フリー芸人だからM-1にも噛みつける! エル上田のタブーなき漫才

フリー芸人だからM-1にも噛みつける! エル上田のタブーなき漫才

  • WANI BOOKS NewsCrunch
  • 更新日:2022/06/23
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エル上田とデロリアン林からなる、お笑いコンビがエル・カブキ。若手では珍しく時事ネタを主とする漫才スタイルで、さまざまな賞レースで爪痕を残している。最近では、上田がラッパーのダースレイダーや、ノンフィクション作家の田崎健太のトークライブに出演するなど、活動の幅を広げている。

しかし昨年、10年近く在籍していたマセキ芸能社を退社。『M-1グランプリ2021』で、まさかの1回戦敗退がその理由としてあるのではと、お笑い好きのあいだでは囁かれた。それでも現在、ほぼ毎日、時事を語るネタ動画をYouTubeにアップ、6月24日には毎年恒例となっている、上半期を振り返るライブの開催が決まっている。

二人のうち、格闘技好きなエル上田に、これまでの芸人経歴、事務所退社の心境、そして単独公演の意気込みを聞いた。

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▲エル上田(エル・カブキ)

同期で一番出世が早かった…からの吉本離脱

――上田さんがお笑い芸人になろうと思ったきっかけを教えてください。

エル上田(以下、上田) 中学の頃、テレビで爆笑問題さんの漫才を見て、身体に電流が走ったような衝撃を受けて、そこからですね。あの衝撃は後にも先にも、あの時だけです。あ、人生で初めてプロレスを生で見たのが、大仁田厚の電流爆破マッチだったので、“身体に電流が走った”で言えば、それを含めて2回です(笑)。

――エル上田という名前からはもちろん、ネタを見てもプロレス好きというのが伝わってくるのですが、好きになったのはお笑いよりプロレスが先ですか?

上田 ほぼ同じくらい、というか、気づいたときには、どちらも家のテレビで流れてました。だから、爆笑問題さんでお笑いを知ったわけじゃなくて、小学校の頃からお笑いは好きだったし、特に『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』と『鶴瓶・上岡パペポTV』が好きでした。

――どちらもフリートークが企画のメインでしたよね。

上田 当時は、そこまで分析してなかったと思いますけど(笑)。そのあと、爆笑問題さんが標準語で漫才をやってるのを見て、すごく面白いし、もしかしてこれだったら俺でも勉強すれば近づけるかもって、おこがましくも思ったのが直接のきっかけですね。

――そこから一度、吉本興業の養成所、NSCに入られたんですよね。

上田 先に地元の友達が3人入ってて、「早くお前も来いよ!」って言われたので、お金を貯めて入学したんです。けど、厳密に言うと、俺の行ってた頃は途中入学が認められてて入学金授業料の40万も半分でいい、みたいな触れ込みで。俺もそう聞いてたんですけど、たしか満額取られてるんですよね。

――え、そうなんですか(笑)?

上田 NSCも今みたいにしっかりしてなくて、全体的に緩かったんです、俺もダンスとか意味のない授業はサボってたし(笑)、卒業公演も出てないですね。NSCで言うとジョイマンとかと同じ8期になります。当時、小山田満月さんという講師の方がいたんですけど、東京五輪の小山田圭吾問題のとき、自分たちの配信で、ずっと小山田問題って言って小山田満月さんのことを話す、ってボケをやってたんです。そしたら、視聴者の方が“小山田満月さん、数年前に亡くなってます”ってコメントくれて、結果、俺たちが一番不謹慎でした(笑)。

――(笑)。NSCを卒業されてからは、吉本で芸人をやってたんですか?

上田 コンビは小中高の同級生と組んでたんですけど、その期の芸人が300~400人くらいはいたと思うんですが、卒業公演も出てないのに、その中から何組かしかいない、一番上のルミネ(ルミネtheよしもと)スタートになったんです。

――すごい! 超エリートですね。

上田 ただ、ウケるネタがその1本しかなくて、すぐにドンドン落ちていって(笑)。上のランクに上がるとか、下のランクに下がるとかは、当時スタッフが決めてたんですよね。たぶん生意気だったから、それも大いに関係あったかもしれない(笑)。

――なるほど(笑)。

上田 忘れられないのは、当時売り出し中の人気コンビがいて、そのコンビの前の出番が俺たちだったんです。俺らのネタは、そこそこウケたんですけど受からなくて、次の出番の売り出し中のコンビがウケてないのに受かった。そしたら、MCをやってたダイノジの大谷さんが、俺らとなんの面識もないのに、スタッフの審査員に「おかしいじゃねえか!」って噛みついてくれたんです、それはいつかお会いしたら感謝したいですね。で、吉本にいても全然うまくいかないな、と思って、相方と夜逃げ同然で飛び出したんです。

出会い系で相方探し!?

――そこからマセキに入られるんですか?

上田 いえ、いろいろな事務所のネタ見せに行ったんですけど、当時できたばかりのSMAがあって、履歴書を書いたらすぐ受かったんで、“誰でも入れるって本当だったんだ”って思いました(笑)。そこで3年半は頑張ったんですけど、最後、NHKの『爆笑オンエアバトル』に出て、100キロバトルぐらいで惨敗して、その後解散して。

――原因はなんだったんですか?

上田 自分から解散したいって切り出しました。当時の自分は、いま振り返ると本当に酷かったですね。相方をどう自分の思うままにコントロールするか、ってことしか考えてなかった。これは正直、ずっと償っていかないといけない罪だって、自分の中では思ってます。

――上田さんを擁護するわけじゃないですけど、その頃は相方を操縦しているほうが天才っぽくてすごい、みたいな風潮があったし、そういう若手が多かった気がします。

上田 やっぱり、一番最初にルミネスタートになったのがいけなかったんですよね。在学中は存在すら認識してもらってなかった自分たちが、ルミネスタートになっただけで同期の見る目が変わった。お笑いって面白ければそれでいいんだって、尖りに尖りまくってたと思います。

――相方であるデロリアン林さんとは、どういうきっかけで知り合ったんですか?

上田 そこから、出会い系の掲示板で相方探しをして、2週間で8人くらいと会ったんですけど、全員しっくりいかないんです。正直、次のコンビがダメだったら芸人を諦めようと思ってて。だから、妥協したくなかったんですよね。そこで、当時バイトしてたコンビニで一緒に働いてた人の紹介で、芸人やってるっていう林くんに会うんですけど、最初は“バイト先の同僚の紹介で会う人なんかダメだろ”って思ってたんですが、会っての第一印象、まず見た目が良い(笑)。

――(笑)。本当に出会い系みたいな話ですね。

上田 それと、よく喋るし、林くんはツービートさんとかB&Bさんとか、昔のネタを書き起こしてるような人だったんです。それで、持ってきてくれたネタも、ちゃんとネタ作りを理解している。でも、もう自分では作る体力がない、ネタ作りは任せたい、って言ってくれて。前のコンビが空中分解みたいな感じだったので、そこを任せてくれたのは、とても助かりましたね。

エル・カブキが時事ネタにこだわる理由

――エル・カブキといえば、時事ネタのイメージがあるんですが、時事ネタにこだわる理由はありますか?

上田 最初は、純粋な時事ネタ、というよりは、ひとつのネタで1人の芸能人を掘り下げる、っていうネタをやっていたんです。それをずっと披露していたんですけど、あるときにネタ見せをしたら「それが面白いのはわかったから、違うスタイルのネタ持ってきてよ」って言われて。違うスタイルって言われてもな……って考えたとき、たしかに爆笑さんに憧れて芸人になったけど、時事ネタをやる気は毛頭なかったんです。

――それはどうしてですか?

上田 例えば、ネタ番組のオーディションがあったとして、そのときに受かったネタでも、テレビ放送時に同じネタやったら、もう古くなっているかもしれない。M-1の予選だって8月から始まりますけど、決勝は12月ですからね(笑)。基本、時事ネタって使い捨てになっちゃうんで、そんな効率の悪いネタ、若手はやらないんですよ。それで試行錯誤してるときに、ちょうどライブで島田紳助さん引退のタイミングだったんですけど、

「オールスター感謝祭、残念でしたね」

みたいなこと言うと、俺らのこと知らない人も“ん? こいつら、こんなこと言って大丈夫か?”って注目してくれるんです。そこで、

林「今回はなくて残念でしたね、チャック・ウィルソンと藤原組長の死闘」

上田「いや、誰が覚えてるんだよ、チャック・ウィルソンと藤原組長の相撲対決」

って言うと、笑いになる。あ、時事ネタっていっても、見せ方ひとつで全然違うんだなって気づいたんです。

――なるほど、鮮度はもちろん大事だけど、システムを変えることで印象がガラッと変わるということでしょうか。

上田 はい。それで2014年くらいからネタ作りの方向性を少し変えたら、TBSラジオの『マイナビラフターナイト』というネタ番組に出るようになって、ちょっと風向きが変わったんです。あの番組のありがたいところは、俺らのネタをあまりカットしない(笑)。それでTwitterでレポしてる方が、俺らのネタの内容をツイートしてくれるじゃないですか、そうすると知らない人もツイートの内容で、“なんだこれ?”って引っかかってくれる。俺らみたいなネタする芸人は、ネットと親和性が高いんだなって気づいて、そこからYouTubeで配信するようになりました。

事務所退社の理由、フリーでキレなかったらいつキレる?

――ただ、エル・カブキとしては昨年、約10年間在籍したマセキ芸能社を退社しますよね。この経緯はどういうものだったのでしょう?

上田 昨年の初めくらいに、俺らと、モグライダーとかスーパーニュウニュウとか、しゃもじとかカナメストーンとか、要はキャリアはあるけど、まだ結果を出せていない芸人が窓際族的なライブに移動になって、俺らエル・カブキには「事務所的には、もう十分プッシュしたと思うので、これからは若い子たちをプッシュします」と言われて、まあ当然ですよね。じゃあM-1で結果を出して、なんとか事務所に貢献しようとした矢先に1回戦落ち、という結果だったので、さすがに事務所に居づらいなと思って辞めました。

――お聞きしにくいな、と思ってたんですけど、こうしてお話してくださったので率直にお聞きするんですが、1回戦で落ちたのは何が原因だったんですか?

上田 それはシンプルにスベりましたね(笑)。正直、去年のライブでウケたところを全部詰め込んだようなネタだったんですけど、最後にM-1用にって、ちょっと柔らかくブラッシュアップしたんですよね、それがいけなかったなって。俺らのこと知ってる人にも知らない人にも、物足りない中途半端なネタになってた。まあでも去年、変にまた3回戦とか行ってたら、また1年間同じような活動を続けて、特に何も変わってなかったと思うので良かったですね。昨年末にも『日刊サイゾー』でM-1の記事を書いたんですが、それも近年の大会を取り巻く構造への疑問提起をした内容だったんで、それも事務所にいたら書けなかったかもなって思ってます。

――最近もnoteで、

個人的ブチギレ案件連続発生から約1ヶ月。数字や知名度としか喋る気の無いバカには興味ない。人の心と会話して、俺は思考を続けたい。

と書かれていて。気に食わないことにはしっかり噛みつく上田さんが、フリーになっても変わらずいて、よかったです。

上田 いや、フリーになってキレなかったらいつキレんのよ、って話じゃないですか!?(笑) でも、その話で言うと、自分は相手の知名度によって態度を変えるようなバカにはなりたくない。有名な人でもそうじゃない人でも、平等に接したい。だから俺は1年目の芸人でも敬語で接するし、大先輩でも筋が通ってないことには怒りたいんです。正直、上下関係、先輩・後輩って、面白いことと直結しない気がしているので。

誰も言っちゃいけないみたいな空気感はぶち破りたい

――正直、関係性で得るエピソードが多いお笑い界では、上田さんのような考え方は生きづらいのかもしれませんが、筋が通っていて素晴らしいなと思います。上田さんが漫才以外に興味があることはなんですか?

上田 昨年の5月から、宮台真司さんのゼミに通っていて。そこはダースレイダーさんに、“こういうのあるよ”って紹介していただいて通ってるんですけど、そこで毎回課題が出るんですね。これまで、なんとなく見てきた本や映画が多いけど、「課題です」って言われて見ると、仮に退屈だったとしても途中で離脱できない(笑)、他の人たちと議論もできる。この前も、吉田豪さんの本を読んだんですけど、そこに“準備を入念にして、対談相手の前に立ったときは、もう仕事は終わってる”って書かれてて、司会業は奥が深いなと思いました。

――M-1には、あと何回出られるんですか?

上田 今のルールのままでいけば、あと2~3回は出られるはずです。

――昨年1回戦で落ちて、今年はフリーとして初めての出場で、意気込みも相当だと思うんです。上田さんのネタを見てると、もっと猪突猛進タイプというか、ひとつピントを合わせたらガッと行くタイプだな、と思ってたんですけど、どっちかというと、トークライブでの自分を俯瞰で見ている上田さんが近いのかなと思いました。

上田 うん。だから俺、本当は芸人気質じゃないんですよ。裏方さんの大変さもわかってて言いますが、完全にそっち向きだと思うんです。だから本当は、攻殻機動隊みたいなのが理想なんですよね(笑)。俺の考えを全部理解してやってくれる人がネタをやってくれれば、それがいい。でも、俺の考えを理解できるのは俺しかいないんですよ。それは相方も一緒なんですよね。いろいろブレたけど、そんな二人がわちゃわちゃ漫才してるのがいいかなって思ってるんです。

――なるほど。キャラ漫才じゃない、素の上田さんと林さんがやり合ってるのが面白くなればいい、みたいなことでしょうか。

上田 そうですね。前のコンビを解散したときに、お世話になっている作家さんに「上田くんは女の子と組んだほうがいいと思うよ」って言われたのが、ずっと頭から離れなくて。それはたぶん、ネタプラス、見た目や関係性を付け加えようとしてくれたと思うんですけど、やっぱり“やりたい漫才”って、そういうんじゃなかったんです。みんなが、声だけでも想像して頭の中で笑えるやつをやりたい。だから、ネタの強度を上げていきたいですね。

――近々で一番大きな動きは、6月24日(金)に新宿バティオスで開催される「エル・カブキ60分漫才で上半期を振り返る『燃えよカミハン』」ですかね。

上田 そうですね。これ見たら上半期が振り返られるライブになるはず、なんですけど……今メモを見たら「シバター八百長騒動」って書いてますね(笑)。

――あはははは(笑)。今、言われるまで忘れてました。

上田 これ不思議なのが、ライブとかでお笑いファンの前で「シバター」って言っても伝わらないことがあるんですよ。そこは100歩譲ってわかるんですけど、ゆたぼん(少年革命家YouTuber)がTVのオーディションで伝わらなかったことがあって、それは“マジかよ!”って思いました。

――えー、そうなんですね。

上田 ただ、そこで“その人知らない”っていう感想で終わらせちゃったのは、俺らの力量不足だなって思いました。実は前に、ある先輩から、当時俺らの鉄板ネタだった神取忍さんをテーマにした漫才に対して、「面白いけど、プロレスを知らない人の前でやってどうかな」って言われたことがあって。いや、違うんです、ギャルの前でやっても笑ってくれる漫才を俺たちは目指してるんです、って内心思ってたことがあります。やっぱり、20年近く地下芸人やってると、周りで売れていくのは頑固者ばかりなので。

――それは力強い言葉ですね。

上田 錦鯉さんは大好きで、お二人ともこの世界で一番お世話になった先輩ですけど、組み直して結成15年以内でM-1優勝って、法の穴を潜って優勝したのはドーピングじゃねーのか(笑)ということを、誰も言っちゃいけないみたいな空気感はぶち破りたいですね。島田紳助さんが、長いことやって結果のでない芸人を諦めさせるために作った大会が、ちょっと趣旨変わってきてねえか?って。だから俺らみたいに、M-1に出つつ、M-1の風潮にケチつける芸人がいてもいいかな、って。だからとりあえず、今年は1回戦は突破したいですね(笑)。

プロフィール

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エル上田(エル・カブキ)

誰かは傷つけるザイマン/ダースレイダー×エル・カブキ『うっかり?!』/柔術12年白帯/タレント本/時事ネタYouTube『今日の10分おろし』/フリーランス。YouTube:エル・カブキの今日の10分おろし、Twitter:@el_ueda、Instagram:@el_ueda、note:エル上田(エル・カブキ)、Lit.Link:エル上田(エル・カブキ)

NewsCrunch編集部

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