
アダルト業界の作り手側で働く女・るいが、無限に広がる「性」の世界…ファンタジーを通して見る「リアルな性」の話を、本音でお伝えしていきます。
先日、友人の男の子Aくんからこんな相談を受けました。「最近、彼女が会う前日に手首を切ってくる。辞めさせたいんだけどどうしたらいいかわからない」
私はAくんがずっと彼女のことで翻弄されていることを知っていました。以前も彼女のほうから別れたいと言ってきて、Aくんが了承すると手首を切って「やっぱり別れたくない」と泣きついてきたり…。
「なんで付き合っているの?」と聞くと、「もう好きかどうかはわからないんだけど、僕がそばにいないと駄目なのかなっていう責任感みたいなのがあって…」とAくんは話してくれました。私はその話を聞いて、自分の過去の過ちを思い出したのです。
■「ソフレは孤独を解決できる」
以前こちらで書かせていただいたことがあるのですが、私には大学生の時にソフレ(添い寝フレンド)がいました。彼との関係はとても居心地がよく、お互いの寂しさを埋めつつ、足りないところを映しあい高めあうような、私にとってかけがえのない時間でした。
今思えばちょうど彼と私との境遇が似ており、バイオリズムも合った、つまりは彼との相性が良かったため良い結果になったということに過ぎません。ですが若かった私は、その思い出が素晴らしいものだった分、「ソフレとはこんなに素晴らしいのだ」「他人との精神/肉体の関わりによって人は救われるんだ」と錯覚してしまったのです。
そのソフレと円満に関係を解消して1カ月後、バイト先の同僚Bくんから相談を受けました。「最近精神が不安定で、病院にも行っているのだけど、夜も眠れず深酒してしまう。人恋しくて寂しくて、色んな人を飲みに誘っていたらお金がない」という旨の相談でした。
私はBくんのことを同僚として信頼していましたし、他の同僚と一緒に毎週のように飲みに行っていて、情がありました。そこに1か月前までの素敵な思い出が重なりました。私はBくんに、「ソフレになってみる?」と提案してしまったのです。
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■セックスしないとキレられた
Bくんは童貞でした。初めておうちにお邪魔した日、身体の関係をせがまれました。童貞をもらうことに若干の抵抗を覚えつつも、今後の練習をしておきたいとの気持ちに押され、手取り足取りでなんとか最後までやり遂げました。
2回目も同様の流れで、私は自分からソフレ提案をしたという責任感から要求に応じつつも、なんだか違和感をぬぐえませんでした。感謝こそされているものの、このままいくと身体の関係を当たり前に求められ、理想的な「ソフレ」関係にはならないな、と直感的に感じたのです。
そこで、3回目にお邪魔したとき、身体の関係を迫ってくる相手に対して、私は「今日は気分じゃない」と断ることにしました。すると、Bくんは急に声を荒げだし、「しないなら帰れよ!」と言い放ったのです。ここで私が譲歩したらだめだと思い、大学生の私は終電もないのに2時間歩いて家まで帰りました…。
Bくんも反省しているかなと思いきや、それからほどなくして謝罪の言葉もなく、何事もなかったように会いたいと連絡が来ました。私はBくんともう距離を置こうと思い、はぐらかして会わないようにしていました。
■衝撃的な事件
ある日、酔っぱらった様子のBくんから、「今近くにいて、もう終電もないから、るいの家に行きたい」と連絡がありました。はじめ断ったのですが、Bくんのあまりの勢いと、彼が私の家を知っていたこともあり、仕方なく家に入れてあげることにしました。
家に入るなり、Bくんは身体の関係を求めてきました。私はもう彼に対して性的な気持ちを持てなくなっていたので、「そういう気分じゃないからやめて」と断りました。それでもぐいぐい来るため、「前Bくんは、私が断ったとき家を追い出したでしょ? じゃあ私も言うけど、これ以上無理にしようとするなら出て行って」と告げました。
その瞬間、Bくんはすごい剣幕で泣き叫び、暴れだしたのです。大の大人があんな風に喚く姿を私は見たことがありませんでした。びっくりして、とにかく近所迷惑にならないようにと彼の口をふさぎ、身体を押さえつけました。
だんだんと過呼吸っぽくなってくるBくんに対して、ビニール袋を渡して落ち着かせていると、「カバンから薬を取ってほしい」と途切れ途切れの声で言われました。彼のカバンから薬を取り出して渡し、それを飲んだ彼は、しばらくすると落ち着きを取り戻しました。そして涙ながらに「迷惑かけてごめんなさい、帰ります」と言って、彼は帰っていきました。
私はその姿を見て、自分を恥じ、深く反省しました。Bくんは精神的な疾患を抱え、自分でもコントロールが出来ず、本当に苦しんでいたのでしょう。私はたった一度の成功体験から、Bくんのそういった症状に対して、人のぬくもりやらセックスやらが効く、私ならなんとかできると、とんでもない過信をしていたのです。
■セックスは治療じゃない
手首を切ってしまう、自分のコントロールができなくなってしまう。そういった方たちに必要なのは、適切な治療です。セックス含めた人との関わりで改善する可能性もありますが、それはあくまで可能性にすぎず、むしろ症状改善を目的に関わりを持つことは、上手くいかなかった場合さらなる症状悪化をもたらすことになると思っています。
当人たちの苦しみは素人の他者が簡単に理解できるものではなく、分かったようなつもりで当人たちに近づくと、「この人は自分のことを理解してくれる人のはずなのに、分かってもらえていない」ということが当人たちにとってフラストレーションとなり、ますます苦しむことになるのです。人との関わりで何かが改善するというのは、副次的な効果であり、ラッキーととらえるべきだ、と今は思っています。
そうは言っても、私も寂しさを埋めるようなセックスをしてしまうこともありますし、頼まれて断れずにセックスしてしまうこともありますし、なかなか人間一筋縄にはいかないものです。相手と適切な距離感を測りながら、自分の精神的な調子も見ながら、依存しすぎない形でセックスライフを楽しんでいければいいですね。
(文/fumumu編集部・るい)