皆さんは尾道市立美術館という広島県にある美術館の名前を聞いたことがあるでしょうか?
実は思った以上に多くの人が、その名前を目にした記憶があるのではないかと思います。
そして、それは美術館らしい展示や大きなイベントがあったからということではなく、“ある出来事”を目にしたから…という方が多いのではないでしょうか。
その「事件」が始まったのは、2017年の3月頃のことでした――。

美術館の外には…?尾道市立美術館のツイッターから
美術館に侵入を試みた「珍客」の正体は…
美術館の近くにあるレストランで飼われている黒猫の「ケンちゃん」が、当時開催中だった「猫まみれ展」という企画展の会場に入ろうとして、警備員の馬屋原定雄さんに阻止される様子を、美術館スタッフがTwitterにアップしたのです。
何に惹かれたのかはわかりませんが、どうしても建物内に入りたい黒猫と、それを必死に、しかし優しく阻止する警備員さんのコミカルなやりとりは、ほのぼのとして非常に心温まるものでした。
結果的にその様子はSNSを中心に大反響を呼び、 海外のマスコミにも取り上げられるほどになりました。そしてその戦いは、その後も続いていくことになるのです。
1年半後には新メンバーが…!
約1年半後の2018年10月には、新たに近所に出没するようになった茶トラの「ゴッちゃん」も美術館内に入ろうとして、馬屋原さんに抱きかかえられ、外に連れ出される姿が再び話題に。
その後も2匹は折を見ては美術館内に侵入を試み、ひとりと2匹によるゆったりとした攻防は、世界中の猫好きたちの注目を集めるようになったのです。
その人気は海外でも高まり続け、なんとケンちゃんとゴッちゃんはロシア西部にあるリゾート地・ゼレノグラーツク市へ招待されるという出来事まで起きました。2匹の体調への配慮もあり実現はしませんでしたが、ゼレノグラーツク市から2匹に名産の琥珀を使った首輪がプレゼントされました。
ゴッちゃんは19年に攻防から引退
それから数年が経ったいま、黒猫のケンちゃんは今でも美術館への侵入を試みて警備員さんとの攻防を続けていますが、 地域猫だった茶トラのゴッちゃんは、19年5月に一連の騒動を見た里親さんに引き取られ、攻防からは引退。いまでは飼い主さんのお宅で幸せな日々を過ごしています。
そんな風に、日本だけでなく、世界中で注目を集めた尾道市立美術館の猫と警備員さんの長年にわたる攻防が、このたび『警備員さんと猫 尾道市立美術館の猫』としてコミカライズされました。今回はその一部を抜粋してお届けします。
猫たちと警備員さん、それぞれの視点で見た、この数年間はいったいどんなものだったのでしょうか――。2匹の猫と優しい警備員さんの楽しい毎日を、写真と漫画でお楽しみください。
「入れてー」「いや、キミ入れんから…」美術館の警備員さんと猫のほのぼのすぎる“攻防戦”へ続く
(「文春オンライン」編集部)
「文春オンライン」編集部