【NetflixやAmazon Primeで視聴・レンタル可】私的音楽映画ベスト5

【NetflixやAmazon Primeで視聴・レンタル可】私的音楽映画ベスト5

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  • 更新日:2021/05/03
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YouTubeに「ミュージックレス・ビデオ」なるものがあります。マイケル・ジャクソンの「ビート・イット」とか、ミック・ジャガーとデヴィッド・ボウイの「ダンシング・イン・ザ・ストリート」などの著名MVから音を抜いて効果音をつけた、いわゆるネタ動画ですね。

限りなくクロに近いグレーなので、あんまり大きなフォントでは打てないのですが、実際、滅茶苦茶面白く、「最近なんか眉間にシワが寄りっぱなしだな」といった人はぜひ検索してみてください。バカバカしいので、軽い悩みくらいは吹っ飛びます。

映像はバカバカしいながらも、人間や物の動き、つまり映像に音楽が及ぼす力のほどがよくわかりまして、「音は感情を伝える。映画体験の半分は音だ」とジョージ・ルーカスの言葉を持ち出すまでもなく、今や映像全般に音楽がもたらす影響は、良かれ悪かれかなり大きなものであると見積もれるでしょう。

とくにここ数年では「映像(映画)に音楽がもたらす影響力」を証明するかのように、『すばらしき映画音楽たち』や『ようこそ映画音響の世界へ』といった良作が公開されています。どちらもそこまで長尺ではないので「あれ入ってねぇ」「これ入ってねぇ」「欧州や非英語圏に言及しねぇじゃねぇか」「ハンス・ジマーの声渋すぎるだろ」「偉大な音楽家も締め切りには勝てない」などといったご意見ご感想もありますが、入門編としては最適なので、未見の方は機会があれば鑑賞してみてください。

今回は「私的音楽映画」と第してベスト作品を紹介していくわけなのですが、よく考えると「音楽映画」の定義ってかなり曖昧であることに、今気づきました。たとえば、一曲も音楽が流れなくとも音楽に関するドキュメンタリーであれば「音楽映画」といえそうです。

劇中で鈴虫が鳴いていたとしたら、その音色を音楽だと捉えて「音楽映画」だと言いはることも可能でしょう。「映画は無音だが、鑑賞者が発生させた意図しない音が存在するので音楽映画である」などと、キノコ研究家兼音楽家のようなことを言い出す人がいても否定はできません。

ですので、以下に作品をピックアップするルールを設けました。

【ルール1】

Netflix・Amazon Prime Videoで視聴可能。もしくはAmazon・Apple TVでレンタル可能な作品のみをピックアップする。

(緊急事態宣言中のため、一歩も家から出ずに観られるようにするため。プラットフォームは筆者個人が登録しており、使用可能なもの。Apple TVはサブスク登録していないので、レンタルのみでの検索)

【ルール2】

ドキュメンタリーは入れてもよいが、1作品のみ。

(サブスクで観られる優秀な音楽ドキュメンタリー作品が多く、無制限にするとすべてドキュメンタリーで埋まってしまう可能性もあるため)

【ルール3】

最低5回以上は完走している作品を選ぶ。

(作品の鮮度ではなく、いつ・何度観ても面白いといった安定性を重視したいので)

【ルール4】

ジョン・カーニー作品は1つまで。

(無制限にすると2作品以上入る可能性があるため)

【ルール5】

同一の監督作品を複数ピックアップするのは不可。

(ルール4参照)

【ルール6】

演奏・歌唱シーンが3回以上入っていること。

【ルール7】

史実を基にした作品はなるべく入れない。なるべく映画のために作られたオリジナル曲を演奏・歌唱しているものを選ぶ。

(ここ10年くらい、実在のミュージシャンをモデルとした作品は良作が多すぎ、そればっかりになるのは考えものなので)

【ルール8】

ルールは1度だけ破ることができる。

以上のルールをもとに、作品をセレクトしていきます。

注:2021年4月27日現在の情報となります。

--{1つ目の作品は}--

スティル・クレイジー

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1977年に解散した架空のロックバンド「ストレンジ・フルーツ」が20年の時を経てカムバックする話なんですが、『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』とか『シュガーマン 奇跡に愛された男』とかのドキュメンタリーがお好きな方にはピッタリでしょう。

というか、『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』か『シュガーマン 奇跡に愛された男』のどちらかをドキュメンタリー枠に入れたかったのですが、いずれも配信・レンタルされていないので、それに近いものを選びました……といっても代打ではなく、映画自体は素晴らしいです。

主人公のオッサンはバンド解散後、コンドームの自販機に商品を補充する仕事をしてるんですけど、プロモーターから再結成を持ちかけられて、昔のメンバーを招集しようと奔走するんですね。元メンバーは主人公含めて、もう全員しょうもないオッサンなんですが、何とか集まるわけです(ギター以外)。

それで「再結成をかけたヨーロッパツアーだ」って各地を回るんですけど、バンドの出来はボロボロだわ、メンバーも喧嘩しだすわ、再結成に関するありとあらゆる問題が起こるという(笑)。ただ、映画自体はコメディタッチなんですけど「ああ、こういう再結成バンド、居そうだな」っていうリアルさも同居しているので、決して荒唐無稽にはならずに物語は進んでいきます。

最近の音楽映画は史実に基づいて、実在のバンドやシンガーを時代考証バッチリで出すっていうのが多い印象で、もちろんそれらも素晴らしいのですが、本作のようなワキが甘めな「バカ映画」一歩手前の作品も「ああ、こういうのでいいんだよな」とため息交じりに唸ってしまうことでしょう。

そしてラスト。ラストはもうベタもベッタベタなんですが、「ここでアレ、くるな」とか、「はいここでキメ顔チョーキング来ましたぁ!」など、あまりに展開とカメラワークの予想ができるため、実際のバンドのライブDVDを観ているような安心感と感動を味わえます。

※Apple TV・Amazon Prime Videoでレンタル可能

--{2つ目の作品}--

クライ・ベイビー

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数あるジョニー・デップ主演映画のなかでも、割と無かったことにされているんじゃないか作品トップ3に入るであろう、75歳になってもまだ鬼才、ジョン・ウォーターズ監督が手掛けた1本。

今、なんとなくWikipediaで検索してみたのですが、ストーリーとしては「舞台はメリーランド州ボルチモア。不良少年のウェイドは、お嬢様のアリソンと恋に落ちる」としか書かれていませんでした。いくらなんでも淡白過ぎるだろう。

確かに、ウェイド(ジョニー・デップ)がアリソン(エイミー・ロケイン)と恋に落ちるで過不足はないのだけれど、ちょっと待ってくださいよ。イギー・ポップ、トレイシー・ローズ、スーザン・ティレル、ジョー・ダレッサンドロの数え役満級のキャストに、チョイ役でウィレム・デフォーも出てるという凄まじさ。とくにウィレム・デフォーは伝説的映画『ラブレス』への目配せでしょう! 『ラブレス』にはロバート・ゴードンも出てるし! 同年公開の『シザー・ハンズ』は確かに最高だけどさぁ! 主演作としてはこっちが先よ? 音楽だってジョニデが歌ってるだけじゃないよ? 「Please,Mr. Jailer」なんてスティッフレコードの星、レイチェル・スイートですよ? どうすか? このセンス(2万字中略)今となっては『グリース』や『ワンダラーズ』『アウトサイダー』なんかに並ぶロックン・ローラー御用達映画じゃないですか! と、思わず発狂してしまうくらいには面白いです。

ちなみに、『ピンク・フラミンゴ』に比べるとジョン・ウォーターズ臭もそれほどなく、実は意外と真っ当なロックンロール・ミュージカルです。ただ、そこはやはり鬼才、古き良きアメリカ感もあり、もっといえば「古き良きアメリカをイメージして古き良きアメリカを作った」みたいなミニチュア感があり、いびつな寓話のようなおかしみがあります。

と、ここまで書いて、実は演奏シーンは3回も無かったのではないかということに気付きました。しかし、刑務所内の工場にある工具を使って演奏したり、敵役である山の手の坊っちゃん達がコーラスグループとして歌ったりするのでギリギリセーフでしょう。

※Apple TV・Amazon Prime Videoでレンタル可能

--{3つ目の作品}--

バックコーラスの歌姫たち

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バンドやシンガーソングライターのバックで歌う「バックシンガー」たちにフォーカスをあてた、音楽ドキュメンタリーの傑作。

音楽史に残る名曲の数々に対して、彼女たちがいかに貢献したのかが、音楽関係者やブルース・スプリングスティーン、ミック・ジャガーなどの大物アーティストなどのインタビューで語られていきます。

またダーレン・ラヴ、メリー・クレイトン、リサ・フィッシャー、ジュディス・ヒルらバックシンガーたちのインタビューも豊富で、生活などにも密着しており、フィル・スペクターへの恨み節と同時に「最近仕事ある?」「ないわよ!」なんていうリアルな会話も繰り広げられます。

彼女たちは底抜けに明るく、音楽を愛していますが、原題のとおり『20 Feet from Stardom』です。ソロアルバムを出している方も多くいますが、バックシンガーを務める限りはフロントマンまで20フィートの距離があるわけです。

私的ランキングだからして、極個人的な話をしても良いと判断しますが、以前ローリング・ストーンズのライブを観に行ったんですよ。「ギミー・シェルター」でリサ・フィッシャーが花道を歩き、ストーンズの演奏をバックにしてソロを歌い上げたとき「20 Feet from Stardom」という言葉が浮かび、落涙したことを思い出しました。「観ていて本当に良かった」映画のひとつです。

※Apple TVでレンタル可能。Amazon Prime Videoは日本レンタルは不可。しかしNetflix・Amazonとも、上がっては消えるが繰り返されているので、時期によっては鑑賞可能かもしれません。

--{4つ目の作品}--

はじまりのうた

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2010年代は数多くの良作音楽映画が公開されましたが、『はじまりのうた』はそのなかでも10年、20年と語り継がれていく傑作でしょう。

シンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)の歌が、ひょんなことから落ち目の音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)の耳に入り、彼はグレタに「レコーディングをしよう」と持ちかけ、物語ははじまります。

レコーディングっつっても、ダンは最近ハズしっぱなしなので予算をとってくることができない。そこでどうするかっていうと、ニューヨーク中のあらゆる場所でフィールドレコーディングをするんですが、このレコーディングシーンが最高で、そのまんま良質のMVです。

ダンは「ニューヨークのありとあらゆる場所で録るんだ」と言い、グレタは「でも雨が降ったらどうするの?」と返す。「録り続ける」とダン。「警察が来たら?」と彼女が尋ねると、彼は「録り続けるんだ」と応える。もうこのやり取りだけで泣けます。

劇中、グレタもダンも、ダンの嫁さんも、娘さんも、グレタの友達のふとっちょも、言い忘れてたグレタの彼氏のデイヴ(アダム・レヴィーン)も、何かしらの問題を抱えているんですけど、それぞれが自分の力で立ち直り、やり直します。まさに原題の『Begin Again』のとおり、全員が「もういちどはじめる」んですね。何かに挫折したことがある人、バンドを組んだことがある人、物を作ったことがある人、今、上手くいかなくて参ってしまっている人、というか全人類に観て欲しい1本です。

余談ですが、『はじまりのうた』と『セッション』は製作年は異なるものの、同じ年に公開されており、次作である『シング・ストリート』と『ラ・ラ・ランド』も同年に公開されています。どちらがどうかは申し上げませんが、音楽の捉え方がまったく違う作品が2回も同年に公開されているというのは、何らかの共時性を感じずにはいられません。

※Netflix・Amazon Prime Videoで視聴可能。Apple TVでレンタル可能

--{最後の作品は}--

タレンタイム〜優しい歌

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よりによって1位で「【ルール8】ルールは1度だけ破ることができる」を適用……というか、本作をランクインさせるためにルールを設けたので、完全なる不正なのですが(笑)ダントツの1位なんだから仕方がない。ヤスミン・アフマド監督作品『タレンタイム〜優しい歌』でございます。

なんですが、この度検索をしたところ、実はAmazon Prime Videoでレンタル可能なことが判明しました。とんでもないことでございます。

ヤスミン・アフマドはマレーシアの映画監督で、本作もマレーシアで撮られているんですが「するってぇと、流れる音楽もマレーシアっぽいのかい」と勢い思いがちですが、これが全然違うんですよ。

たとえば、主人公の一人であるハフィズ(モハマド・シャフィー・ナスウィップ)はマレー人のムスリムですが、ギターを片手にジャクソン・ブラウンの「ドクター・マイ・アイズ」もかくや、といった軽快なナンバーを英語詞で歌います。

マツコ・デラックスにそっくりな先生も、ジョニー・キャッシュやニーナ・シモンを引き合いにして、オーディション審査をします。

これは、もともとマレーシアのラジオが流していたのは香港やアメリカなどからの輸入音楽が9割以上だったことに起因しているのですが、細かい話はさておき、音楽を担当したピート・テオの仕事は凄まじく、筆者調べでは映画を視聴した人のわずか120%がサントラを購入するか、購入できないのでYouTubeで聴いているといった統計が出ています。

さて、タレンタイムとは学生による芸能コンテストで、発祥には諸説あるものの、1950年代にはシンガポールの高校で行われていたそうです。本作もまた、タレンタイムを中心として、オーディションから本番までを描いているのですが、単純な学校モノじゃありません。

マレーシアは多民族・多言語国家ですので、当然といえば当然なのですが、登場する宗教はイスラム教、仏教、儒教、道教、ヒンドゥー教、キリスト教と多宗教、言語もマレー語、中国語、タミル語、英語などが話され、さらに手話も加わります。

物語はタレンタイムと並行して、宗教も言語も、貧富の差も大きく異る4つの家族をそれぞれ描き出します。もう、書いているだけでややこしいんですが、映画はしっかりと交通整理がされているので、何の問題もなく没入できるでしょう。というか、こんなコラム読んでないで今すぐ観てください!すっばらしいから!

と、終わりにしてしまうと筆者の信頼も終わりそうですので、もう少し補足しておきます。異なる民族・宗教・言語、さらに差別や偏見といった問題も盛り込まれ、もう辛くて観ていられないようなシーンも正直あります。しかし、最後まで観れば、自分が「世界を観測する目」が変わります。それはヤスミン・アフマドが『タレンタイム〜優しい歌』だけでなく、すべての作品で持ち続けた視座でもあり、我々人類が共有すべき視界です。

正直な話、私的1位とかそういうレベルではないので、ぜひご覧ください。

さて、ここまで私的音楽映画ベスト5をセレクト・紹介してきました。これを書いている現在地は、緊急事態宣言真っ只中の東京都です。映画館もほとんど閉まっています。寂しい限りですが、本記事が暇つぶし、もしくは気を紛らわせるための一助になれば幸いです。

(文:加藤 広大)

加藤 広大

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