「寺からも依頼が」仏像顔出し看板を10年で50体作った女性「目標は100体」

「寺からも依頼が」仏像顔出し看板を10年で50体作った女性「目標は100体」

  • CHANTO WEB
  • 更新日:2023/01/25

一度見たら忘れられない、インパクト大のビジュアル。仏像好きや顔はめ愛好家のみならず、寺社からもいち目置かれる「2D仏像顔出し看板」はどのようにして作られるのか。10年間作り続けるニシユキさんに、制作秘話や仏像にかける思いを聞きました。

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神々しさと透明感が鮮やか!免許証や写真入れにもなる『光背パスケース』を商品化

初作品のモチーフは20代で見て圧倒されたあの仏像

──「2D仏像顔出し看板」というユニークな段ボールアートを作られていますが、昔から仏像が好きだったのですか?

ニシユキさん:熱狂的に好きなわけではないのですが、仏像は昔から身近な存在でした。

小学生のころ、月に1回は祖母に連れられて地元(岡山県・倉敷市)の玉島にある円通寺に行っていたことが大きいと思います。

円通寺内にある公園の中にお地蔵さんが何体も配置されていて、お米のようなお菓子をお供えして歩くんですが、遠足みたいですごく楽しくて。

この経験から寺に足を運ぶことや手を合わせることは、私にとってごく自然なことでした。

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コロナ禍で制作された『ほとけさまボールペン』の味わいに癒やされる

── 幼いころから寺社や仏像になじみがあったのですね。大人になって、仏像への思いに変化はありましたか?

ニシユキさん:20代半ばくらいに見に行った東寺の「立体曼荼羅」では、これまで見てきた仏像とはまったく異なるものを感じました。

それまでは仏像(菩薩や如来)に対して「静」の印象を持っていたのですが、立体曼荼羅は躍動感にあふれていたんです。

このときの衝撃がずっと心に残っていて、「顔出し看板」のモチーフは仏像にしたいとすぐに決まりました。

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大阪市・四天王寺にて「金剛力士像 阿形」に扮するニシユキさん

── 初めて2D仏像顔出し看板を作ったときの心境を教えてください。

ニシユキさん:初めて作り上げたのは「宝生如来」の顔出し看板だったのですが、完成したときの感動はいまでも忘れられません。

友人からもらった大きな段ボールに下書きもせず勢いで描いたのですが、完成したものを見て「何かすごいものができた」感覚だけがありました。

いま見ると、顔の大きさに対して体がすごく小さくて、かなりアンバランスなんですが(笑)。

SNSで話題になってお寺からも制作依頼が!

── 最初に2D仏像顔出し看板をお披露目したのは、地元・岡山でのイベントだったそうですね。

ニシユキさん:はい。少ないけれど「いいね」と言ってくださる方がいて、続けようと思えたんですよね。まさか10年も続くとは思っていませんでしたが(笑)。

毎年イベントに出展しながら、SNSで発信するうちに「ずっとファンでした」と言ってくださる方も増えました。

お客さんがSNSに写真を載せてくれたり、地元メディアに取り上げられたりするうちに、「2D仏像顔出し看板」が広く認知されていったように思います。

制作を始めた当初は岡山市内でのイベントが多かったのですが、県外のイベントや仏教界の方たちが運営するイベントにも呼ばれるようになり、活動の場が広がっていきました。

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仏教×テクノロジーのイベント、ニコニコ超会議2022『超テクノ法要×向源』に出展

── 2D仏像顔出し看板の制作依頼は、お寺からもくると伺いました。

ニシユキさん:記念式典やマーケットのようなイベントがあるときに、お寺からご依頼を受けて、そのお寺にちなんだ仏様や、ご本尊(寺においてもっとも重要な信仰対象)の顔出し看板を作っています。

お寺によっては、仏像を近くで拝めなかったり、仏像が隠されてお目にかかれなかったりする場合もあるので、仏像顔出し看板は「寺院」や「仏像」に親しむために、ちょうどいいツールになっているようです。

── 仏像顔出し看板は描く線が多く、精巧な作りですよね。大きな段ボールに描かれているのでバランスをとるのも難しそうです。

ニシユキさん:なるべく忠実に描きたいので、大きな板段ボールに5センチ角のラインを引いてから下書きしているんですよ。

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顔・体・背景のバランスを取るため、5センチ角のラインを引いてから下絵を描く

iPadや本で見本を見つつ、顔や体、光背(背景の後光)の比率が現物と同じになるように描くのがポイントです。

また、作品によってはアクリル絵の具で色つけをするのですが、段ボールの地の色を大事にしているので、色を塗り重ねることは避けています。

塗り直しができない緊張感のなか、自分が思い描いた風合いを表現するのも一つの楽しみですね。

「作って終わりじゃない」触れてもらって作品になる

── ニシユキさんの顔出し看板は、2Dにも関わらず迫力があります。制作する際のこだわりなどはあるのでしょうか。

ニシユキさん:2Dの仏像ですが、立体的に見せることにはこだわっています。

仏画だと陰影はつけないルールがあるらしいのですが、私の場合、まるでそこに仏様がいるかのように再現したいので陰影をつけています。

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化仏(背景に貼り付けられた小さな仏さま)を立体的に見せた作品

また、最後に顔は全部くり抜くのですが、目も鼻も口もすべて一度書いているんですよ。

「くり抜くのになんで顔を描くの?」とよく言われるんですけど、顔を描いたほうがバランスがとれて断然作りやすいんです。

── 最後に顔をくり抜いて、作品は完成ですか?

ニシユキさん:いいえ。私の作品はお客さんに顔をはめてもらって、初めて作品が完成します。

仏画の世界では最後に“目”を入れることで、“魂”が入って画が完成すると言われています。それと同じように考えれば、仏像顔出し看板の完成は「人の顔」をはめることなんです。

── 2D仏像顔出し看板は、お客さんありきの作品なんですね。ニシユキさんは地元・岡山や関西圏を中心にいろんなイベントに出展されていますが、お客さんとの印象的な思い出はありますか?

ニシユキさん:ショッピングモールにブースを出展したことがあるんですが、大勢の観光客や地元の買い物客が目の前を通っていくんですよ。

そのなかで、私の作品を見た一人の女性が掛けてくれた言葉が印象に残っています。

「今日観た映画がとても衝撃的な内容だったけれど、それを超える衝撃でした。ありがとうございます」と言って、お礼にフルーツをくださったんです(笑)。

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イベントで「仏像体験」をする参加者

イベントに出展すると、こういった出会いが生まれます。

私のアートのテーマは「コミュニケーション」なので、仏像顔出し看板を通して生まれたいろんな出会いが大切な思い出ですね。

── 作って終わりではなく、お客さんとのコミュニケーションも含めてニシユキさんの作品なのだと伝わる素敵なエピソードです。2023年は「2D仏像顔出し看板」10周年を迎えますね。

ニシユキさん:仏様が私にとって大切な存在であるように、誰の心なかにもきっと大切なものがあるはず。仏像顔出し看板を通して、お客さんにも「大切な何か」を思い出してもらえたらうれしいです。

これまでの10年間では看板を50体ほど作ったのですが、今後の目標は100体。それを達成できたら、また新しい世界が見えるんじゃないかとワクワクしています。

取材・文/白石果林 画像提供/ニシユキテン

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