【小説】小学生4人「地元なのに、こんな洞窟知らんかった」

【小説】小学生4人「地元なのに、こんな洞窟知らんかった」

  • 幻冬舎ゴールドライフオンライン
  • 更新日:2022/05/14
No image

【前回の記事を読む】小学生女子2人と男子3人で殴り合い…「いじめをチクったな」

探検

猫神さんにはさゆりとちさがすでに来ていた。

さゆりがゲンタ達を見ながら、

「無視、無視。行こ、行こ」

と言った。ショウが、

「どこ、行くん?」

と尋ねた。みやが、

「いいとこまんじゅう」

とさゆりに同調した。

はるなはみやの話に沿ってさゆりとちさの服装もチェックした。さゆりは迷彩色のTシャツにオフホワイトのキャスケットと薄茶色のスタンドカラーのジャケット、紺のジーンズに紺のスニーカー姿だ。大丈夫。ちさは白地にピンクの花がたっぷり描かれたタートルネックのニットブラウスに紺のジーンズ、薄水色のデニムジャケットと紺のリボンをあしらった薄水色のブルトンを被りピンクの蛍光色のラインが入ったスニーカーを履いている。はるなは今日一日自分が隊長のつもりでいる。自分が誰かの服装を見落としたために蜂に襲われたなどということになってはいけない。チェック完了、特に申し合わせてはいないが全員、服装は大丈夫だ。

女子四人が自転車を走らせてからも、なお、ゲンタ達男子三人は走って追いかけてくる。無視をして、はるな達四人はどんどんと自転車を走らせた。やがてゲンタ達の姿は全く見えなくなった。

大きな川に沿って上流へ進むと、何回かの小さなアップダウンを繰り返した後、遍路道との交差点まで来た。川の向こうの大きな山に鶴(かく)林寺(りんじ)があり、右の方から橋を渡って来て、左に向かって支流の沢沿いに山道を登っていくと太(たい)龍寺(りゅうじ)に行き着く。生活道と遍路道の交差点である。「二十一番札所太龍寺」と書かれた矢印付きの看板もある。この前はここまで父の車で来たので、近いように思っていたはるなだったが、自転車だと意外なくらいに遠かった。

そこからトレッキング道のような遍路道へと左に曲がって、さらに坂道を登った。小さな沢を横に見ながら立木に覆(おお)われたガードレールもない狭い道をくねくねと登っていくと、右に段々畑の石垣が見えた。沢を渡る小さな橋で四人は自転車を降りた。

さゆりが自転車のかごから虫除けスプレーを取り出した。全員の手首、足首にスプレーをし、軍手を一つずつ配った。その気配りにはるなは「おとな」を感じた。同級生のはずのさゆりが急に頼りになる「お姉さん」のように見えだした。

そう言えば転校してきてすぐの頃、ちさと一緒にいるところを見て、そのように感じたことがあったのを思い出した。配られた軍手はポケットにしまった。

洞窟へと登る斜面の一番裾(すそ)、段々畑のあるあたりは上の段に登るための石段もあって比較的登りやすいが、そこから上は、まるでスキーのジャンプ台のような急斜面だ。しかも、握りこぶしのような大きさの、鋭くとがった石がゴロゴロと転がっている。転ぶと怪我(けが)をする。ここには土があまりないので、石は一度転がり出すと、コロコロと下まで転がり落ちる。下手に転ぶと足下の石がボールのように転がって、後ろを歩く人に当たってしまう。その急斜面を、山田と歩いた道順を思い出し、木の根を足がかりにしながら、はるなは三人を先導し、登っていった。この前は山田に助けられながら、山肌をよじ登るようにして上へと歩いたが、今ははるなが他の三人を助けなければならない。さゆりは問題なく歩き、ちさも見かけによらず上手に登っていく。みやは途中何回か滑(すべ)りそうになり、皆で手を引いて助けた。そしてあの洞窟へとたどり着いた。

大きな岩の中程に小さな穴がぽっかりと空いている。入り口は天井が低い。しかし、暗くてよく見えないが、奥行きはかなりある。はるなが山田と来た時には入り口から少し入っただけだった。今見ると、幅も高さも奥の方に向かって広がりがあり、冒険心がそそられる。

「地元なのに、こんな洞窟知らんかった」

「いつからあったんやろ」

「そうだ、昔むかし、防空(ぼうくう)壕(ごう)っていうのがあったって話、ばあちゃんから聞いたことがあるんじゃけど」

「昔のお殿様の隠し財産がいっぱいあるかも」

「ひょっとしたら恐竜の卵があるんとちゃうかなぁ?」

口々に思い付きを話すさゆり達に、はるなは山田から聞いたことを教えた。

「昔の人が掘った穴らしいの」

「昔って?」

「縄文時代か弥生時代かって、山田さんておじさんが言っていたわ」

萬野 行子,萬野 行子

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加