中村歌之助インタビュー 手塚治虫の描いた世界を歌舞伎で。 染五郎から受けた刺激と自身の成長

中村歌之助インタビュー 手塚治虫の描いた世界を歌舞伎で。 染五郎から受けた刺激と自身の成長

  • CREA WEB
  • 更新日:2022/08/06
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八月納涼歌舞伎で新作歌舞伎『新選組』の主人公、深草丘十郎を勤めることになった中村歌之助さん。従兄弟の中村勘九郎さんからの勧めで出会ったこの役をどのように体現してくれるのだろうか?

手塚治虫の描いた世界を歌舞伎で生かす

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「深草丘十郎はまだ誰も演じたことがない役なので、まずは化粧、扮装から創っていきます。勘九郎の兄とも話し合いながらいろいろ決めていったのですが、漫画での表現を忠実にしつつも歌舞伎に見えるということの加減がとても大切だと思いました。試行錯誤を重ねて完成したものをスチール写真の撮影の際に、化粧をして頭(鬘)をかけたときに、やっと自分が丘十郎を演じることを実感できました。

それが完成するまでは手塚治虫先生のファンの方や歌舞伎のお客さまにご納得いただける“顔”なのかが、とても不安でした。撮った扮装の写真をご覧になった手塚プロダクションの方から“あの丘十郎と大作が画から抜け出たみたいです”とおっしゃっていただいたと伺って、とても嬉しかったです。

手塚先生が描かれた作品はアニメなど、映像化されたものが多いですが、『新選組』は画としてのみ存在している作品です。ですから役名のイントネーションや扮装の細かいところは具現化されたことがなかったので、歌舞伎として表現するのはすごく伝わりやすいように思いました」

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『新選組』左より、中村福之助、中村歌之助。

ファミリーで創り上げる喜び

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今回の新作は、脇を固める豪華キャストも注目の一つ。坂本龍馬を中村扇雀さん、芹沢鴨を坂東彌十郎さん、庄内半蔵を片岡亀蔵さん、さらに近藤勇を中村勘九郎さん、土方歳三を中村七之助さんが演じる。

長兄の中村橋之助さんが演じる仏無南之介も原作で大きな存在感のある役。脚本は歌舞伎俳優で、立師でもある山﨑咲十郎さんが手がけるなど、興味を引く話題も豊富だ。

「ありがたいことに今回は僕が小さい頃からお世話になっている方々が、作品の中の重要な人物を演じてくださいます。おこがましい言い方かもしれませんが、僕にとってファミリーのような方々とご一緒して作品を創らせていただくことができるのは、とても嬉しいです。

先日、片岡亀蔵のおじさまに少しお目にかかったのですが、“一緒に面白いものを創ろうね”ってとても優しくおっしゃってくださったんです。楽屋の行き来ができない今、先輩が手を差し伸べてくださることには心から感謝しています。

また、先日、(山﨑)咲十郎さんから参考用に創ったという立廻りの資料映像を頂戴しました。具体的には説明できませんが、歌舞伎の殺陣と手塚治虫先生が描くコミカルな部分がうまくハマっていて、僕自身はとても面白く拝見しました。お客さまがご覧になってどう思われるのかはわかりませんが、手塚治虫先生のキャラクターの魅力を歌舞伎の殺陣にも活かせたらと思います」

17歳で歌舞伎座主演を果たした市川染五郞さんから受けた刺激

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新作歌舞伎の役作りでは、ゼロから創り上げるだけでなく、歌舞伎俳優がそれまでに経験した古典の役を生かして演じることも多い。歌之助さんは丘十郎を演じる上で、これまでに体得した引き出しから、どんなイマジネーションを得るのだろうか。

「僕はまだ20歳という経験の浅いなかで、新作に携わるのはとても怖いことでもあります。そうしたなかで、6月に初主演を経験した市川染五郎くんと共演させていただくことができて、僕自身もとても良いタイミングでいい学びを得ることができました。

その六月歌舞伎『信康』で、僕が演じていた又九郎と染五郎くんが演じた信康が一対一で会話をする場面は少なかったのですが、お互いが心の中で会話をするような部分がありました。そのとき、今までに感じたことのない“感情の揺れ”というものをすごく感じることができました。同世代とご一緒できたのは、とてもありがたかったです。

ですから、『新選組』でも頭で考えるのではなく、その場で生まれる役者同士の表現というものをすごく大切にしたいと思います。千穐楽を迎えたとき、染五郎くんが歌舞伎座の主演を演じきった姿を間近で見ることができて、それも僕にとってとてもいい刺激になりました。僕が演じる丘十郎をご覧いただいて、“歌之助も成長したな”と思っていただけるように頑張りたいと思います」

歌舞伎俳優特有の「漫画」の楽しみ方

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新作歌舞伎『新選組』の原作は漫画ですが、9月7日発売のCREAも漫画特集。歌之助さんがこれまでに読んだ漫画について伺った。

「僕は普段はあまり漫画を読まないのですが、初めて読んだ漫画は『鉄腕アトム』でした。母方の祖父の家にあったんですが、まだ幼い時で字も読めなかった頃のことです。祖父がお風呂場で『鉄腕アトム』の曲を口ずさんでいたことが、とても印象に残っています。

最近では『鬼滅の刃』が面白かったですね。歌舞伎役者特有のことかもしれませんが、漫画や小説、映画やドラマを観ても、頭のどこかで新作歌舞伎にできないかなと考えてしまうんです。『鬼滅の刃』もそうですが、手塚治虫先生の『どろろ』だったり、映画の『ロード・オブ・ザ・リング』だったり、難しいかもしれないけれど、歌舞伎にしたら面白いのではないかと思います。

いつか“手塚歌舞伎”と題して、手塚先生の作品を歌舞伎化して昼夜3本ずつ上演するのも面白いと思います(笑)。漫画の中に歌舞伎があって、歌舞伎の中に漫画がある。それもまた歌舞伎を楽しむ一つの方法なのではないでしょうか?」

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八月納涼歌舞伎「新選組」

“漫画の神様”手塚治虫の作品が初めて歌舞伎に。幕末の京都を舞台に、深草丘十郎(歌之助)と謎を秘めた少年剣士・鎌切大作(福之助)の友情、新選組隊士たちや坂本龍馬との出会いを通じて成長する丘十郎の姿が生き生きと描き出される。8月5日(金)~30日(火)までの公演。
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/773

文=山下シオン
撮影=深野未季

山下シオン

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