「無能な経営者」と言われても...「本」のマッチングサービスの起業家、森本萌乃が送る“ロマンチック”な出会い

「無能な経営者」と言われても...「本」のマッチングサービスの起業家、森本萌乃が送る“ロマンチック”な出会い

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/05/03

「西麻布の2万円ディナーからコンビニコーヒーの生活に一転…」 “マッチングサービス”を起業した30代経営者が電通を4年で辞めた理由から続く

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オンラインのサービスでありながら、本を通じて、人々の豊かな出会いを提案している「Chapters」。サービス運営会社の株式会社ミッションロマンチックの創始者・森本萌乃さんが話す言葉には、人生を輝かせるヒントがたくさんつまっています。森本さんが人生で大事にしている言葉をヒントに、なぜいま「本」のマッチングサービスなのかをお聞きしました。(全2回の2回目。#1から読む)

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みなさんにもっと気軽に「本」を楽しんでほしい

──事務所の入口に「クラブロマンチック 萌乃ママへ」と名前入りの大きな祝花がありました。

森本萌乃さん(以下、森本)  あれは、電通時代の同期が「事務所開きのお祝いに」と突然贈ってくれたお花なんです。社名の「ミッションロマンチック」に引っかけて「クラブロマンチック」「萌乃ママ」になっていて、ふざけてますよね(笑)。とても嬉しかったです。

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起業を祝って電通の同期から送られた花

今年の4月に、「ロマンチックがやりたい」と一般企業の内定を蹴って大卒の新入社員が入ってきてくれました。慌てて事務所を構えることにしたのですが、電通時代の先輩が紹介してくれたおかげで、現在の場所に事務所を構えることができたり、同期たちもあんな大きな祝花を贈ってくれたり、つくづく私は優しい人たちに恵まれていたなと感じています。花を見るたびに楽しい気持ちになって「電通戻りてえ!」と思うこともありますが(笑)、会社作っちゃったし、新卒の新入社員も採用したので、私はこの道を進むしかないなと今は未来だけ見ています。

──最近は本を読む人が減っていると言われています。なぜ「本屋」を選んだのでしょうか。

森本 本って、エンターテイメントのなかで一番ストイックじゃないですか。文字しか書いてないし、そこに広がる情報は、自分の頭のなかで描かれる。でも、だからこそ、自分のなかで描いた世界を人と共有して「答え合わせ」してみたいという欲求が生まれるものだと私は思っています。

「本が好き」って言うのはハードルが高いと思われがちですが、一冊お気に入りの本があって、その本の話を素敵にできれば、それはもう立派な本好きと言っていいと思うんですよ。私は、みなさんにもっと気軽に「本」を楽しんでほしい。

だっていま、人生しんどくないですか?  大きな勢いで世界が変わろうとしているこのいまの時代って、生きづらいし大変だと思っている人って多いと思うんですよね。

人生を疑似体験できるフィクションの世界を

今、満足に遊びに行けないし、仕事もなにかとイノベーションを求められるし、つい最近まで一生懸命生きてきたのにそれを否定されている気が時々するんです。だから、映画でも本でもいいんですけど、「フィクションに逃げる」ことが絶対必要なんじゃないかと思うんです。

フィクションの世界は、自分ではない目線で物事を見ることができます。私にとってこんないいリフレッシュはないし、人生を楽しく生きる糧になる気がします。こんな閉塞感のある時代に、ビジネス書読んで、ドキュメンタリー番組見て、すぐにインプットとかアウトプットとかで例えられる人生、自分の人生で手一杯だと疲れちゃいませんか。

本屋や図書館に行くとワクワクするのは、あれだけある本それぞれに主人公がいて、主人公の数だけ人生があると想像できるからだと思います。自分が登場しない物語、人ごと気分で楽しめるフィクションの余白って、こんな時代だからこそ本当に大切。今後、仕事に忙しいビジネスパーソンがどんどんChaptersのユーザーとして増えて、そんな人ごと気分でフィクションを楽しむサービスになれたらいいなと密かに願っています。

──本が人生に与える影響の大きさを考えると、選書のハードルってすごく高くないですか。

森本 めちゃめちゃ高いですよ。だから、選書は絶対に1人でしないようにしています。例えば私が選書して私が届けると、そこに入っている視点は私しかいませんよね。いろいろな方の価値観があることが面白いと思うので、「Chapters」では現役の書店員や出版社を推薦者に立て、それを私が「味見」という立場で読み、冒頭100ページを読んで続きを読みたくなる本をラインナップしています。味見に関しては、データではなく個人の感性に直感に頼る部分が多いのですが、お客様に日々向き合う私自身が「味見」することが、一番お客様に近い感覚で選べる気がします。

本を読んでみたいけれど選べない人たちに応えたい

──サービス利用者は、もともとの本好きが多いんですか。

森本 お客様の約7割は、「Chapters」をきっかけに読書を始めた方です。

せっかく「本」の世界に来てくれたので、「本って面白い」と思ってほしいし、「また読みたい」と思ってほしいので、出版社の方にも選書を手伝ってもらうように選者を拡大しました。

みんな「面白い本を読みたい」と言うんですけど、何を「面白い」と思うのかは説明できない人が多いんです。「伏線が張り巡らされて、最後にそれがうまく回収される伊坂幸太郎みたいな本が読みたい」とか、「東野圭吾より弱めのライトミステリーをいま欲している」と表現できる人は、自分で選びますから(笑)。本を読んでみたいけれど選べないという人は、「疲れている」「ほっこりしたい」「どっぷり本に浸かりたい」といった気持ちの先に「面白い本が読みたい」という思いがあるので、「Chapters」ではそこに応えていきたいなと思っています。

5月の選書テーマは「すごい女」

──テーマはどのように決めているのですか。

森本 季節にあわせた気持ちをテーマにあげています。

たとえば、4月は「桃の花がすごくいい描写で出てくる小説」が選書の真ん中となり、最終的には「スタートライン」というテーマで、新しいことに挑戦する主人公が登場する4作品を選びました。

5月は文春文庫に選書をお願いしたのですが、文春を選んだのは、5月病で落ち込む人が多い時期に、強烈なフィクションの世界で束の間でも現実世界から離れることができる作品を提案したかったからです。文春は「文春砲」のイメージが強いですよね。でも小説もすごいんですよ。「人の気持ちをここまでエグって生々しく書いていいのか」と、読後グッタリ疲れる本が多いイメージが私の中にあります、長編で疲れる小説はだいたい文春文庫なんじゃないかという(笑)。なので、今回は「 “文春砲”のイメージそのままに、生々しい人間関係を描いた本をお願いします」と依頼して、その結果出来上がったテーマが「すごい女」になりました。

4作品のラインナップは、「元彼に依存する女」「恋愛観がクズの女」「承認欲求に狂う女」「復讐に燃える女」です。推薦文とクリエーティブで、直感をたよりに選んでいただきたいのですが、本気で全部面白いので、届けるのもすごく楽しみです。

──出版社の選書だと偏りが出てきそうですが……。

森本 私も最初は「出版社区切り」は足かせになると思っていました。でも、出版社と組むことで、逆に最高の布陣が出揃いました。

例えば4冊のまとまりやバランスがよくても、利用者はその中の1冊しか読みません。だから、テーマにおさまる4作品が綺麗に並ぶよりも、「1冊1冊が強烈に面白い」ということが大事なんです。その点で、出版社の方との選書は面白いです。ご自身も本作りに携わっている分、本一冊にかける愛情が強くかなり読み込んでいらっしゃるので、表層的ではなく、深い部分でテーマに通ずるような本をズバッと選んでくださいます。

「人生に失敗はない」というのも大事にしています

──サービス名を「Chapters」と名付けたのは。

森本 物語をめくるように、自分の人生を少しずつ進めてほしいと思ったからです。そのためには、提供する私自身も自分の人生を面白くしないといけないので、現状に満足せず、どんどん進化していかなきゃいけないと思っています。

企画を考える時も、結局最初に「なんかいい!」と思ったものが一番面白かったりしませんか?あれこれ考え難しくこねくり回さずに、どうすれば「なんかいい!」の形を変えず届けたいものがまっすぐそのまま届くか、そんなことをいつも考えています。

あと、「人生に失敗はない」というのも大事にしています。やったことがないものは失敗にはならないじゃないですか。だからたとえば起業して2年で倒産することになっても、それはスタディで失敗ではないと私は思っています。

こんなことを言うと、「こんなふざけたやつに誰が出資するか」「無能な経営者が増えた」などと厳しいコメントを書かれてすごい落ち込むんですけど、幸いなことに私、忘れっぽいので引きずらないんです。

たとえ誰かに否定されたりけなされたりしても、「私の人生には365日私しかいないから、私の機嫌だけをとっていこう」と開き直って生きています。

目の前の一つひとつのご縁を大切に、ロマンチックな出会いと本を

──「Chapters」の今後の展開をどう考えておられますか。

森本 ロールモデルもいないし、自分への未来の期待とかも全然ないので、明日起きても「Chapters」をやりたいなと思っている自分だけをイメージしてやっていきたいと思っています。

ただ、継続のためには今ファイナンスを頑張らなくちゃいけないです、会社を潰すわけにはいかないので。あとは、ここまで口コミだけで広めて頂いてきたので、ここからはお客様が増えるような接点も増やしていかないと。現状のサービスの改善も山積みだし、新しく入った新卒のためにも楽しい労働環境を整えたいし、やることはたくさんあります。

一気に全部は無理なので、目の前のこと一つ一つに着実に向き合うこと。それがいまの目標です。

(取材・構成:相澤洋美、撮影:文藝春秋/杉山秀樹)

(森本 萌乃)

森本 萌乃

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