20年以上ユニクロを追うジャーナリストが語る、ファストリ「世界首位」3つの勝因

20年以上ユニクロを追うジャーナリストが語る、ファストリ「世界首位」3つの勝因

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/02/24
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16日、「ユニクロ」や「GU(ジーユー)」を展開するファーストリテイリングの時価総額が10兆8725億円と、「ZARA」を展開するスペインのインディテックスを超えて、初めてアパレル業界で世界首位となった。

ファストリ株は1株当たり終値で10万2500円となり、10万円台になるのは上場以来初めてだ。また、19日の終値では10万4750円をつけ、時価総額はあっという間に11兆円を超えた。

20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材し、柳井正氏への取材経験も持つファッションビジネスジャーナリストの松下久美氏に、今回のファストリ快挙の理由について語ってもらった。

コロナ禍でより強みとなった「購入想起率」
要因としては、大きく分けて3つあります。

まず1つ目に、やはりパンデミックの影響が大きいですね。巣篭もり消費の需要が高まるなかで、部屋着として、また外出できる日常着としても使用できるユニクロの商材は、高まるニーズにちょうどマッチしていました。

また、気軽に買い物に行くことが困難となったなかで、短時間で買い物を済ませなければならない、あるいはEコマースで購入しようとなるわけですが、そのときにどのブランドの服を買おう、どこのお店で買おうという、いわゆる「購入想起率」が重要となってきます。

短期間で効率的に買い物をしようとすれば、自然に信頼度や安心感を重視することになり、誰もがよく知る知名度のあるブランドに購買が集中する傾向があります。そうなったときに想起されるブランドとして上位に組み込まれるのが、ユニクロやGUだった、ということが言えます。

対してZARAはというと、トレンド性やデザイン性が高く、おしゃれ着や外出着のイメージが高いブランドです。ターゲット層に関しても、主に20〜40代がメインで、ユニクロの老若男女問わない幅広い客層と比べるとどうしても狭くなります。

いまは、洋服はトレンドを追いかけるよりも、ベーシックなもの、タイムレスなものを着て、他の趣味嗜好にお金や時間を費やしたいという消費性向や、サステナブルなものを選びたいという考え方が広まっています。ユニクロの商材は、そうした時勢に非常に好適だったのだと思います。

アジア圏の強さ
2つ目は、日本、アジアを中心に成長しているファストリ、ユニクロと、かたやスペインを発祥地として、主にヨーロッパをメインにビジネスを展開しているインディテックス、そこで格差がついてきたのだと思います。

インディテックスはZARAを中心に、現在、世界で約7200店舗を展開していて、そのうち過半数の約4800店舗がヨーロッパにあります。

そして、コロナの文脈で見ると、アジアの方が顕著に回復している。こうした地政学的な面も、ファストリがインディテックスを抜いた一つの要因になったのでしょう。

ファストリ株が持つ安心感
3つ目に、日銀の存在があります。日銀は上場投資信託(ETF)の買い入れにより、ファストリ株の20%以上のシェアを持つ、実質的な大株主でもあります。

いま、日経平均株価の採用銘柄が225あるなかで、、ファストリ株は225分の1であるにもかかわらず、約12%も寄与しています。なので、そこが上がれば日経平均も上がるということで非常に大きな影響力を持っていることと、日銀が買っている安心銘柄というイメージも強いと思うんですね。

まとめると、コロナの時代にあったエッシェンシャルウェアであること、アジアを拠点として成長していること、日銀が実質的な大株主であり、株が強く、上昇していること、この3つが、インディテックスに逆転する大きな要因になったと考えています。

ファストリの躍進は今後も続くか
今後ですが、ファストリの勢いは止まらず続いていくと思います。

ファストリが拠点とするアジアは、人口の増加や所得水準の向上など市場ポテンシャルが高く、成長度合いや勢いで見ると世界ナンバーワンのエリアであると言えます。

一方で、ヨーロッパでは今回の経済ダメージがしばらく続くことが予想されます。売り上げで見ると、インディテックスはファストリより1兆4000億円近い差がありますが、近づいてくることもかなり射程圏内というか、現実的になってきていると思います。

また、インディテックスの十八番(おはこ)と言われている強い物流・ロジスティクスに対抗すべく、ファストリは、倉庫の自動化などと並行して、海外からの直貿(直接貿易)に乗り出しています。”成長痛”として混乱が起こる可能性もありますが、それを乗り越えて、収益力の向上や在庫の適正化を目指しているところです。

ちなみに、いまZARAの次のブランドで、マッシモ・ドゥッティというブランドがあるのですが、これはオフィススタイルが中心なんです。

かたや、ファストリのナンバー2ブランドといえばGUですが、GUはユニクロよりもさらに低価格でマストレンドを取り入れた商品を提供していますし、コスメなどの新しいジャンルにも力を入れています。また、台湾や中国、韓国などに海外展開しており、今後益々アジアを中心に拡大していく予定です。

このように、双方のナンバー2ブランドを見ても、GUの方がポテンシャルが高いと言えそうで、グループ全体で見たときに、やはりファストリの方がインディテックスより分があるのではないかと思います。

ユニクロの動向に見る、「ライフウェア」の真の意味
ファストリは、これまで世界一のアパレル企業を目指しており、「悲願を果たした」、と見る向きは多いと思います。時価総額世界一は、「世界で最も価値のあるアパレル企業」と言い換えることもできるため、確かに喜ばしいことです。しかし、実はいまは、「売上高で世界一」という部分はあまり重要な経営指標になっていないと思うんですね。それよりも、「世界一、社会に役立つこと」や「生活インフラになること」、「サステナブルであること」などが重要だと考えています。

今回のコロナで、ユニクロは医療用ガウンやマスク、医療従事者の方々にエアリズムを提供するなど、事業を通じてブレずに社会貢献に取り組んでいることが顕著に見えています(ユニクロ公式HP:ユニクロの新型コロナウイルス感染症への取り組み、2020年11月27日現在)。

「服の力で人々の生活に寄与する」ということも含めた、まさに真のライフウェアを提供して、「命」に寄り添うという意味と、「生活」に寄り添うという意味、両面で社会貢献していこうという思いを強く持っています。

これからは、毎年必要な分は買い足しつつ、一つのアイテムを長く大切に着るというサステナブルなスタイルが主流になっていくと思います。

そうした意味で考えると、ユニクロの服は一般的な消費財として見ると替え時がわからないくらい、非常に丈夫で長持ち、かつ肌触りや伸縮性に優れ質が良い。かつ、そうしたクオリティの高い商品が非常に手頃な価格で手に入る、というところが、いまの世の中のニーズにマッチしており、多くの人々に支持される要因になっているのだと思います。どこまで飛躍が続くか、見届けていきたいですね。

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