全然“カッコよくない男”なのに、美女がどうしても結婚したいと思った本当の理由

全然“カッコよくない男”なのに、美女がどうしても結婚したいと思った本当の理由

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  • 更新日:2020/08/07

「好きになった相手は、高嶺の花だった」。

もしもあなたが、手の届かないような存在の相手を好きになってしまったら、どうしますか?

石崎健人(27)が恋に落ちたのも、自分には釣り合わないと諦めていたような“高嶺の花”。

それまで身の丈にあった、分相応な人生を送ってきたはずの男が、憧れの女性を手に入れ、結婚まで漕ぎ着けた方法とは…?

◆これまでのあらすじ

勉強のために距離を置く健人と花奈。花奈には、魅惑的な誘いが舞い込んだりと慌ただしいが…?

▶前回:「1回くらいイイよね…?」他の男に誘われた女が、どうしても彼氏には言えないコト

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「ふぅ」

作業がひと段落した健人は、画面から目を離して首を一周回した。

−やばいなぁ…。

“会うのをやめよう”と健人が花奈に申し出てから、もう半年が経とうとしている。会計士の試験自体はとっくに終わっていたのだが、単純に仕事に忙殺されていて、花奈とはまともに会えていない。

健人は、この状態は果たして恋人同士と呼んでいいのだろうか、という危惧を抱いていた。

最近、健人の部署は転職ラッシュで、続々と部員が辞めている。だが人材の補充はほとんどなく、今いる人員で回しているのだから無理な話なのだ。

人事部でも同じような状況らしく、花奈も花奈で相当忙しい様子だった。

そんなこんなで、満足に会えていない。会ったとしてもお互い、仕事が原因で気もそぞろになることが多く、その時間を楽しめているかと言われると微妙だった。

かといって、今の人事部の慌ただしさを見ると気軽に誘うのも憚られる。

連絡してもいいものだろうか、とスマホをみながら躊躇する健人の目に、ちょうど花奈からのメッセージが届いた。

「来週の金曜日会える?」

それは奇しくも、公認会計士試験合格発表の日だった。

合格発表の日に花奈とのデートの約束をした健人。果たして結果は…?

花奈の告白

花奈からのメッセージは嬉しかった。同時に、試験結果の発表日ということを改めて認識し、一気に心拍数が上がる。

だがそれから合格発表の日までの間、終わりの見えない業務量と残業に忙殺され、毎日が過ぎていった。あまりの忙しさに、試験発表のことはすっかり頭から抜け落ちていたほどだ。

そして迎えた合格発表当日。その日も朝から会議や業務に追われており、ようやく一息ついたのは昼休みだった。

“合格した方も、来年挑戦する方も…”

スマホを確認すると、そんなタイトルのメールが予備校からきていた。

−そうだ、今日の10時に発表だったんだ…。

同期と定食屋に並んでいた健人は、急いで合格発表のページに接続する。

すでに試験結果の確認を終えた人ばかりなのだろう。接続は、極めてスムーズだった。

−あっ…。

と思ったその瞬間、ぐらり、と視界がゆがんだ。

「おい、どうした石崎!しっかりしろよ」

一緒に列に並んでいた同期の声が、遠くでわずかに聞こえるのを感じた。

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「昼に倒れたって聞いて何事かと思ったの。心配した」

待ち合わせしたレストランで、花奈は会うなり、不安げに健人の顔を覗きこんだ。

「もう大丈夫だよ。心配かけてごめん。でも念のため、今日はお酒を控えておこうかな」

「そっか。顔色もよさそうだし、よかった…。それで…合格発表はどうだった?」

「受かってたよ」

「そう! おめでとう」

花奈は心の底からほっとした表情を見せた。

結果として、試験には受かっていた。だが試験結果を見たあの時、安堵して気が抜けたのか、その場で倒れてしまったのだ。

運び込まれた社内の診療所の医師からは、異常は見当たらなかったから、少し休めば大丈夫だろうと言われた。その後、ベッドで2時間ほど休ませてもらい、体調はかなり回復したのだった。

ところが周囲にいた同期が大騒ぎして心配し、事を大きくしたため、同期、いや社内で知れ渡ってしまい、花奈の耳にも入ったようだ。

「本当におめでとう。忙しかったのにすごいわ。私も見習わなくちゃ」

デートの帰り道、花奈が何度も祝福の言葉をかけてくれるのが嬉しくて、実は夢なんじゃないかと健人は思った。

最初デートに誘おうとした時なんて、極度に緊張してうっかり告白してしまったくらいなのに。話すだけで緊張していた自分が、今、彼女の隣で堂々としていられることが信じられない。

でも、今の自分はあのときの自分とは違う。

公認会計士試験という壁に遮二無二ぶつかった経験は、健人に自信を与えた。きっとこの後も生きるだろう。

健人は、試験に合格したら彼女に2度目の告白をしようと考えていた。あの時の告白は、事故のようなものだったからだ。

意を決して花奈を呼び止めると、健人の表情を見た彼女は、すかさず遮った。

「待って。私が言う」

想定外の花奈の言葉に、健人は思わず怯んでしまう。そして畳み掛けるように、彼女はこう言ったのである。

「私と結婚してください」

突然の、花奈からのプロポーズ。彼女が健人に伝えた本音とは

私の幸せ

その時、健人は世界が静止したような錯覚にとらわれた

自分は、“改めてよろしく”くらいのことを言うだけのつもりだったのだから。

勉強のために距離を置いている間も、花奈のことが気にならないわけではなかった。

龍一と仲良く話す姿を見かけたり、社内で“神谷さん、いいよなあ”と男たちが話しているのを聞いて、落ち込んだこともある。

待っててほしい気持ちとは裏腹に、花奈の心が離れてしまったらという不安もあった。だが、自分が今やるべきことは試験に合格すること。そう言い聞かせてやってきたのだ。

しかし、そんな健人の心配など無用だった。

「他の人の言うことは気にしないでほしいの。私はあなたと一緒なら絶対に幸せになれる自信があるから」

そして、彼女はこう続けたのである。

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「そもそも幸福って、自分以外の誰かを思う気持ちなんですって」

「…どういう意味?」

健人が尋ねると、お父さまからの受け売りだけど、と花奈は呟いた。

「自分が愛する人が幸せになってほしいと願うのが、本当の幸福。そうだとすれば、私はあなたみたいな人にこそ幸せになってほしいと思った」

痛いくらいに真っ直ぐな視線を向けながら、花奈は話し続ける。

「確かに、素敵な人はいっぱいいるけど。でもね、私はあなたが幸せになることが自分の幸せみたい。そして、あなたが幸せになったときに私がその隣にいたいって思ったの。こんなの初めてだった」

そう語る花奈の顔は、いつになく真剣だ。

「それに、あなたは私の欲しいものをくれるってことが分かってるしね」

健人には、それが一瞬なんのことだかわからなかった。もしかして、あの時のお弁当のことだろうか。それくらいしかまだ自分が彼女にあげたものはないからだ。

「…今、あのときのお弁当のこと考えてたでしょ」

健人は黙ってうなずいた。なぜ何も言っていないのに分かったのだろうか。

「それももちろんそうだけど。でもそれよりも、あなたを見ていると私も頑張ろうって気になれることかな。

かっこいい人がかっこいいなんて当たり前なのよね。よく考えれば。そうじゃない人が努力してるときの方が、もっとかっこいいのにね」

きっとこれは、彼女なりの哲学なのだろう。それをこうして素直な言葉にしてくれたことが、何より嬉しい。

だが、健人はふと首をかしげる。

「…今、遠回しに、僕のこと“かっこよくない”って言わなかった?」

一瞬、花奈の目が泳いだのを見逃さなかった。しかし、すぐに彼女は「…今のなし」と言ってペロッと舌を見せる。

そんな花奈を見て、彼女の粗相を許せない男はこの世にいるのだろうか、と思いながら、胸の奥が熱くなるのを感じた。

▶前回:「1回くらいイイよね…?」他の男に誘われた女が、どうしても彼氏には言えないコト

▶︎Next:8月8日 土曜更新予定
花奈は結局、龍一との一件はどうしたのか?そして健人と花奈を待ち受けていたのは…。

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