス化」を次のように心配する向きも飛び出している。

「近年で最悪ともささやかれる不況下において、これ以上ない条件で契約を結んでいただいたことは日本サッカー界にとって非常に心強く、感謝しても感謝し切れません。本当に有難いお話しだと誰もが思っています。

ただ、今後のサッカー日本代表の人気は決して順風満帆ではなく逆に大きな分岐点に差し掛かることになるはずです。

将来的に2026年の大会からアジア出場枠が増えれば、必然的にW杯の本大会出場までのいわゆる“ハラハラドキドキ感”はこれまでよりも急降下することになる点を絶対に忘れてはいけないと思います。アジア予選が一敗が命取りになる『絶対に負けられない試合』の連続ではなく、本大会出場決定が当たり前とみなされるスリルのない戦いになったら、果たして世間の反応はどうなるか」

同関係者は、なおも続ける。

「サッカーファン以外の一般層の方々の興味を持続できるかについては確約など到底できませんし、逆に不安が拭えません。

アジア予選が厳しいギリギリの戦いではなく負けても全然大丈夫な試合で、そのうえW杯そのものが2026年大会から出場チームが32から48に“水増し”されるわけですから、W杯への関心が薄れてしまう危険性も低くはない。これら悪夢のシナリオを想定した対策を何ら講じることなく、多額のスポンサー契約にあぐらをかいてしまっていたら日本サッカー界はこれから先、世界から取り残されてしまうような気がしてなりません」

予選敗退のリスクが減り、W杯出場への道が“安泰”になることは必ずしもポジティブな要素ばかりとは言えない。かつて日本中が涙し、日本代表人気の原点となった“ドーハの悲劇”や“ジョホールバルの歓喜”のようなドラマは、おそらく生まれにくくなる。

「日本代表の人気が年々下がっている」

サッカーW杯カタール大会のアジア最終予選も日本代表は苦しいスタートを切りながら最後は怒とうの6連勝でグループ2位となり、7大会連続で本大会出場を決めた。それであっても今回の予選に関しては、森保一監督に第4戦以降「引き分け以下なら解任」の話題が持ち上がったことぐらいで、イマイチ盛り上がりに欠けていたという見方が各メディアやサッカーファンの間で大勢を占めている。JFA内部でも「日本代表の人気も明らかに年々下がっている」(前出の関係者)との危機感は全体とは言い切れなくても多数間で共有できている模様だ。

それならば本大会でJFAが目標として掲げている「2030年までにW杯ベスト4」、「2050年までにW杯優勝」を実現すべく、多額の収入が見込めるスポンサー料を純粋な強化費用に充当してほしい。要はW杯本大会で「強い日本代表」の姿を満天下に誇示すれば、かつてのような爆発的人気も必ず戻ってくるはずだ。本気でサッカー強豪国の仲間入りを果たしたいなら、W杯の本大会で決勝トーナメント進出の常連国となるのは今後求められる必要最低の条件だろう。

昨今の世界情勢悪化で困難な面もあることは重々承知しているが、欧州、南米の強豪国とアウェーでの強化試合を多数マッチメイクするなり、あるいはカタールW杯終了後「世界に通用する」名将や名コーチ陣を招聘するなり、日本サッカー協会の田嶋幸三会長にはぜひとも忖度や肩入れなどの“私情”を挟むことなく敏腕を発揮していただきたいと願う。

臼北 信行

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