天国に旅立たれた鈴木おさむのただひとりの師匠。 僕もこれから、逃げずに、人の夢の種を撒いて生きます

天国に旅立たれた鈴木おさむのただひとりの師匠。 僕もこれから、逃げずに、人の夢の種を撒いて生きます

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  • 更新日:2022/06/23
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放送作家の鈴木おさむさん

放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、夢の種を蒔いてくれた、ただ一人の師匠の話。

* * *

私、放送作家・鈴木おさむは今年で放送作家になって30年です。放送作家を本格的に目指したのは1991年の今頃でした。どうやって放送作家になっていいかわからない僕がテレビを付けた時に、太田プロダクションのお笑いライブのドキュメンタリーが放送されていました。ダチョウ倶楽部さん、劇団ひとり、Uターンの土田君、有吉弘行さん、などなど沢山のおもしろい芸人さんがいる事務所。

番組ではお笑いライブをどうやって作るかを見せていました。そこで、若手のお笑い芸人さんのネタを見てアドバイスをする放送作家さんが映っていました。そこで僕は思うわけです「ここに行けば、放送作家さんに会える」と。

僕は若手芸人としてネタ見せに行くフリをして、放送作家さんに会いに行くことにしました。太田プロに電話して、次のネタ見せの日を聞き。

四谷にあった太田プロの稽古場。行くと、若手芸人さんが長蛇の列。僕もそこに並ぶ。2時間近く待って自分の番になる。目の前に放送作家さんが二人いました。そのうちの一人が前田昌平さんという方でした。銀縁の格好いい眼鏡をかけて、ダンディーな雰囲気を醸し出す作家さんでした。

僕がいきなり「実は僕は放送作家になりたいんです」と言いました。普通ならそこで「帰れ」と言われてもおかしくない。すると初めて会った19歳の小僧の目を見て「最近の放送作家はな、出演者の気持ちが分からないやつが多い。だから、君が来月から自分でネタを作ってライブに出て、半年間続けたら、そこで考えてあげる」と言ったのです。

それを言われて、やるしかないです。放送作家目指して、自分でネタを作って翌月からネタ見せに行きました。

すると、その月に新人芸人さんが挑戦するコーナーに出ることが出来たんです。ピンです。いきなり200人ほどのお客さんがいるところに出ていきネタをしました。当時、ウッチャンナンチャンさんのネタに刺激を受けまくっていた僕は、擬人化のネタ。物産展に出品されているメロンの気持ちになって呟くというネタをしました。舞台に立った時、200人の目、400個が自分を刺しました。今でも思い出します。ほんのちょっとですがウケました。

そこから半年間やり続け、半年たって、再び、放送作家さんの前田昌平さんに言いました。「半年たちました」と。すると前田さんは「わかった。土曜日にニッポン放送の前に来て」と詳しい時間を言われました。有言実行。約束を守ってくれたのです。

土曜日、ニッポン放送に行き、本当にその日から放送作家としての修業がスタートしました。

すべてはあそこから始まりました。

今振り返ると、すごいことだなと思います。19歳の小僧に才能があるかどうかわからないのに、そんな小僧に真剣に向き合い有言実行してくれた。本当にチャンスをくれた。咲くかどうかも分からない夢の種を蒔いてくれた。

この世界にいる人は誰かに夢の種を撒いてもらったからこそ、そこに立っていられる。

夢の種を撒く側に立つと、それは責任がいる。パワーがいる。だからそこから逃げてしまう人も多い。

前田さんの下で修業を始めたころ、前田さんはあまりアドバイスをしてくれませんでした。

ですが、一度、前田さんに提出するショートストーリーで人が死んだ話を書いた時に、「人を簡単に殺すなよ」と言ってくれました。その言葉が20歳の僕に染みました。

ここ最近、僕が書くドラマや物語では人が死ぬことが多い。だけど、そのストーリーを選んだ時点で僕はあの時の前田さんの言葉を思い出すんです。「人を簡単に殺すなよ」と。

アドバイスは少なかったけど、太い背骨を作ってくれた。

前田さんには、もう20年以上お会いしてなかったですが。そんな前田さんがご病気で天国に旅立たれたと、今日、電話がありました。

前田昌平さんは僕の人生でただ唯一の師匠でした。

あの時、僕の夢の種を撒いていただき、本当に本当に本当にありがとうございました。

僕もこれから、逃げずに、人の夢の種を撒いて生きます。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店にて販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が発売中。

鈴木おさむ

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